もたれちまった 悲しみに
「モタレない肉」を標榜している私としては気にせざるを得ませんので、調べてみました。
タナベの胃腸薬「ウルソ」を。
テレビで八代亜紀さんが♪もたれちまった 悲しみに♪と、「胃もたれに悩む心情を切実に」表している、あの薬です。結構耳に残りますからね、あの歌。歓送迎会シーズンに合わせて宣伝を強化しているのか、連日視てしまいます。
さて、この薬が脂肪による胃もたれ・消化不良に効く理由は、公式サイトによりますと、
「ウルソデオキシコール酸(UCDA)が、肝臓に直接作用し、胆汁酸の分泌を促進することで、膵液の分泌を促進、胃排出を促進、膵リパーゼを活性化させ、脂肪による胃もたれ、消化不良を改善」するからだとか。
うーん、チト分かりにくいですな。このサイトは一般人向けというより、業界人向けなんですかねえ。
そこで「そもそも」に戻りますが、
まず脂肪を分解する消化酵素はリパーゼです。
糖質を分解するのはアミラーゼ、タンパクを分解するのはプロテアーゼ、脂肪を分解するのリパーゼ。これは暗記しましょう。
リパーゼは膵臓で作られて消化器に入って来ますが、水溶性なので脂肪滴の中に入ることができず、水と脂の境界面でしか作用しません。
そこで!必要になるのが胆汁酸です。
胆汁酸は肝臓で造られて→いったん胆嚢に溜まり、脂肪がやって来ると、消化器に流し込まれて来ます。そして「界面活性剤」として脂肪滴に作用して乳化させ、つまり脂と水を均等に混ぜ合わせて、リパーゼと反応し易くします。
こうして胆汁酸と反応することで、脂肪は吸収され易くなる次第です。
ウルソデオキシコール酸(UCDA)は、そういう機能のある胆汁酸の一種で、つまり元々人体の中で作られているのと同じ成分なのだそうです。5種類ある胆汁酸の中では、親水性が強いので消化器の細胞を痛めないと言います。ふーん。
人が歳をとると、この、肝臓が胆汁酸を造る機能が落ちて、胃モタレし易く成るというのが、おおまかな筋です。とざい東西。
で、ここから先が「モタレない肉」の件ですが、
脂には固形のものと、液体のものがありますね。
固形のものが融けて液状に成る温度を「融点」と申しますが、融点は脂の種類によって違うのです。
融点が高いと脂は固形ですから、胃が一生懸命働いて、それを細かくしないといけません。「胆汁酸が脂を乳化させる」と言っても、相手が固形ではやりにくいですから、胃にハードワークして事前に壊しておいてもらわないといけません。
その、胃をハードワークさせる脂、つまり融点の高い脂が、「モタレる肉」の中には多いのです。
皆様、そういう肉を避ければ、「ウルソ」を買う量を減らせるというものです。
「モタレない肉」は「ちんや」で売っています。どういう風に牛を育てると融点の低い脂が付くのか、私が知っているからです。どうぞ、お買い求め下さい。
追伸、
拙著が発売になりました。どうぞ、よろしくお願い申し上げます。
題名:『浅草はなぜ日本一の繁華街なのか』
浅草の九人の旦那衆と私が、九軒のバーで語り合った対談集でして、「浅草ならではの商人論」を目指しています。
四六判240頁
価格:本体1600円+税
978-4-7949-6920-0 C0095
2016年2月25日発売
株式会社晶文社 刊行
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