山火事
元薩摩藩士・長沢鼎(ながさわ・かなえ)がカリフォルニアに創設した「パラダイスリッジ・ワイナリー」が今回の山火事で大きな被害を蒙ったそうです。
CNNによりますれば、
「大規模な原野火災が続く米カリフォルニア州北部でワイン産地として知られるサンタローザのワイン醸造所が被害を受け、漏れ出した赤ワインが地面下の熱で煮えたぎりながら丘陵部を流れる異様な光景が出現した。」
「パラダイスリッジ・ワイナリーの経営者はCNNの取材に、敷地内は完全に破壊され、既に摘み取ったぶどうの全てを失ったと嘆いた。ただ、落胆せず小さな試飲施設を建設し、将来の事業再建をにらむ取り組みも始めた。」
・・・と報じられています。
長沢鼎は、弊ブログの5月17号に書きましたが、1852年生まれ、1934年没。
13歳の時に薩摩藩の藩命でイギリスに留学し、後にカリフォルニアに渡り「カリフォルニアのワイン王」「葡萄王」「バロン・ナガサワ」と呼ばれようにまでなった方です。
イギリスからアメリカに渡ったのは、キリスト教系新興宗教「新生兄弟社」に入って、信者らと共同生活を送るためで、ワインを始めたのも教団の経営のためでした。薩摩であることに加えて、宗教的信念が強烈、83歳で亡くなるまで生涯独身、と聞けば強情な人物を想像しますが、そんな長澤には商才がありました。
ワインの品質を上げ、米国内のワインコンクールで好成績を納めました。フランスに特約店を設け、イギリスに輸出された最初のカリフォルニアワインも長澤ワインでした。ワイナリーは広大な広さに成長しました。
しかし長澤が亡くなる少し前より、アメリカの世論は排日に傾きます。長澤の財産やワイナリーは排日土地法のため相続できず他人の手に渡り、彼の名もまた、1983年にレーガン大統領が日米交流のシンボルとして演説で採り上げるまで、忘れ去られてしまいました。
その長澤のワイナリーの一部が「パラダイスリッジ・ワイナリー」として、現在まで継承されてきたのですが、そこが今回被害に遭った模様です。
お気の毒なことです。現代のアメリカでこんなことが起きるとは信じられません。
心よりお見舞い申し上げます。
追伸①
雑誌「Hanako」1144号(2017年10月19日刊行)に載せていただきました。
お採り上げいただき、ありがとうございます。
皆様、ご購読下さいませ。
追伸②
ネットTV番組『Story 〜長寿企業の知恵〜』に出演させていただきました。こちらのURLで視聴可能です。
この番組は、創業100年を超える老舗企業の経営者をゲストに招き、長寿企業の経営者が持つ知恵や理念、思いを語る、というものです。どうぞ、ご覧くださいませ。
本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて2.792日連続更新を達成しました。 すき焼き「ちんや」六代目の住吉史彦でした。