海を渡ったスキヤキ②

『海を渡ったスキヤキ  アメリカを虜にした和食』(グレン・サリバン著)
という本がかなり面白かったので、昨日から書いています。
昨日はすき焼きの件にしぼって書きましたが、今日は日本人の洋食の件です。
明治時代、日本は未だ貧しく、一方アメリカ経済は黎明期でしたので、多くの日系移民が労働者としてアメリカへ渡ります。多くはひどい待遇で、特に鉄道建設の現場はド田舎だったので、食料が調達できません。
移民達は、ロクな食事を与えられないので自分で料理が出来るになり、その中からアメリカで料理店を開業する者が現れます。1909年の統計では381軒もの日本人オーナーの飲食店があったとか。日本人による和食店より日本人による洋食店の評判が良かったというから面白いです。
当時の雑誌は、日本人によるステーキ肉の柔らかさと焼き加減を褒め、日本人ウエイターが忙しく働く様子を「無限の力が感じられる」と称賛しました。
そして、日本人による洋食店の評判が良かったことが、なんと、日系移民排斥につながってしまうのです。
日本人の洋食店の客は白人でしたので、白人洋食店のオーナーは客を取られてしまいました。不満は溜まり、1909年に「ホースシューレストラン事件」という衝突が起きます。排斥同盟も出来てしまいます。
幸いなことに当時の大統領は親日家のセオドア・ルーズベルトで、この問題が大紛争にならないよう努力しますが、アメリカの日系人は長い苦難の時期に入って行きます。
今日本は豊かになり、移民を受け入れようかという状況ですが、日本人の料理が原因で、このようなことが起きていた歴史を、この本で知ることができました。

本日もご愛読賜り、誠に在り難うございました。
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海を渡ったスキヤキ

かなり、面白かったです、この本。
『海を渡ったスキヤキ  アメリカを虜にした和食』(グレン・サリバン著)
すき焼きに限った本ではなく様々な和食が採り上げられているのですが、後半の盛り上がる部分は、すき焼きの件です。
まずは明治時代の話し。
この頃日本は未だ貧しく、一方アメリカ経済は黎明期でしたので、多くの日系移民が労働者としてアメリカへ渡ります。多くはひどい待遇で、特に鉄道建設の現場はド田舎だったので、食料が調達できません。
そこで移民達はなんと、近所の野山に出かけて獣を打って来ます。
で、すき焼き。この本では「すき焼き」と表現されていますが、これに匹敵するのは日本の江戸時代の「ももんじや」の料理と言えるでしょう。
野獣の臭みを抜く方法が「穴に埋めて置く」などリアルです。
移民達は、ロクな食事を与えられないので自分で料理が出来るになり、その中からアメリカで料理店を開業する者が現れます。1909年の統計では381軒もの日本人オーナーの飲食店があったとか。日本人による和食店より日本人による洋食店の評判が良かったというから面白いです。
しかし、そうした店も移民排斥法、そして太平洋戦争で壊滅的ダメージを受けます。
戦後、まったく違う形でスキヤキ・ブームが起きます。
GHQの日本統治に参加した米兵は駐在中たびたび開催していたすき焼きパーテイーをしていました。長期に渡る滞在ですから、気分を盛り上げる為にパーテイーをするのですが、盛り上がるのはすき焼きだ!と、すき焼きがハレの食べ物だということがアメリカ人にも分かったのですねえ。
彼らは帰国後もしばしばすき焼きパーテイーを開催→それが1960年頃には一大ブームとなり、スキヤキと言えば日本風全般を意味するところまで行きます。
坂本九ちゃんのヒット曲『上を向いて歩こう』がアメリカで『スキヤキ』と呼ばれたのは、日本の歌という位の意味で、内容とすき焼きが関係無くてもおかまい無しだったのです。
・・・このように、「アメリカを虜にした和食」と言っても、2020オリンピックに引っかけて和食を売り出そうという話しではありません。波乱の日米関係史の中でアメリカで生き残ってきた、和食の話しです。だから面白いと言えます。
著者がハワイ出身なだけに、ハワイに土着した和食の件も面白いです。
出版社: 中央公論新社
ISBN-10: 4120052508
ISBN-13: 978-4120052507
発売日: 2019/11/19

