シャトーブリアン

 「成人の日」は今日ですが、1/8や1/9に御家族だけで成人式をしてしまうケースが結構あったようです。昨日、弊店へも紋服の若者が入って来てギョっとしましたが、成人式と聞いて納得。公共の成人式は荒んでますからねえ。さて、

 今年から「ちんや」精肉売店で「シャトーブリアン」を売っています。

「シャトーブリアン」とは洋菓子「モンブラン」の仲間、では勿論なく、肉の部位の名称です。

 細長い形をしたフィレ肉のうち、中央部の最も厚みのある部分のことを言います。長さにして10cm前後、目方にして1.2kg位の部分です。

 19世紀フランスの作家で政治家でもあったシャトーブリアン公が、好んでこの部位を調理させたことから、この名が付いています。フィレの特徴である、柔らかさやキメ細やかさが一段と感じられる部位である上、1頭から数キロしか取れないフィレの内の、さらにその一部ということで、究極の稀少部位と言われたりします。

 実は、弊店ではこれまで、稀少部位をことさら取り出して売る、ということをあまりしてきませんでした。稀少部位は、在庫が在ったり無かったりするからです。

 在庫が無い時に買いに見えたお客様は、当然ガッカリなさいますから、販売の係としては、それに応対しないといけません。ガッカリな気持ちをなだめるのは一苦労ですね。

 また「いつ入るの?」「入ったら電話頂戴ね!」とかメンドウなやりとりをしないといけません。

 それよりもケースに並べてある商品を、

「これ下さい」⇒「はい、ありがとうございます。」とお渡しするだけの方が、当然簡単です。

 でも、簡単なことだけしていると、お客様との関係が深まりませんね。

 せっかく、肉の専門家が応対しているわけなので、いろいろお話ししている内には、肉のウンチクをお教えすることもできるハズで、それなのに「これ下さい」⇒「はい、ありがとうございます。」だけ終わるのでは、モッタイナイ話しです。

 だから、多少のメンドウを覚悟して、稀少部位を売ってみたいと思います。

 理由はそれだけでなく、もう一つあります。稀少部位は、当然値段がお高くなりますから、単純にその部位を取り出しただけでは、値段にみあう味が感じられない結果になることがあります。

 牛全体の状態が良い場合に限って、その中の稀少部位を取り出すから旨いのです。いくら稀少部位であっても、牛全体の状態が良くなければ、値段ほどじゃないね!と言われてしまいます。

 それは困りますので、「ちんや」では牛全体の状態が良い場合に限って、その中の稀少部位を取り出して売ります。売場には「ちんや精肉部長厳選」と表示してありますが、それは、そういう意味です。

 フィレの中央部だけ選ぶことは誰でもできますが、本当に旨いと言えるかは、専門家だけが判断できることです。そういう理由でお高いのね、ということをご理解願いたいところです。

 牛全体の状態が良い場合に限って、その中の稀少部位を取り出しますので、当然さらに、在庫が在ったり無かったりします。その節は販売の係をつかまえて、どうぞ、メンドウな問いあわせもしてみて下さい。

 不愛想な連中ではありますが、悪い人間はおりません。

 本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて316日連続更新を達成しました。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。

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Filed under: すき焼きフル・トーク — F.Sumiyoshi 12:01 AM  Comments (0)