老舗の生き抜き方⑧

 福島県酒造組合さんが運営する学校「県清酒アカデミー」で1時間ほどの講演をすることになりました。

 震災以来応援している「福島の酒」ですし、聞き手は醸造を志している若い方ばかりだそうですので、一生懸命お話ししてきたいと思っています。

 その原稿が準備できましたので、弊ブログでも公開して行きたいと思います。長いので8回に分けてUPしています。

 御題は、老舗の生き抜き方というものをお話しせよ、ということしたので、そういう方面の話しをさせていただきます。

 本来自分で「老舗」と自称するのは僭越な話しではあるのですが、他に適当な日本語がありませんので、使うことにいたしまして、つまりは浅草の、すき焼き屋ですとか、天麩羅屋ですとか、鰻屋ですとか、蕎麦屋ですとか、そういう仕事を永年して来た店が、時代の変化や危機をどのように乗り切ってきたか、をお話ししてみたいと思います。

 本日は、ついにその第8回です。おつきあいいただけましたら、幸いです。

<以下講話本文>

(店にとっての、本当の財産とは)

 さて、私どもの話しばかりいたしましたが、御酒に関しても、事例をあげてみましょう。かなりイヤな事例かもしれませんが、一つあげてみます。

 福島第一原発が起動した時に、目出度いですから、技術者の皆さんが乾杯しますね、。何で乾杯したか、ニュースフィルムを視た方はいますか。私は視ましたが、日本酒でした、ビールじゃなくて。アメリカから派遣されて来た人も、結構おおぶりの白磁の猪口を手にして乾杯していました。

 酒がどこなのか、わかりません、地元の鈴木さんなのか、会津なのか、はたまた国家プロジェクトでしたから灘から運ばせたかもしれませんが、なにしろ日本酒でした。

 ここで申し上げたいのは、原発稼働の是非の話では勿論なくて、ブランド・ロイヤリテイーの話しです。

 この日の乾杯は、工事に関わった皆さんにとっては、人生に何度とない、栄光の瞬間・勝利の瞬間です。この日の酒の旨さは一生忘れられないでしょう。ですので多分、自分は「酒と言えば誰が何と言おうと、この銘柄なんだ!」と決めつけて、一生変えないでしょう。この位その方の人生と関わりを持てば、ここで客と酒の間に絆が生まれた、と言っても良いと思います。

 ここで話しはやっと技術の話しになります。そうしたお目出度い乾杯に使う酒、として相応しい酒質の酒を造ること、それを全ての仕事の入口にしていただきたいと思います。

 今時は酒造りだけでなくて、会社全体としての姿勢を見られている可能性もありますね。ですから、酒造りプラス会社造りです。

 私がやめていただきたい、と思いますのは、全ての入口を技術に置くことです。技術の追求はキリがないですし、しかも皆が競争心を持っていますから、技術競争だけがエスカレートすると大変です。

 技術競争は勿論やっていただきたいのですが、是非是非想像力を働かせて、あなたが造った酒を噛みしめて飲む人の姿をイメージしながら、競争していただきたい、そう思います。

 私の店でも近年料理のレベルを上げて参りましたが、そのやり方は、下のレベルのものをだんだん廃止して行きました。まず下を切って、次に上を上げ、次はまた下を切る、という段取りですね。上をグイッと上げても、下がそのままですと、御客様は混乱しますから、結局良いものが売れていきません。そこはお気をつけいただきたいと思います。

 さて、さっきの事例は不愉快であったかもしれませんので、もう一つ事例をあげましょう。拝見しますると、皆さん、お若いですね。これからカノジョが出来、二人の間に信頼関係が出来て、さあ結婚という話しに成り、プロポーズをしてOKしてもらったら、嬉しいですね。

 嬉しかったら、どうしますか。酒を飲みますね。どういう酒を飲みますか。皆さんなら、自分の蔵から、とっておきのを出してもらって飲むでしょうね。当然、一生で一番美味いと思います。

 では、皆さんの友達はどうでしょうか。高校の陸上部で一緒だったアイツから、久しぶりに電話があって、どうしたのかと思ったら、プロポーズをしてOKもらって嬉しくて酒飲んでるんだ、酔っ払って電話して悪いな!と言ってます。

 いいんだ、いいんだ、そういうことなら構わないさ!おめでとう!

 で、ところでさあ、酒は何を飲んでるの?

 そりゃあ、モエ・シャンドンだよ!

ってなことにならないようにするのが、皆さんのこれからの御仕事であり、これからの人生ではないのか、ということを指摘させていただきました所で、お後がよろしいようですから、この話しを終わらせていただきます。

 御参考になりましたなら嬉しいです。

 本当に有り難うございました。

<この話しは、長いので8回に分けてUPしてきました。これにて終わりです。ご愛読ありがとうございました。>

追伸①

 藤井恵子さん著の単行本『浅草 老舗旦那のランチ』に載せていただきました。
 不肖・住吉史彦が、「浅草演芸ホール」の席亭さんや、「音のヨーロー堂」の四代目とランチをしながら、浅草について対談する、という趣向です。

 他にも20人ほどの、浅草の旦那さんたちがリレー対談で形式で登場します。

 是非ご購読を! 平成24年6月3日、小学館発行。
 ご購入はこちらです。 (できればレビューも書いて下さいね!)

追伸②

 「日本国復興元年~1千人の笑顔計画」を実行中です。

 この「計画」では、まず「ちんや」で東北・北関東の牛を食べていただきます。そして食後の飛びっきりの笑顔を撮影させていただきます。

 その笑顔画像をこちらのサイトにUPして、北の産地の方に見ていただきます。

 現在の笑顔数は270人です。笑顔数が1千人に達するまで継続してまいります。

 参加者の方には、特典も! 

 皆様も、是非御参加下さい!

追伸③

 「朝顔市」は入谷の鬼子母神にて、7/6-7/8開催済み。

 「ほおずき市」は浅草寺にて、7/9-7/10開催中です。

 お間違えのないよう御注意下さい。

 本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて863日連続更新を達成しました。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。

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