同じ味②

(この話しは昨日から続いています)

さて、すき焼きが一番旨いのが現代である理由は、遺伝子レベルで牛を把握しているからです。

なんの遺伝子かと申しますと、例えば、脂肪に関わる遺伝子です。

牛の脂には飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸があるというのは、昨日話しましたが、牛肉の風味や食感は、この内の不飽和脂肪酸の含有量が多いほど良いことが知られています。

オレイン酸に代表される不飽和脂肪酸は融点が低くて良く融(と)ける為、胃モタレすることがなく、またその融けた脂に味や旨み成分が溶(と)け込むので、食べた時に全体の味がマイルドになります。

「ちんや」さんの脂は甘いねえ、と良く言われるのは、これです。

その不飽和脂肪酸を、牛は体内で、飽和脂肪酸を不飽和脂肪酸に造り換えることで合成していますが、実際その合成にかかわるのは酵素の一種です。その名を「ステアロイル-CoAデサチュラーゼ(SCD)」と申しますが、まあ、そういう名前は忘れましょう。

さてさて、ここからがスゴい所ですが、牛の遺伝子がどういう型であったら、SCDの働きが強いのか、現代の日本人は既に特定しているのです。

なんでも遺伝子の、878番目の塩基の違いによって、酵素の働き具合が違うんだそうですが、まあ、ここも忘れましょう。

とにかく、牛に旨い脂が付くのか・不味い脂が付くのか、遺伝子型で分かるのです。

これでも明治時代と同じ味ですか?

あまり言いたくない話しですが、現代に史上かつてなくマズいすき焼きも実は存在する理由についても、まったく同じ理由で説明がつきます。

味を良くする遺伝子ではなく、

・早く牛が増体する遺伝子

・早く霜降りが付く遺伝子

も特定されていますから、味を度外視して、そういう価値を追い求めれば、味はどんどんマズくなりますね。

これは、技術の使い方の違いの話しで、いずれにせよ、明治時代と同じ味ではありません。

だいだいですね、話しは多少飛躍しますが、伝統産業が、

・昔の仕事のコピーをしてしまってる。

・原点をすっかり忘れて時代に迎合し切っている。

の、どちらのケースでも伝統産業は滅びて、その国の個性は失われると思います。

報道関係者があの調子では、日本もやがて、世界にいくつも在る停滞した先進国の内の、単なる一個と成り下がりましょう。トホホですな。

まあ、彼らのことは忘れて、

当家歴代のすき焼きの中で、自分の代のすき焼きが一番旨いのだ!

と威張れるよう、頑張って行く他ないな・・・

・・・そんなことを思いながら、ある邦楽の演者の方と飲んでいたら、

私は、邦楽を現代の音楽として演りたいの!

と聞かされました。

おお、その意気や良し。

邦楽も、昔の仕事のコピーであっては面白くもなんともない筈です。

お互い頑張りましょう。それっ、

♪Let it go, let it go

Can’t hold it back anymore

Let it go, let it go

Turn away and slam the door♪

ん? これは毛唐の歌だったか、間違えた。

本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて1.714日連続更新を達成しました。

毎度のご愛読に感謝いたします。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。

Filed under: すき焼きフル・トーク,ぼやき部屋 — F.Sumiyoshi 12:00 AM  Comments (0)