高級と一流
「高級」と「一流」は、チョイと違いますね。
高いこと自体に意義はあるのであって、そういう店が好きな方もおいでですから、
高級店は必要です。
まず金のかかった店を建設し、次に有名な材料を仕入れて、それにガメつく値入れをして売れば高級な店を造ることは可能でしょう。
できれば接客要員には美女を雇ってセクシーな格好をさせましょう。そうすれば、高級な店を造ることは可能です。
では、そういう店に行って、人は何か学ぶ所があるでしょうか。
微妙ですね。
学べるとしたら、高級な店を造るには金が要るということ位でしょう。
では、ここで浅草の「弁天山美家古寿司」さんに行ってみて下さい。
値段は安い店ではなく、まあ、高い部類に入るかもしれませんが、有名産地のマグロとかはありません。
店の造作も金ピカではありません。造作がシンプルなので、「これが有名な美家古寿司なの?」と拍子ぬけする人もいるかもしれません。
しかし寿司は「江戸前寿司」をしっかり継承したものです。冷蔵庫や冷凍庫を持たない時代に日本人は、このような方法で魚を食べていました。
新技術を持たなかったからこそ、日本人が持っていた食の知恵がここに在ります。それが寿司の中に凝縮されていて、一流の仕事と思います。
そう、この御店さんは超高級ではないかもしれませんが、一流です。
一流なお店に行くと必ず何か学ぶものがありますが、高級なだけの店の場合そうでもないこともあります。
「高級」と「一流」は、チョイと違うのです。
追伸
慶應義塾の機関誌『三田評論』の10月号に出演させていただきました。
『三田評論』には毎月「三人閑談」といって、三人の卒業生が対談するコーナーがあるのですが、今月のテーマが「和牛を食す」で、そこに入れていただいた次第です。
『三田評論』は基本的には定期購読者のみが読む本ですが、紀伊國屋書店の新宿本店で小売りしているそうですから、ご興味のある方はどうぞお求めください。
本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて2.047日連続更新を達成しました。