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キャッシュレス化

さて令和二年ですが、キャッシュレス化が進展する年になるのでしょうか。
たしかにコンビニで1円単位の買い物をするのにスマホ決済は便利ではあります。国策としてキャッシュレスへ進んで行くのは避けがたいと思うのですが、個人的には仕事のモチベーションが下がるなあ・・・と思っています。
年末年始に大きな売り上げを頂戴し、それを現金で支払っていただき、札を数え、100枚単位で束ねている時、
ああ、今日も大勢の方に来ていただいて在り難かったなあ♡
と思うのですが、昨年10月の消費増税以降、現金がググっと減りました。
端末を通すだけでは喜びがないんですよねえ。
・・・という話しを年末挨拶に見えた銀行の人にしたら、
ウチの銀行では経費精算がキャッシュレス化されちゃいました。
と言います。個人個人が電子マネーを持たされていて、それで清算するんだとか。キャッシュレス化が思うように進まないので、まず身内の行員から、ということなんでしょう。トホホですねえ。

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除夜の鐘

ここ数年除夜の鐘の音に近隣住民から苦情が出て中止に追い込まれるというニュースをよく聞きますが、浅草の除夜の鐘は大きい音で撞きまくっています。昨年末は私が父に代わって撞きました。
浅草の鐘撞きはフリーにどなたでも撞けるというものではなくて、事前に会を結成して、その会員だけが撞ける形=つまり会員制です。
大晦日は店が普通に営業していますので、その仕事を終え、年始の仕事の準備をしてから、会の集合時間に行くのは時間的に結構せわしなく、万全の準備をして参加してくる皆さんと比べると、手抜き参加になってしまいましたが、一応、結婚式のような黒服で参加しました。
撞き終えて、しみじみと一年が終わった今年を感じました
・・・と書きたいところですが、
観光客と思しき一団が入り込んでいて、
イエー!
イヤア!
と外国語で歓声(奇声)をあげるので、なんとも国際的というか非日本的な雰囲気で年を終えました。観光公害だよね、これも。

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年末の恒例行事

今日から始動という方も多いと思います。皆様、本年もよろしくお願い申し上げます。
さて話しを年末に戻しますが、年末の恒例行事と言えば、
政党の合併と「ふるさと納税」
かと思います。どちらも不愉快な話題ですね。
立民・国民の合併は失敗したようです。
「ふるさと納税」は、返礼品の還元率が制限されて下火になると思いきや、昨年末もしつこく宣伝していて、私はいちいち面白くないと思いながら視ておりました。
もちろん私は自分の居住地以外の自治体に寄付することに反対ではないです。
が、今の「ふるさと納税」と称するものは官製通販以外の何物でもないです。
そして一番問題と思うのは、
〇〇市の牛肉
△△市の鶏肉
を全部まとめて通販していることです。単純に考えてですよ、
〇〇市の牛肉は全て美味しく、
△△市の鶏肉も全て美味しいと思いますか?
同じ市でも色んな生産者の方がいて、色んな肉があるという事実が、どこかへ吹き飛んで行っています。
変ですねえ。
問題点は還元率ではないと思うんですよね。還元率を改善しても、そもそも良くない制度だと私は思っています。

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雑踏警備

年末年始の雑踏警備に「DJポリス」さんは、もう欠かせません。
大晦日など夜を徹しての勤務しておられる様子を拝見し、さらに観光客の態度が悪い様を見ると、申し訳ない気分にすらなります。DJさん曰く、
提灯に触れることはご遠慮下さい。
提灯に触れることはお止め下さい!
提灯に触れることは、絶対に止めて下さい!!
提灯が落下した場合、大勢の方を巻き込み、大変大きな被害が生じる恐れがあります!
そ、それは流石にリスクを大きく評価し過ぎかと・・・

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ざるいぬ

元日の放送の、
NHKスペシャル「東京ミラクル」第4集 老舗ワンダーランドー佐藤健・物々交換の旅
に出演させていただきました。
この番組は、タイトルどおり佐藤健さんが「物々交換の旅」をするという演出です。
東京の老舗店に行き、その店を象徴する品物を手に入れ、それを持って次の老舗に行き、前の店から持って来た品と交換するという段取りです。
局の人から
普通の老舗紹介番組にはしたくないので・・・
と言われ、なるほど結構と私は思いました。
収録当日、佐藤健さんが何を持って来るかは予告されず「ドッキリ」だったのですが、私は見た瞬間それが何か分かってしまい、
ああ、「ざるいね」ですねー!
と言ったので佐藤さんは拍子抜けしたようでした。
私がいただいたのは、仲見世の「助六」さんの「ざるいぬ」でした。
「助六」のご主人には、拙著『浅草はなぜ日本一の繁華街なのか』に対談相手として登場していただいたので存じ上げているのです。
さて、その「ざるいぬ」または「笊かぶり犬」ですが、それは江戸時代から続く、犬を模した小さな玩具です。笊をかぶっています。
竹かんむりに犬が「笑」であることから、この犬は笑→福を招くとされているのです。
このように江戸の玩具は、それを使って何かのプレイをするというよりは、言葉遊びを採り入れた「縁起もの」という感覚の品が多いです。
それが江戸趣味だというのが「助六」のご主人の論で、この番組でも自分の店を象徴する品として登場させたという次第です。
私は「適サシ」の肉を折り詰めにして、次の店へと佐藤さんに託しました。

