倫理と資本主義
資本主義経済は、意外なことに民族性が「おカタい」国でまず発達しました。イギリスと、それからイギリスのプロテスタントが移住して創ったアメリカですね。
拝金主義や利益優先主義が蔓延っている国では発達しませんでした。
その理由を解説した本として有名なのが、
『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』(ドイツの社会学者マックス・ヴェーバー、1905年)です。そう、あの『プロ倫』ですね。私も、あの、コ難しいドイツ語に悩まされた一人です。
日本はもちろん、プロテスタントの国ではありませんが、代替するものとして武士道がありました。
武士道が、江戸時代に藩校を通じて武士にたたきこまれ、また近代に入ってから、農民出身の兵士にも士道教育が施された結果、日本はとても倫理に厳しい国になりました。それで日本でも資本主義経済が発達したと言えるでしょう。
話しを『プロ倫』に戻します。『プロ倫』を読まされた当時私は、こんな本、何の役に立つんだ?!と思いました。人が救われるかどうかは生前の善行度合には関係無いという教説の下で、人々はむしろ善行を働くようになった、という話しに、正直私はすぐ馴染めませんでした。
しかし、今料理屋家業に従事していて、民族の倫理は、ものすごく重要だと感じます。倫理がいいかげんだと料理屋が成り立たないんです。
昨今日本を訪れている観光客はプロテスタントではありません。だから、やっぱり、どうしても、残念ながら、
いいかげん、です。
予約の時間に来ないんです。これを業界では、NO-SHOWと言います。日本語で言えば「すっぽかし」ですが、「すっぽかし」っていう言葉はなんだかユーモラスで、店は大打撃なのに笑ってしまいますから、「すっぽかし」と言わずにNO-SHOWと言います。
困り果てて、外国人の予約は、ホテル経由かカード会社経由に限ると決めているお店さんもあるようですが、私の観るところ、あまり効果はないようです。ホテル経由でもカード会社経由でもNO-SHOWは少なくないですし、ホテルやカード会社の日本人が、ウチに謝罪の電話をかけてくるのが気の毒です。
だから、私はいいかげんな民族と直接対峙して、日本で予約を取る時は、ちゃんと責任を持ちなさいよ!オタクの国とは違いますよ!と説教しています。
先日も、中国人らしきイントネーションの女性を泣かせてしまいましたが、仕方ないです。
「トリアエズ予約シマッス」って、おっしゃいますけどね。日本語の「とりあえず」の意味を分かってますか?
予約をしたら、客の側にもその約束を守る責任があるんですよ。「とりあえず予約」なんて、そんな予約は受けませんよ!
ちなみに相手が日本人でも、予約に「とりあえず」が付いたら、私は受けません。お仲間でよく相談なさってから、また電話なさって下さい!と言いますから、別に民族差別じゃあないです。
とにかく約束を守って下さるお客様のいる国=日本で商売できることは在り難いことだと、つくづく思います。
追伸
拙著は好評(?)販売中です。どうぞ、よろしくお願い申し上げます。
題名:『浅草はなぜ日本一の繁華街なのか』
浅草の九人の旦那衆と私が、九軒のバーで語り合った対談集でして、「浅草ならではの商人論」を目指しています。
東京23区の、全ての区立図書館に収蔵されています。
四六判240頁
価格:本体1600円+税
978-4-7949-6920-0 C0095
2016年2月25日発売
株式会社晶文社 刊行
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