群馬すき焼きシンポジウム②
<この話しは長いので、昨日の、このブログから続いています>
充分長期間肥育された牛が熟成させ易い牛です。
まずですね、熟成という現象についてここで確認しますと、それは肉を構成するタンパク質が、タンパク質分解酵素によって分解されて、アミノ酸に成ることですが、そのタンパク質分解酵素の働きを抑制するものが牛の体内にあります。
それは成長ホルモンです。
これは、まあ、当たり前と言えば当り前です。牛が成長しようとしている時にタンパク質分解酵素が強く働くと困りますからね。
老化したタンパク質を分解して、体をリニューアルすることは、若い内であってもとても大事なことなのですが、成長期にはなにしろ成長しないといけません。だから、その時期にはタンパク質分解酵素の働きが抑制されているのです。
何を言いたいのか、と申しますと、
成長期の若い牛の肉を熟成させようとすると、成長ホルモンがあるのでタンパク質分解酵素があまり働かず、タンパク質がアミノ酸にあまり成りません。旨みの素であるアミノ酸が足りないのだから、その肉はあまり旨くない、ということになるわけです。
したがって、風が吹けば・・・みたいな話し ですが、
充分長期間肥育された牛が熟成させ易い牛です。
ところがです、霜降り(=脂肪)の方は、若くても立派に入るものですから、生産者の中には霜降りが入ったことで「出来上がり!」と判断して、牛を出荷してしまう方がいます。
良くありませんねえ。サシは入っても成長途中なんです。
熟成させにくくては旨くならず、旨くなくては、死んだ牛が浮かばれません。
もう1点。水っぽい牛は熟成させにくいです。
これは単純に変質しやすいからです。
熟成の大敵は雑菌ですが、その雑菌さんが喜んでしまうからですね。
それともう1点。痩せた牛はいけません。
肉の表面を脂が覆っていれば、熟成中に酸化・変質するのは脂だけですから、それを取り除けば良い話しですが、その脂が少ないと、すぐに赤身の部分まで変質を始めてしまいます。
牛が肥えていれば、肉の表面を脂が覆っており、痩せているとその脂肪が少ないわけで、痩せた牛はいけません。
以上のような点に、生産者の方・流通業者の方がご留意下さいましたら、「すき焼き県・群馬」も夢ではないと思っています。
②③は当然のことなので、もっぱら私が申し上げたいのは、①の肥育期間の件です。
肥育期間を延ばせば、エサ代はかかるし、牛舎の回転率が下がることは良~く分かります。
そこを何卒、頑張っていただきたたいと存じます。
よろしくお願い申し上げます。
<「群馬すき焼きシンポジウム」に参加したい方は>
群馬県庁企画課にお問い合わせください。事前登録制ですので、必ず県庁に連絡を入れてから御参加下さい。
TEL 027-898-2457 FAX 027-223-4371
詳細は、こちらです。
追伸、
一冊丸ごと「すき焼き大全」とも申すべき本が出ました。
タイトルは『日本のごちそう すき焼き』。11月19日平凡社より刊行されました。
この本は、
食文化研究家の向笠千恵子先生が、すき焼きという面白き食べ物について語り尽くした7章と、
全国の、有志のすき焼き店主31人が、自店のすき焼き自慢を3ページずつ書いた部分の二部で構成された本で、
この十年の「すきや連」活動の集大成とも言える本です。私も勿論執筆に加わっています。
是非是非お求めください。
弊店の店頭でも販売しますし、こちらからネットでも購入できます。
是非。
本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて1.727日連続更新を達成しました。
毎度のご愛読に感謝いたします。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。