長寿企業の知恵④

ネットTV番組『Story 〜長寿企業の知恵〜』に出演させていただきました。

この番組は、創業100年を超える老舗企業の経営者をゲストに招き、長寿企業の経営者が持つ知恵や理念、思いを語る、というものですが、思いがけず好評で嬉しく思っています。

こちらのURLで今でも視聴可能ですなのですが、全長50分と少々長いし、そもそも動画は音が出せる環境でないとダメなので、文字情報が欲しいというご要望をいただきました。以下に公開してまいります。

(長いので15日に分けてUPしています。今日は、その4日目です)

 

石田「長寿企業であると“創業者”に関する質問も多いのでは?」

住吉「私も以前は店の過去を細かく聞かれるのが苦痛でした。しかし、これも現実ですので、そういった事情を潔く認め、今は開き直って、この話しも面白おかしく語ることにしています。色々なケースを調べましたら、創業の経緯が「いい加減」なのは、別に恥ずかしいことではないようです。例えば、久保田万太郎の『大東京繁昌記』は(1927年)を読みますと、浅草の店の固有名詞が14軒ほど列挙されていて、その中には現在「老舗」と言われている店も入っているのですが、「それらはただ手軽に、安く、手っとり早く、そうして器用に見恰好よく、一人でもよけいに客を引く・・・出来るだけ短い時間に出来るだけ多くの客をむかえようとする店々である。それ以外の何ものも希望しない店々である。無駄と、手数と、落ちつきと、親しさと、信仰とをもたない店々である。」と猛批判されています。老舗も最初から老舗だったわけではなく、その頃はそういう様子だったのです。だから弊店の創業時が「いい加減」でも卑下することはないのです。」

 朝岡「これまでの当主はどのような方々だった?」

住吉「私の父は滋夫(シゲオ)。清(キヨシ)の直系男子。昭和10年(1935年)生まれで現在は弊社会長。母を亡くしましたが、元気です。

滋夫の父・清は浅草の天麩羅屋「中清(ナカセイ)」の子として生まれ、住吉八重子(ヤエコ)と結婚して、婿に入りました。

清の父・忠次郎(チュウジロウ)は湯島のすき焼き屋「江知勝(エチカツ)」の子として生まれ、住吉まつと結婚して、婿に入りました。つまり当主は二代続けて婿。忠次郎は町会長、通り会長、議員も務めた発展家でした。

その「まつ」の母が「やす」(大正10120日没)という次第です。

清の義兄つまり「八重子」の兄・忠義(タダヨシ)は、放蕩の挙句、消息不明。

 

石田「創業当時“すきやき”とは、どんな存在だった?」

住吉「文明開化のシンボルでした。明治維新になり日本の指導者は西洋文明をとり入れ、文明開化の名のもとに旧来の習慣を破っていきますが、例えば福沢諭吉ら文化人も長年仏教の戒律によって忌み嫌われた肉食を大いに勧めるキャンペーンを張り、慶應義塾の学生たちは彼らに感化されてさかんに牛鍋屋に通うようになったと言います。代表的な文献としては『肉食之説』(明治3年)があります。」

「肉類のみを喰ひ或は五穀草木のみを喰ふときは 必ず身心虚弱に陥り、不意の病に罹かりてたおるるか、又は短命ならざるも生きて甲斐なき病身にて、生涯の楽なかるべし」さらには肉食を避ける人達の論は「人の天性を知らず人身の窮理をわきまへざる無学文盲の空論なり」

朝岡「社長は、ここまで『ちんや』一筋で勤めてきた?」

住吉「学生時代はそのまんまバブル時代という温い環境に育ち、8年間のサラリーマン生活を体験しました。当時はひたすら忙しくて、やたらと残業していました。勿論今と違って残業代は出ましたよ(笑い)。その後「ちんや」に入って、6年間父の下で修行した後、私が社長に成ったのは、200181日、36歳の時でした。自分の将来・自分の人生について危機感などというものは勿論持ち合わせていませんでした。」

「父は「お客様に親切に」と言っていたのですが、当時まったくピンと来ませんでした。言葉として漠然とし過ぎていると思ったんですね。今は親切とはお客様を「銭失い」させないことだと解釈しています。

お客様は肉の価値をあまり分かっておられず、本当に分かっているのはこちらだけなのだから、騙すことも可能です。だからこそ、お客様のことを考えて、お客様を「銭失い」させないような肉だけを売ることが大事です。それが最終的には親切に成って行くと今は考えています。」

 

朝岡「飲食の長寿企業は、他業種とまた違う難しさがある?」

住吉「最終的に・・・<この続きは、明日のこのブログで>

追伸

Dancyuさんのお誘いにより、

二子玉川髙島屋の催事「第3回 dancyuフェスティバル~dancyu×高島屋 グルメの祭典~」に出店しています。もちろん「適サシ肉」を販売しますので、お近くの方、どうぞお立ち寄り下さい。

会場:玉川髙島屋本館6階催場

会期:10月25日(水)→30日(月)

営業時間:午前10時~午後8時

本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて2.798日連続更新を達成しました。 すき焼き「ちんや」六代目の住吉史彦でした。

Filed under: すき焼きフル・トーク — F.Sumiyoshi 12:00 AM  Comments (0)