潮湯治

 潮湯治という言葉をご存じでしょうか。

 海水浴のことです。

 「図説明治事物起源辞典」によりますと、文明開化の頃、海水浴は潮湯治とも呼ばれ、温泉浴に近い、一種の療養として推奨されていたそうです。医者や軍が海水浴を推奨する、そういう時代でした。また海に浸るばかりでなく潮風を浴びる海気浴も療養とされていたそうです。

 薬や手術法が発達するにつれ、温泉浴も海水浴も療養というよりレジャーとみなされるようになっていき、海水浴のことを潮湯治とは全く言わなくなりました。

 でも私の場合、海岸近くの宿へ泊まりに行く目的は、まさに潮湯治です。

 海に入りはしませんので、海気浴専門ですが、宿の部屋から波の音を聞いているだけで、日頃の疲れがとれます。

 そんな理由で、今回の夏休みに私が潮湯治に向かったのは・・・

 茨城県の大洗海岸。

 「すきや連」に毎回来て下さる、Tさんが経営されている「大洗ホテル」に泊めていただきました。

 大洗海岸は、太平洋に面していて、波が激しいので海水浴好適地とされ、古くから海水浴場が開設されていました。真東を向いているので、日あたりも最高です。

 海は、なんと言っても、視界が開けているのが良いですよね。東京にいると、視界が開けている所は、ほとんどなく、常に圧迫感がありますが、その点、海は気分がいいです。

 それに加えて、明治時代に出来た旅館街を訪ねると、なんだか、やたらと懐かしさを感じます。歴史のロマンと申しますか、浅草っぽい感じすらするのですが、そう思うのは私だけでしょうか。そういう所を楽しむのが、私は好きです。

 そういうわけで、普通の観光客の方なら、海に行けば、ビーチスポーツとか釣りとかをするのでしょうが、私が訪ねたのは、大洗町立「幕末と明治の博物館」。

 ここはTさんのご先祖様が建設に尽力された博物館です。収蔵品の幕末・明治の史料が面白く、また私がそれ以上に面白かったのは、大洗の古写真です。私は昔のリゾートの風情が、やたらと好きなので、こういう写真を見ていると飽きません。

 あ、勿論、普通の観光の方と同様の楽しみも、充分に満喫させていただきましたよ。それは・・・

 「大洗ホテル」さんの中の、海鮮ダイニングでいただいた、岩牡蠣の天麩羅。

 これは最高でした。

 ホテルのすぐ近所には、やはり「すきや連」に毎回来て下さる、K子さんの酒蔵「月の井酒造店」さんがありますので、当然、あわせていただきました。有機認証済みで、精米歩合をあえて低くした御酒で、これもまた結構でした。

 いやあ、旨かった、大洗。

 食事も海気も。

 本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて552連続更新を達成しました。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。

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Filed under: すきや連,憧れの明治時代,飲食業界交遊録 — F.Sumiyoshi 12:01 AM  Comments (0)