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「東京ミラクル」インタビュー③

元日放送の、
NHKスペシャル「東京ミラクル」第4集 老舗ワンダーランドー佐藤健・物々交換の旅
に出演させていただきました。
「東京ミラクル」は、2020オリンピックをひかえて東京の魅力を紹介するシリーズです。これまで「築地」「鉄道網」「アニメ」を特集してきましたが、今回は東京の老舗を紹介します。
東京は、関東大震災、東京大空襲で二度にわたり壊滅的な被害を受け、焼け野原となったにもかかわらず、世界最多の老舗店があります。その長寿の秘密を探る、という番組でした。
お恥ずかしいことに私のインタビューもありまして、こんな↓ことをお話ししました。
その三<従業員に美味しい肉を食べさせる件>
「適サシ肉宣言」とは等級が4等級を使う方針のことで、従来高級とされてきた5等級を排除しますのですので、経営上はリスキーでした。
そこで従業員を全員一人ずつ呼んで、それぞれ90分程度かけて、この件を説明しました。大勢一緒の座学形式ではダメだと思ったからです。
この「一人ずつ説明会」で皆分かってはくれたようでした。反対意見はまったくありませんでした。しかし、腑に落ちたかというと別問題で、そうは見えませんでした。何しろ化学用語のオンパレードですから。アミノ酸とか不飽和脂肪酸とか、脂の融点とか。
しかし私は、この話しがいかに大事な話しでも、従業員に丸暗記を強制する制度を造りたくはありませんでした。試験をして成績と給料を連動させるとかはイヤでした。で、考えたのが「29日の肉まかない」でした。
理屈が心底分からなくても、とにかくウチの肉はうまい!と皆が確信していれば、それで充分と思うことにしました。理屈に興味のある人がやって来れば、その時は私がお相手すれば良いのです。
お客様に直接接するのは従業員です。今は、その一人一人が自分の体感で肉を語れるのが最善と思っていますので、「自分の感想をお客様に言えば良いのさ」「不飽和脂肪酸とか言わなくてもいいよ」と言っています。
色々調べた挙句、人の体感でオーケーなんだ!食べ物に関する限り、体感と合理性は一致するという認識に辿り着いたので、今はそう言えます。全てBSEのおかげです(笑)以前の私なら理解の遅いスタッフを軽んじたかもですが、そうならなくて良かったです。
美味しい肉を従業員が食べてしまうというのは、一見顧客第一主義に見えないかもですね。しかし考えていただきたいのですが、「私達、美味しい肉を食べたことなんかないです!」「何が美味しいかなんてゼンゼン分かりません!」つて言う人に接客されたいでしょうか?
で、美味しい肉を従業員が食べてしまいますが、回り回って、お客様の為になると思っています。で、うまい肉は従業員が食べる、という形になっています。(終わり)
*見逃した方は→「NHKオンデマンド」で1年間配信されます。

本日もご愛読賜り、誠に在り難うございました。
弊ブログは2010年3月1日に連載スタートし、本日は3.598本目の投稿でした。本年3月1日まで無事連載が続けば10周年になる予定です。引き続きご愛読を。

