二元論
NHK「クロ現」が肉を採り上げました。
11月29日放送の「究極の牛肉!? 悦楽の世界へようこそ」です。
まず、最近の「お約束」の「赤身ブーム」を採り上げます。
「赤身の牛肉。昔は「パサパサで固い」と不評だったが、今や「歯ごたえがあってヘルシー」。スーパーや飲食店は仕入れに奔走、産地では増産の動きが相次いでいる。」
一方の霜降は厳しく批判されます。
「黒毛和牛を育てる農家では、20年以上にわたって、“サシ(霜降り)”をいかに多く入れるかを最優先に改良を進めてきました。」
「和牛の霜降りの割合は年々上昇し、輸入自由化前に平均20%だったのが、今では50%。なんと倍以上にまで増えたのです。果てしない霜降りの追求。」「その結果、霜降りの量はほぼ限界まできているといわれます。」
ということで相い変わらずの霜降VS赤身二元論ですねえ、軽く失望しました。
たしかに、霜降りの割合が行き過ぎのレベルまで行ってしまったことは事実です。一つの目標を追い始めると容易に止められないのは日本人のサガなのでしょうか。
しかし、全くの赤身が良いとは私には思えません。50%は行き過ぎですが、25-30%を人は美味しく感じるという調査結果もあります。すき焼きで食べる場合は、もう少し率が騰がると推測されます。
幸いなことに、番組にはゲストとして寺門ジモンさんが出演していて、
霜降の牛の、モモとかカタなど、霜降の付きにくい部位が美味しいよね!
と言っておいででした。そうそう、適度なサシが美味しいんです。
インサイダー情報ではジモンさんは、局側の赤身一辺倒の筋に抗して、そう発言されたとか。
霜降の行き過ぎも問題ですが、赤身の行き過ぎも私は、どうかと思っています。ジモンさんと好みが一致して良かったです。
それから、その次に登場した「霜降りと赤身の「いいとこ取り」をした品種改良」というのにも、私は違和感を感じました。この育種は、
・交雑種のメスに、黒毛の子を代理出産をさせる
・子を産んだ後の交雑メスも、丁寧に飼って、食用肉として出荷する
という取り組みの話しなのですが、これが何故「いいとこ取り」という言葉に当たるのか、私は皆目分かりません。
産後の交雑メスを丁寧に飼って→売れるようにするという話しを、「赤身ブーム」に合わせて「赤身」と言っているだけだと思えます。
そもそも、この取り組みは農業法人ノベルズさんが「持続可能な農業」=つまり、ちゃんと売上の作れる農業を目指して行っているもので、霜降VS赤身とは直接関係ない話しですが、交雑種には黒毛ほどサシが入らないことを良いことに、局は仕立てた筋に嵌め込んで、「赤身!」と言葉だけを走らせているのです。
霜降VS赤身二元論は、もういい加減にしませんか?
追伸①
今年も「ミシュランガイド東京2017」に載せていただきました。
3年連続掲載です。ありがとうございます。
追伸②
拙著は好評(?)販売中です。どうぞ、よろしくお願い申し上げます。
題名:『浅草はなぜ日本一の繁華街なのか』
浅草の九人の旦那衆と私が、九軒のバーで語り合った対談集でして、「浅草ならではの商人論」を目指しています。
東京23区の、全ての区立図書館に収蔵されています。
四六判240頁
価格:本体1600円+税
978-4-7949-6920-0 C0095
2016年2月25日発売
株式会社晶文社 刊行
本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて2.475連続更新を達成しました。