リクエスト食
淀川キリスト教病院の「リクエスト食」の件が文庫本になりました。
『人生最後のご馳走 淀川キリスト教病院ホスピス・こどもホスピス病院のリクエスト食 』(青山ゆみこ著、幻冬舎文庫)
この病院の緩和医療内科ホスピスつまりガンなどの終末期の患者のケアを担当する部門では、2012年の設立時から毎週土曜日の夕食に「リクエスト食」という取り組みを行っていて、素晴らしい医療だと評判になっています。
2013年5月放送のNHK『クローズアップ現代』でも採り上げられて評判でしたが、その時は最後の食事としてすき焼きを注文した、ガン患者の男性が登場しました。
その方は末期の食道ガンで、ほとんど食べることができない状態でした。腸から直接栄養をとる、腸ろうを付けていますが、口から食べることにこだわっていました。闘病生活を支えてくれる妻に、食べている姿を見せてあげたいと思ったからです。
そして、すき焼きをリクエストしました。
「嫁はんも一緒に私も一緒に、一緒にお鍋を突っつこうねって、2人で。2人だけにとって、いい思い出が出来れば、もうそれで」と。
その夫婦は鍋が大好きでした。しかし病に襲われ、ゆっくりと鍋を囲む時間を持つことができませんでした。それで、食べられなくても、鍋を囲んで久しぶりの夫婦の時間を持ちたいと、すき焼きを希望なさったのでした。
結局、この方が食べられたのは豆腐一口だけでした。
しかし「2人で温泉かどっかに来てるみたいだね」と喜んで、10日後に亡くなりました。
このように、できるだけ選べるようにしていくということが、その患者さんの、その人らしさを支えると、この病院では考えて、「リクエスト食」を実践しています。
そして、患者さん達が要望する食は一人一人の人生の思い出と結びついたものです。
食の力が人の心を向上させ、癒すことができるという実例ですね。素晴らしいことだと思います。
本日もご愛読賜り、誠に在り難うございました。
弊ブログは2010年3月1日に連載スタートし、本日は3.501本目の投稿でした。