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「東京ミラクル」インタビュー②

元日放送の、
NHKスペシャル「東京ミラクル」第4集 老舗ワンダーランドー佐藤健・物々交換の旅
に出演させていただきました。
「東京ミラクル」は、2020オリンピックをひかえて東京の魅力を紹介するシリーズです。これまで「築地」「鉄道網」「アニメ」を特集してきましたが、今回は東京の老舗を紹介します。
東京は、関東大震災、東京大空襲で二度にわたり壊滅的な被害を受け、焼け野原となったにもかかわらず、世界最多の老舗店があります。その長寿の秘密を探る、という番組でした。
お恥ずかしいことに私のインタビューもありまして、こんな↓ことをお話ししました。
その二<いろいろ調べて結局元に戻ってしまった件(2001~2017年)>
BSE問題の後、景気も悪かったこともあり業績が大変悪い時期が続きました。
そこで私は本当に美味しい牛・美味しい肉とはどういうものなのかを考え始めました。それまでは良く考えなかったわけですから、人間は危機に直面しないとサボるものだという話しです。
その思考の成果は2017年に「適サシ肉宣言」として公表します。「適サシ肉」とは黒毛和牛のメスで、30か月以上肥育された牛で、等級が4等級の肉を熟成させたものです。19年には牛の重量が480㎏以下という項目も追加しました。
「適サシ肉」かどうかを判断する為のデータは、03年に導入された個体識別制度で得られるようになったデータです。そのデータは従来産地から市場関係者までで止まることが多く、流通の末端業者や消費者が接する機会は少なかったのですが、国民の安全・安心のためということで、誰でもいつでも見ることが出来るようになりました。皮肉なことに、BSEの副産物として美味しい牛かどうかのデータが得られるようになったのでした。
「適サシ肉宣言」については事前に父(弊社会長)には相談しませんでしたが、この件が大ヒット(大炎上?)し世間の話題になったので、やがて気づいたようでした。興味をいだいた父が私に、この件を私に尋ねてきましたので、「適サシ肉」の要件を説明しましたら、父の反応は怪訝な様子で、昔から美味しい肉とはそういう肉だ。何故それが話題沸騰なんだ?という感じでした。
父は、個体識別制度が無かった時代の人間です。データは乏しく、感覚による評価で仕事をしていました。しかし、結局似たような選択をしていたのです。また「適サシ肉」要件で仕入れた肉が皿に盛られて運ばれているのを見た時私は、子供の頃の肉だ!昭和50年代の肉みたい!と感じました。データで調べても感覚で感じても、似たような結果になっていたのです。
そう言えば、日本の老舗企業には食べもの関係が多いです。食品に酒、薬、旅館まで入れれば、老舗業界の多数派です。食べものは人が本能で接するものなので、感覚に従って行くと、結局合理的な結論と同じになるのかもしれません。(二終わり)
*見逃した方は→「NHKオンデマンド」で1年間配信されます。

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「東京ミラクル」インタビュー①

昨夜放送の、
NHKスペシャル「東京ミラクル」第4集 老舗ワンダーランドー佐藤健・物々交換の旅
に出演させていただきました。
「東京ミラクル」は、2020オリンピックをひかえて東京の魅力を紹介するシリーズです。これまで「築地」「鉄道網」「アニメ」を特集してきましたが、今回は東京の老舗を紹介します。
東京は、関東大震災、東京大空襲で二度にわたり壊滅的な被害を受け、焼け野原となったにもかかわらず、世界最多の老舗店があります。その長寿の秘密を探る、という番組でした。
お恥ずかしいことに私のインタビューもありまして、こんな↓ことをお話ししました。
その一<「たぶん安全」の件(2001年)>
2001年9月10日に千葉県で飼育されていた牛がBSEだと発表され、大問題になりました。弊社でも売上は半分位になり、3年間戻りませんでした。
その時私は自分の売っている肉について、「絶対安全」ではなく「たぶん安全」として売っていました。「安全です!安全です!」とRRすることはしませんでした。
絶対安全と言う根拠がなかったからです。その後全頭検査が導入され、03年には個体識別制度が導入されましたから、その段階では「絶対安全」と言うことも可能になりましたが、01年の問題発覚直後はそう言えず、お客様に嘘をつかない為には「多分」が必要でしたが、その対応は「弱腰」と当時批判されたりもしました。
ちなみに「多分」の根拠ですが、BSEの原因である飼料「肉骨粉」は、乳牛の乳の出を良くするための飼料で、そもそも肉牛には与えないものなので、肉牛のみを仕入れている「ちんや」は多分安全だったからです。老齢になつて乳の出が悪くなった乳牛を食用に転用する(「乳廃牛」と言う)ことはありますが、それは肉質が残念なので「ちんや」は昔も今も仕入れていません。で、「たぶん安全」でした。
結局日本は2013年に「BSE清浄国」に認定されますが、それまでに26頭の感染牛が確認されました。「絶対安全!」と言っていた人達の発言は嘘になってしまったわけです。国産から米国産に切り替えて「絶対安全!」と言った人もいましたが、その後アメリカでもBSEが発生しています。
そもそも店がお客様から信用を獲得するには、嘘をつかないことが大切ですが、普通に商いをしている範囲では嘘をつく必要性など感じません。嘘をつく必要性を感じてしまうのは、自分にとって著しく不利な状態に陥った時で、私の人生では2001年9月がその時でした。その時にどう行動するかが「分かれ目」なのだと、振り返って思います。
日頃「信用第一」と言う人は多いですが、それが実は簡単でないことは、不利な状態を経験して、初めて分かりました。(一終わり)
*見逃した方は→「NHKオンデマンド」で1年間配信されます。

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