広く信じられてる話し
誰が言い出したのか不明で、根拠も不明なのに広く信じられてる話し。そういう話しが食べ物の世界にはいくつも在るような気がします。
そういう話しを、たまにこのブログで検討してみようかと思います。
そんな話しの一つに
「肉は腐る寸前が旨い」
っていうのが在ると思いますが、これは本当でしょうか?
えー、お答えします、
ある国の、ある時代の、衛生環境・流通環境の下で、偶然そう成ることがあったかもしれませんが、現在の環境の下では、この言葉の通りではありません。
「ちんや」は肉を、牛の屠畜後4~5週で提供することが多いですが、腐る寸前ではありません。
では、なぜ「肉は腐る寸前が旨い」と言ったのでしょうか。
それは、肉の表面で起こる腐敗の進行具合と、肉の内部で起こる熟成の進行具合が、昔はだいたい同じ位だったからでしょう。衛生環境が不充分だったからです。
しかし、今は衛生環境が違います。
私がこの業界に入ってから20年経ちますが、業界はO-157問題とBSE問題を経験し、衛生にとても敏感になりました。肉の作業場も、以前はやや不潔な所がありましたが、今は全くありません。
肉は屠畜後非常に丁寧に洗浄・除菌されます。加熱することが出来ないので完全殺菌とまでは行きませんが、かなり清潔に成り、それを急速に零度まで冷却しますから、雑菌が繁殖してしまうことはありません。冷蔵庫内も清潔で、空気を循環させて冷やしムラが出来ないようにしています。
さて、その間肉の内部では熟成が進みます。
凍らせてしまうと熟成は起きませんが、零度なら、牛が元々持っていた酵素の働きで、熟成が進み4~5週で「ちんや」が美味しいと考える状態に成ります。
が、この時点で肉は「腐る寸前」ではありません。衛生的に扱われた結果、肉の表面に菌が繁殖してはいないのです。
結局、肉があまり衛生的に扱われなかった時代に、たまたま、腐敗の進行具合と熟成の進行具合が、だいたい同じだった、それで「腐る寸前が旨い」と言ったのだと御理解いただけたら良いと思います。
誰が言い出したのか不明で、根拠も不明なのに広く信じられてる話し。そういう話しが食べ物の世界にはいくつも在るような気がします。
そういう話しを、今後もたまにこのブログで検討してみようと思います。
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本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて2.424連続更新を達成しました。