25万円の靴
今日、靴職人の末光宏さんの工房を訪ねました。末光宏さんは最近、「台彪会」で知り合った方ですが、並の職人さんではありません。複雑な靴の工程の全部を一人でこなすことができて、なおかつデザインのセンスが良く、彼の創る靴は、価格25万円〜とスーパーな御値段です。完全オーダー・メードですから、納期も約6ヶ月かかります。
今私が履いている、末光靴の10分の1以下の値段の靴が、どうも私の足型にあっておらず、また底がだいぶ磨り減ってきたので、直してもらおうと思っています。
最近日本人の間に「モノへの愛着・執着が薄くなった」「モノづくりが出来る人への尊敬の感情が薄くなった」と言われています。私・住吉史彦も日々玄関でお客様のお靴を整理していて、そのことを実感しています。B級の仕上がりの靴なのに、高級ブランドのロゴが貼り付けてある靴が多いのです。靴業界の内情に詳しい人から聞いた所では、そういう靴は海外の人件費や材料の安い所で、大量に生産された物で、ロゴを貼り付ける工程だけを日本でやるのだそうです。
この調子では、日本の「モノづくり」はどうなってしまうのか、そう思いながら、末光さんを訪ねたところ、靴の世界の、いろいろなことを怒涛の勢いで教えて下さり、アッという間に2時間以上長居してしまいました。
聞けば、「靴のパッと見」を良くする技術はどんどん進歩していて、「素人さんが誤魔化されても無理はない」というザンネンな状況だそうです。なんだ、食べ物と一緒じゃないか!
モノづくりのプロセスは正当に評価され、しっかりと造られたものは、正当に褒められなければいけないと思います。「ちんや」では、玄関でお靴をぬいでいただいて、店内にお入りいただきますが、今度から、立派なお靴はどんどん褒めてさしあげようと思います。
我々が良いモノを褒めれば、その持ち主のお客様はご機嫌を良くして、さらにその後で、もう1着・もう1点を買い求められるかもしれません。結果、造り手の人にお金が回り、そのお金は回り回って日本の景気を良くします。
もちろん、やたらめったら何でも褒めるのはカッコが悪いですから、モノの良し悪しを多少はわかった上で褒めたい所です。上に書いたように、「靴のパッと見」で、素人が良し悪しを判定するのは、難しいらしいのですが、末光さんが、「このメーカーなら絶対間違いない。そのメーカーにはピン=キリはない。」というメーカー名を教えてくれることになりました。また、縫製や造作の良し悪しは、素人が見て判断できる場合もあるので、そこも教えてくれるそうです。よし!これで、靴を褒める場合のポイントがわかるぞ。むふふふ。
この話しは、貴重な話しなので、「ちんや」従業員だけなく、近所の飲食店の人達にも、良かったら聞いてもらおう、と計画しています。
本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございます。浅草「ちんや」六代目、住吉史彦でした。
*末光宏さんと台彪会については、こちらです。