ミュージカル風暴言
さてさて都議選大惨敗となりました。
既に話題は戦犯探しに移っていて、どうやら、トヨタ・マユ子さんの「絶叫暴言」「ミュージカル風暴言」が、一番インパクトあったという人が多いようです。あの件は、笑われて終わりというわけには行かなかったらしく、真剣に成敗票を投じた方が多かったのですねえ。
で、私の感覚ですが、勇んで成敗票を入れに行く気になれませんでした。
あの態度はもちろん論外ですが、部下がミスした時に、なじりたくなる気持ちを持ったことのない経営者なんて、まずいません。だから、成敗票を入れればスッキリするだろうという見込みがたたなかったのです。
そう、この件は、上司が部下のミスを許せるか?という結構重要な話しを含んでいます。
今回マユ子さんは、秘書さんが支援者に送った手紙の宛名が間違っていたことが許せなかったようです。
これ以上私の評判を下げるな!!!
と言っていましたが、部下のミスによって、上司の評判が下がる、ということは、この世の中の全ての会社で起きていますよね。いちいち殴るんでしょうか。
例えば、私の部下がミスをして食中毒事件を起こせばどうなるでしょう。被害者の受けるダメージは、亡くなる場合もありますから、交通事故に匹敵します。私の店のブランド・イメージは計り知れないダメージを蒙るでしょうが、マユ子さんが「ちんや」の社長だったら、一体どうなるでしょう。
ラッキーなことに、私の在任期間、食中毒事件は未だ起きていませんが、肉の盛り付けの時に、指に貼っていた絆創膏が脱落して、それが客席まで運ばれて行った、という事件は起きました。マユ子さんが「ちんや」の社長だったら、この場合一体どうなったでしょう。
上司が部下をなじれば、その部下は退職するでしょう。マユ子さんとっては、それは、辞めれば済むだけの結構なご身分だ、私の評判だけ下がってどうしてくれるの?どんどんロスが生じてやるべきことがやれなくなるのに、どうしてくれるの?と思えたようです。
マユ子さん、地元を固めるべき2回生の身で政務官なんぞに抜擢されたので、オーバーワークだったのかもしれません。子育て中ということでしたが、ミスのせいでお子さんと過ごす時間が減ったかもしれません。
私も経験があります。事件処理のために、業界のアポや地元のアポをドタキャンしたことが。その面目の無さと言ったらありません。これ以上私の評判を下げるな、と言いたい気持ちが分からなくもないのです。
こういう場合、マユ子さんは、宛名を間違えた支援者に自ら先頭に立って謝りに行くべきでした。政策の仕事よりそちらを優先するべきでした。そうすれば、秘書さんも、録音などせず先生について行きます!と言ってくれたかもしれません。
残念なことにマユ子さんは、そうなさらず、悪循環・ダークサイドに陥ってしまいましたが、経営者の仕事って、ダークな気分を経験して、しかし、そこで必死に踏みとどまることが仕事なんだと私は思っています。
結局、成敗票を入れればスッキリするだろうという見込みがたたなかった為、私は棄権しました。
成敗票の行き先は「ふぁーすと」だったんでしょうが、台東区では「ふぁーすと」の二人の先生の内、一人はつい先日までジミン党だった方。もうお一人はつい先日までミンシン党だった方。なんだかなあでした。で、棄権させていただきました。ご報告申し上げます。
あ、そうそう、私の投票行動なんかより重要な話しがありました。
話しをマユ子さんに戻しますが、「ミュージカル風暴言」は、ミュージカルよりも、18世紀のオペラのアリアの前に付いていたレチタテイーボに似ていると思います。
当時のオペラは、歌手が朗々とメロデイーを歌う「アリア」と、劇を進行させるためのセリフを、歌手が独特の節まわしで語る「レチタテイーボ」から出来ていました。「アリア」はオーケストラが伴奏しますが、「レチタテイーボ」はチェンバロが、ごく簡単な和音を付けるだけ。
西洋風の文楽だと思えば分かり易いかもしれません。文楽は最初から最後まで語りますが、オペラは語る部分と歌う部分が交互に出てきます。この形式は19世紀半ばに、かのワグナーが廃止するまで使われ続けました。
そのレチタテイーボに、マユ子さんは似ています。
オペラの歴史物なら、戦争とか暗殺とかの場面があったりして、
復讐だー♪
皆殺しだー♪
とかいうセリフが普通に出てくるので、マユ子さんのセリフも、オペラ風にやると、意外と違和感ないかもですよ、実は(笑い)
メデイアの皆さん、「ミュージカル風暴言」は「レチタテイーボ風暴言」に改めませんか。
追伸1
6/1発売の「婦人画報」7月号(創刊記念号)に載せていただきました。ありがとうございます。
今回の特集は、なんでも婦人画報社さんが「総力をあげた特集」だそうですが、題して、
「世界が恋するWASHOKU」。
旨味とか醗酵とかを採り上げた後、しんがりがWAGYUです。
追伸2
拙著は好評(?)販売中です。どうぞ、よろしくお願い申し上げます。
題名:『浅草はなぜ日本一の繁華街なのか』
浅草の九人の旦那衆と私が、九軒のバーで語り合った対談集でして、「浅草ならではの商人論」を目指しています。
東京23区の、全ての区立図書館に収蔵されています。
四六判240頁
価格:本体1600円+税
978-4-7949-6920-0 C0095
2016年2月25日発売
株式会社晶文社 刊行
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