老舗の生き抜き方④

 福島県酒造組合さんが運営する学校「県清酒アカデミー」で1時間ほどの講演をすることになりました。

 震災以来応援している「福島の酒」ですし、聞き手は醸造を志している若い方ばかりだそうですので、一生懸命お話ししてきたいと思っています。

 その原稿が準備できましたので、弊ブログでも公開して行きたいと思います。長いので8回に分けてUPしています。

 御題は、老舗の生き抜き方というものをお話しせよ、ということしたので、そういう方面の話しをさせていただきます。

 本来自分で「老舗」と自称するのは僭越な話しではあるのですが、他に適当な日本語がありませんので、使うことにいたしまして、つまりは浅草の、すき焼き屋ですとか、天麩羅屋ですとか、鰻屋ですとか、蕎麦屋ですとか、そういう仕事を永年して来た店が、時代の変化や危機をどのように乗り切ってきたか、をお話ししてみたいと思います。

 本日は、その第4回です。おつきあいいただけましたら、幸いです。

<以下講話本文>

(被災の経験から)

 こ​の時代、浅草の家で、身内に一人も死人が出なかった家は​珍しかったのです。それでも所謂「老舗」企業は継続して来たわけで、それは人々​が、丸焼けの状態からの復興を果たして来たからです。

 こうした被災の経験から学ぶことが出来るのは、「本当の資産と​は、金でも建物でもない」ということです。それは、第一​には働く者の心と智恵であり、また第二には店の再開を望​んで下さる御客様とつながりです。だって、そもそも金は天下のまわりもの、ですし、建物だって爆撃されれば、跡形無くなってしまいますからね。

 特に重要なのは2番目の、御客様とのつながりだと思います。

 それなりの会社であれば、それなりの人材を揃えているでしょうから、被災しても金策さえつけば、表面上の再建はできましょう。

 問題は、その後です。「是非店を再開して下さい。必ず食べに行きます。」という御客様が、どれだけいるか、が問題です。御客様自身も被災していて苦しいわけですから、下手に金など使いたくないはずです。それでも、その特定の店に行きたい、というほどの強い気持ち・つながり=絆と言って良いのかもしれませんが、そのつながりが店と客の間に出来ているかどうか、被災した時・危機の時には、それが明らかになります。

 ニュアンスがかなり違うかもしれませんが、横文字で「ブランド・ロイヤリテイー」という言葉がありますね。その究極の形が、これだと思っています。2度の被災を乗り越えた浅草の御店には、それが備わっていたはずだと思っています。

 そのことは、私も分かっているつもりではありましたが、本当の意味で心底得心しましたのは、さきほど申したましように、今回の震災後に淡島堂の前を通った時でした。ですので、皆さんの前で偉そうなことを言える立場ではないのですが、今日のところは大正・昭和の浅草人の、私が代理なのだと思って聞いていただければ有り難いです。

 では、そうした絆は、いつどのように出来るのでしょう。それは当然、御客様の人生に、その店が強く関わりを持った時にしか出来ませんね。その方の人生の喜びや場合によっては悲しみに、その店が関わった時に、初めてつながりができます。

 例えば、死んだお爺ちゃんの法事で親戚が集まった後の食事はどうしますか。お爺ちゃんが生前好きだった店、お爺ちゃんが連れて行ってくれた店で食事しませんか。当然です。

 だから「ちんや」では、生臭の食べ物なのに、戦後のある時期まで、とても御法事が多かったそうです。しかも3月と9月に多かったそうです。なぜでしょう。大空襲が3/10で大震災が9/1だったからです。忙しく悲しいとは、珍しい状況です。

 そうしたつながりを、今私達は、さらに強くして、また再生産しないといけません。再生産と申しますのは、お爺ちゃまとのつながりを御子様もへ、御子様とのつながりをお孫さんへも、ということです。

 そのように2世代・3世代に渡ってつながりのある御客様が出来て初めて、その店は「老舗」と呼ばれて良いのだろう、と思っています。あくまで自称ではなく、人様から、ですが。

 御客様とのつながりを引き継ぐために、私の代になって、始めたことをいくつか紹介してみたいと思います。画面をご覧くださいね・・・

<この話しは、長いので8回に分けてUPします。本日は、その第4回でした。>

追伸①

 藤井恵子さん著の単行本『浅草 老舗旦那のランチ』に載せていただきました。
 不肖・住吉史彦が、「浅草演芸ホール」の席亭さんや、「音のヨーロー堂」の四代目とランチをしながら、浅草について対談する、という趣向です。

 他にも20人ほどの、浅草の旦那さんたちがリレー対談で形式で登場します。

 是非ご購読を! 平成24年6月3日、小学館発行。
 ご購入はこちらです。 (できればレビューも書いて下さいね!)

追伸②

 「日本国復興元年~1千人の笑顔計画」を実行中です。

 この「計画」では、まず「ちんや」で東北・北関東の牛を食べていただきます。そして食後の飛びっきりの笑顔を撮影させていただきます。

 その笑顔画像をこちらのサイトにUPして、北の産地の方に見ていただきます。

 現在の笑顔数は270人です。笑顔数が1千人に達するまで継続してまいります。

 参加者の方には、特典も! 

 皆様も、是非御参加下さい!

 本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて859日連続更新を達成しました。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。

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