続、今昔すき焼き噺
雑誌『味覚春秋』の6月号(通巻519号)に向笠千恵子先生が、
「今昔すき焼き噺―浅草ちんや会長・住吉滋夫さん」と題して私の父のことを書いて下さった件は、弊ブログの6/4号に書きました。
<今日は、その最後の部分の転載です>
最後に五代目はこうしめくくった。
「この半世紀は日本の食肉の産業革命期で、すき焼き屋は高級路線をとらないと生き残れなくなりました。でもこれからも愛されていくためには、私は横綱栃錦が言われたことを大切にしたいんです。取的の頃、親方がちんやに連れて行ってくれるのが無上の楽しみで、それを励みにがんばったというんです。」
同感だ。日本人は老いも若きも、すき焼きの思い出を胸に抱いて人生をがんばっている。すき焼きは心のごちそうなのだ。
とはいえ、これは幼少時に家族とすき焼きを食べたり、親しい人たちと鍋を囲んだ体験があればこそ生まれる感情。すき焼きはとてもメンタルな料理なのだ。
山本周五郎賞受賞作で映画化もされた山田太一の『異人たちとの夏』では、幼少期に死別した両親が冥界からやってきて、主人公と囲むメニューがすき焼きであり、その舞台は、なんと浅草のすき焼き屋。
すき焼きは日本人論にまでつながる。<終わり>
追伸、
拙著は好評(?)販売中です。どうぞ、よろしくお願い申し上げます。
題名:『浅草はなぜ日本一の繁華街なのか』
浅草の九人の旦那衆と私が、九軒のバーで語り合った対談集でして、「浅草ならではの商人論」を目指しています。
東京23区の、全ての区立図書館に収蔵されています。
四六判240頁
価格:本体1600円+税
978-4-7949-6920-0 C0095
2016年2月25日発売
株式会社晶文社 刊行
本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて2.321連続更新を達成しました。