ザックリ浅草史④

<この話しは長いので、4/17から4/20まで四日間に分けてUPしています。>

 「ニッポン全国彪友会」のオプショナル・ツアー用の講話「ザックリ浅草史」も、ついに昭和の戦争の時代になりました。

 昭和も二ケタに入りますと、浅草は国家総動員の時代にあわない人達~たとえば永井荷風や高見順に愛されるようになります。半体制と言うと言い過ぎかもしれませんが、そういうイメージの、小さい心の逃げ場として、もうしばらく繁栄を続けていきます。

 そして戦争です。

 歴史とは皮肉なもので、総動員されたくない人々が集っていた浅草が、昭和20年3月10日の大空襲で完全に壊滅します。去年の津波の映像も酷かったですが、あれに匹敵する酷さで、全てが焼き尽くされたのが浅草でした。

 関東大震災でも浅草は壊滅しましたので、二度目です。

 戦後人々は、もう一度芸能の殿堂・娯楽の殿堂を再建しようとしますが、それを果たせない内、時代が変わってしまいました。  

 昭和30年代辺りから、浅草は寂れ始めます。テレビ時代を迎えて、エンタメ産業の主役が変わりましたね。

 浅草はリアルな芝居や、映画が中心で、それを再建しようとしていましたが、時代に乗り遅れます。「再建」「復興」では×で、新しい時代を創らないといけなかったんですね。

 戦後の若者のカルチャーは、浅草のような古い土地でなく、新宿・渋谷・六本木など城南方面の新鮮な繁華街で育ちましたので、浅草は急激な地盤沈下の時代を迎えました。  

 貧すれば鈍するで、苦し紛れに馬券売り場を誘致したのも失敗でした。「ウインズ浅草」が出来た六区は、競馬目当ての客のみが集中する光景となりました。場末っぽい雰囲気が漂い、夜間は7時になると人通りも疎らになってしまう始末でした。私が子供の頃です。

 衰退の説明として、①テレビと②東京の城南方向への拡大が挙げられていますが、この時代のことを思い返してみますと、私の直感では、①②の説明以上になんか、もっと加速度的に場末化した感覚がありました。一度トップに昇って、その後でトップの座が揺らぐとかなりキビしい、そんな感じがですね、感覚だけで言って申し訳ないですが、したことを、ここで皆さんにお話ししておきます。

 そして現代です。その後浅草は再生しました。

 でも日本一の盛り場・芸能の殿堂だった頃とは違って、国際観光地としての再生でした。

 たしかに再生は果たしました。再生しましたが、問題は在ると、私は思っています。だって観光ってのは、しょせんは「スポット見物」で、名物・名所以外にお金の波及が少ないです。ハッキリ言って、仲見世周辺だけなんですね、人出があるのは。

 しかも、そういう人出も観光客は、やはり4時半には引いてしまうので、かつての夜の賑やかさは、決して戻っていません。

 浅草の全盛時代は、そういうことはありませんでした。もう一度おさらいしますが、

①浅草の中心には浅草寺(=宗教)があり、その北に、

②猿若町(=エンターテインメント産業)があり、さらにその北に、

③吉原(=セックス産業)が並んでいました。そして、

④浅草の南には米蔵(=経済力)が集中していました。

 これほどのラッキーさの中で、浅草は成立したのだ、ということを忘れてはいけません。だから、この世の中に2つとない土地であることがすぐわかると思います。今、

 スカイツリーが出来たから、いいじゃない!

と人は言うかもしれません。

 たしかに大震災の時は観光業の儚さを思い知らされましたので、スカイツリーが来て救われたと思います。

 これから浅草とスカイツリーの間に、人が通り、カネが落とされ、そのカネが、

名所・名物・名品そして名人を育てるとは思います。でも、今は江戸時代と違いますから、そこまで行きますかね。

 東京タワーの景気は、およそ10年だったそうです。スカイツリー景気はせいぜい7~8年でしょう。せいぜい5年、という人もいます。だから決して今の景気に甘えたらダメですね。

 スカイツリーのついでに浅草、ではなくて、

 浅草のついでにスカイツリー、という流れに成るよう、自らの魅力・自らの差異性に磨きをかけたい、と決意しておるところでございます。

 皆さんにおかれましては、その様子をご確認いたたくために、今回限りでなく、2度3度、4度5度と浅草をお訪ねいただきたく、心より、お願い申し上げます。

 本日は、貴重な御時間を本当に有り難うございました。これにて、「ザックリ浅草史」を終わります。

 本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて782日連続更新を達成しました。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。

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Filed under: 台彪会,浅草インサイダー情報 — F.Sumiyoshi 12:01 AM  Comments (0)