神輿大全

浅草の神輿・神具製作店の店主・宮本卯之助さんが書かれた御本『神輿大全』を読んでいます。

「宮本卯之助商店」さんについてはあまりに有名ですが、念のため説明しますと、ご創業は文久元年(1861年)。当初は太鼓を作り、やがて神輿も作るようになって百四十余年になります。当代の卯之助さんは、その七代目です。

大正天皇御大葬用楽器一式を納めて以来、宮内庁御用業者と成り、太平洋戦争で浅草神社(三社様)の神輿が焼失した時は、もちろん、その再建に従事しました。

さて、この御本は、神輿の基礎知識はもちろん、その種類や見方、制作過程、飾り紐のかけ方、選び方、手入れ・保管方法、修理などを網羅したものです。『大全』と言うのに相応しい内容で、神輿が日本の工芸技術の結晶であることが分かります。

拝読して私が気になったのは、宮本さんが実際に体験して来られた戦後の、日本の祭の変遷です。

戦災で都内の神輿の大多数が焼失したため、戦後は猛烈な忙しさだったそうです。浅草神社も戦後復興は祭りから!と昭和27年(1952年)までに神輿3基を再建しています。

しかし、戦後復興が一服し、高度成長が盛んになると祭りは人々の興味から外れて行きます。

やがてモータリゼーションが盛んになると、車の通行を妨げる祭りは、もう邪魔者です。三社祭も本来ご縁日の5月18日に行うものですが、平日に車を止めるのが難しいので、昭和38年(1963年)から「5月18日に一番近い金曜・土曜・日曜」に開催されています。

この時代に神輿製作に関わっていた皆さんが、どんなお気持ちで仕事に従事していたか、いつか聞いてみたいものです。

それから、もう1点。神輿製作の技術が素晴らし過ぎるのも気になります。

パーツは3.000点以上、工期は最低まる一年となると、値がはります。

それを買うのは神社の氏子なわけですが、地域コミュニテイーが弱っているような場合は、どうするんでしょうか。

とても気になるんですけど、ゲスですかねえ、そういう質問は。

 

追伸、

慶應義塾の機関誌『三田評論』の10月号に出演させていただきました。

『三田評論』には毎月「三人閑談」といって、三人の卒業生が対談するコーナーがあるのですが、今月のテーマが「和牛を食す」で、そこに入れていただいた次第です。

『三田評論』は基本的には定期購読者のみが読む本ですが、紀伊國屋書店の新宿本店で小売りしているそうですから、ご興味のある方はどうぞお求めください。

 

本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて2.064日連続更新を達成しました。

Filed under: 浅草インサイダー情報 — F.Sumiyoshi 12:00 AM  Comments (0)