ホスピタリテイーの宿

久しぶりに澤功さんの講演を聞きました。

澤さんは観光庁の「観光カリスマ」に選ばれていて有名な方ですが、念のための「カリスマ」のサイトのコピペーにより、ご紹介しますと・・・

谷中(東京都台東区)「澤の屋旅館」館主。

ジャパニーズ・イン・グループ会長(93~98年)。

「東京の下町、谷中の根津神社の近所に、客室数12室の日本旅館「澤の屋」がある。一見何の変哲もない小旅館であるが、実は宿泊客の9割が外国人客で、毎日平均7か国の客が訪れ、年間客室稼働率が90%を越え、これまでに80か国、延べ10万人の外国人客を受け入れるなど、国際交流に貢献しているのである。この旅館の経営者が、澤功氏である。」

「これまで延べ10万人もの外国人旅行者を受け入れ、さらに外国人客の下町での触れ合いに尽力している。」

「倒れかかった下町の小さな旅館を、積極的に外国人旅行者を受け入れることによって再生するとともに、全国各地で外国人旅行者の待遇方法などを説明して、宿泊施設が外国人旅行者を受け入れる際に抱く危惧を払拭することに努め、外国人旅行者の受入促進の啓蒙を図っている。」

・・・という方ですが、文中の「倒れかかった」という表現はちょっと違うと思います。

澤さん自身が館主を引き継いでから、旅行マーケットの変化に対応できず、また仕事を楽しむことも出来ず、17年間低空飛行を続けたのが実態ですから、「倒れかかった」では経営も心も苦しんでおられた頃の様子が伝わらないと、私は思います。

この間澤さんは「御客様は神様」という先代の教えに違和感を感じ続けておられたそうです。

その澤さんが今言っておいでなのは、

サービスはやると疲れて仕方ないが、ホスピタリテイーは、いくらやっても疲れない。

低迷17年の後、ついに客数ゼロの日が3日続き、苦し紛れで外国人客を受け入れ始めた澤さんは、当然必死に「サービス」をしようとして、客の荷物を奪うように運んだりしたものの、ほとんど喜ばれず、やがて「お好きなように」と放置するようになり、ようやく客の要望が見え始めたそうです。

外国人客は日本人の、本当の普通の生活に潜り込むことを希望していたのです。

「サ―ビス」を止めた澤さんが、そうした外人さんの希望に対して骨身を惜しまず対応し始めたところ、今度は不思議なことに次々とサンキュー・レターが届くようになったそうです。

悪名高い日本の満員電車に乗ってみたい、という人のために、どの路線の乗車率が一番高いか調べたこともあるそうです。

この辺りから「稼働率90%」への浮上が始まります。

夕食の提供を止めたのも成功でした。旅館に夕食が無いのは、一見サービスの低下ですが、谷中の地元の食堂や居酒屋を澤さんに紹介してもらった客は、楽しかった!と本当に喜ぶのだそうです。

アメックスのプラチナ・カードを持っているような大金持なのに、焼き鳥屋で地元の人達と飲めて最高だった!と笑顔で澤さんに報告するのだとか。

勿論、これは偶然ではありません。自分の宿の客を受け入れて欲しい、と地元の人々に澤さんが日頃から頼んで回っているからです。

そして、外人さんからのサンキュー・レターを読んで判明したことが、もう一つ。

外国人向けに日本をアレンジして欲しい、と書いてきた人は一人もいない(!)のだそうです。逆に、今の谷中をいつまでも遺して欲しい、と書いてきた人は多数。

私は、こういう澤さんのお話しを聞くのが好きでして、今回が多分五回目です。内容は基本的には同じですが、聞くと気分がスッキリします。

今、世間は外客インバウンド誘致イケイケドンドンですが、ニセモノを外人さんに見せたくはないですよね。

 

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Filed under: 飲食業界交遊録 — F.Sumiyoshi 12:00 AM  Comments (0)