お一人様のご予約を承ります、大晦日でも、祭りの日でも。
「ちんや」は、お一人様のご予約を承ります、大晦日でも、祭りの日でも。
弊店公式サイトの、個室の定員を「2~48名様」ではなく「1~48名様」と致しました。お一人様でもご予約を承ります。
これにより弊社の採算性は悪化するかもしれません。
また、お一人様のお具合が食事中にお悪くなった場合には、私達がお世話をする必要が生じましょうが、それでも、お一人様のご予約を承ることに致しました。
お一人様のご予約を承ることにしましたのは、
「心に残る思い出を!」という弊社の営業方針との間に、整合性をもたせる為です。
昨今世間の様子を観察いたしますと、
長寿社会をむかえて、パートナーをなくされた高齢者の方が増えました。故人の思い出を噛みしめながら、お一人で食事をなさる場面も相当多かろうと想像します。
私は、そうした場面に是非弊店をお使いいただきたと考えて、今回お一人様のご予約を承ることに致しました。
実際、私事になりますが、私の身内が、まさにそうしたケースに該当します。「ちんや」五代目の私の実父も、一昨年80歳の時に妻つまり私の母をなくし、82歳の現在「お一人様」です。
義父も、既に故人ですが、50歳代で義母をなくし、かなり長期間「お一人様」でした。
お一人様の予約を断ることは、そうした方からの予約を断ることになります。
もちろん採算性の件は悩ましいことでした。
「平日の昼に限って」とか、「祝祭日は除く」とかいう限定をつけた方が実際的であったと思います。
しかし、そのご夫婦の「思い出の日」は大晦日であるかもしれません。除夜の鐘を二人で聞いた後でプロポーズをなさったかもしれません。
そうしたお二人の思い出の大切さに比べれば、弊社の採算性は、その下に置かれるべきものだと私は考えます。そう考えて「限定」は付けないこととしました。
大晦日でも、三社祭の日でも、どうぞご利用下さいませ。
この件を本日発表しましたのは、本日が母の三回忌の命日であるからです。
この発表は、母が私にそうさせたとも言えます。
母は勉学に優秀な人でした。
今はない、盛岡市内丸(ウチマル)の料亭「河北」の娘として生まれ、
岩手県下随一の名門であった県立盛岡第一高等学校を卒業して、早稲田大学に進みました。
「一高」は戦前は男子校で、校風も「弊衣破帽」のバンカラが自慢でしたが、母は、その「一高」の、ごく初期の女子生徒でした。
早稲田を卒業したすぐ後に、縁あって浅草にやって来ました。
以来パーキンソン病が悪化して歩けなくなるまで長期間、「ちんや」の仕事と家事に従事し、外に出て行くということを、あまりしませんでした。
母は普段はずっと帳場に居て、ご注文の整理や会計に従事していました。母の容貌は、身内の私から見ても綺麗な人でしたが、所謂「女将業」はせず、客席に行くのはクレームが発生した時だけでした。
地道な、人にあまり注目されない人生を過ごして、母は一昨年の今日、浅草の「ほおずき市」の日に逝ったのでした。
今回この文をお読みになった方が母の生涯に想いを馳せて下されば、望外の喜びです。
南無観世音菩薩。