気取らない鮨
鮨の「蛇の市本店」さんへ、作家のおかべ・たかしさんと一緒に行ってきました。
おかべさんの著書『くらべる値段』に弊店も出していただき、さらにそれを記念して、二人でトーク・ショーをしましたので、今回は、その打ち上げです。やはり『くらべる値段』に出ていた「蛇の市本店」さんを私がリクエストして→行って来たという次第です。
さて「蛇の市」さんは、気取らない雰囲気の中、江戸前の鮨がいただけるお店です。
と、申しますか、本来「江戸前」は気取らないもので、「気取った江戸前」が存在したら変なのです。
この店の初代が、未だ魚河岸があった日本橋北詰めで創業したのも、屋台の鮨屋でした。明治40年頃の話しです。この屋台には、志賀直哉もよく寄っていたとか。
当時は江戸時代が終わって40年。その頃も鮨は「風呂屋の帰りに1、2貫をささっとつまむ」感覚のもの=ファストフード的なものだったわけです。
日本橋近辺には、魚河岸が在ったせいか、今でもそういう感覚を残した鮨屋さんが在ります。鮨屋に関しては、すぐ近くの銀座と、かなり違う感覚があると私は思います。
で、「蛇の市本店」さんの酢飯は、すっきりとした味わいが特徴。
今は砂糖を使っているお店が多いですが、昔ながらの酢と塩だけ。そうするとやはり甘味が恋しくなるので、代わりに醤油に甘みを加えてバランスをとるんだそうな。
高級鮨より気取らない鮨の方が「仕事」をしているという、パラドックスがここに在ります。
「江戸前」の成立当時は冷蔵庫がなかったため、鮨の保存性を高めるため「仕事」をしなければなりませんでした。逆に現代の主流である生鮨は、冷蔵庫が登場してから成立したものなので、「仕事」よりネタの鮮度や「ブランド力」が重視される形になっているわけです。それが、このパラドックスの大元です。
「ご馳走様」とは、こういう「仕事」に対して言うものだと思いました。
追伸
雑誌「Dancyu」さんのお誘いにより、
二子玉川髙島屋の催事「第3回 dancyuフェスティバル~dancyu×高島屋 グルメの祭典~」に出店します。もちろん「適サシ肉」を販売しますので、お近くの方、どうぞお立ち寄り下さい。
会場:玉川髙島屋本館6階催場
会期:10月25日(水)→30日(月)
営業時間:午前10時~午後8時
本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて2.794日連続更新を達成しました。 すき焼き「ちんや」六代目の住吉史彦でした。