PR、試食、消費拡大
新聞記者というのは難しい稼業です。自分が良く承知していないことについて、限られた資料を基に記事を書かないといけないからです。気の毒な稼業と言っても良いかもしれません。
11/23に群馬県で開催しました第10回「すきや連」について、地元紙に書かれた記事も、気の毒なものでした。
<記事の引用>
上州牛や下仁田ネギを使った県産すき焼きを広めるため「すきや連群馬事務局」は23日、全国の老舗すき焼き店や野菜農家ら約30人を県内に招き、食材生産地の視察やすき焼きの試食をしてもらう「すきや連例会」を開く。下仁田町でネギやコンニャク、シイタケなどの生産現場を見学するほか、前橋市内の飲食店で県産すき焼きを提供する。事務局は「有名店で県産の肉や野菜が使われれば、食材としての信頼が高まり出荷拡大につながる」と期待する。(中略)
試食会には本県の生産者も参加する。「全国に群馬のすき焼きをPRする絶好の機会」と意気込む。(後略)
<引用終わり>
この、PR、試食、消費拡大という一方通行の、ステレオタイプから抜け出すことは難しいんでしょうか。
だいたい、ですよ。「試食」という書き方だと、御招待=我々が、ただ食いするみたいですが、勿論、違います。
今回は食材をPRされる側=買う側の、すき焼き屋たちが、わざわざ好き好んで、交通費を支払って群馬まで行き、15.000円という安からぬ会費を支払って、群馬のすき焼きを食べるのです。
それって「試食」ですかね。
産地見学にも行きますが、バスのチャーター代をワリカンします。「PR」なら、そういう費用は現地業者がもちますよね、普通。
ここで群馬県の生産者の皆さんの名誉のために書きますが、群馬の皆さんは、日本のすき焼き文化の発展に貢献したい、という有り難い御志を持っておいでの方ばかりです。「すきや連」活動にもご協力いただいています。
そうでなければ、すき焼き屋がわざわざ群馬から食材を買う意味がわかりません。
いくら群馬にすき焼きの食材が豊富と言っても、他の県が同じ食材を生産していないわけではありません。品物が同様で、群馬も他県も、どちららにも御志がないのなら、どこから買っても同じですよね。群馬から買う必然性は無いです。
そうではなく、群馬の方々が、有り難い御志を持っておいでで、品物の仕様を合わせて下さったり、「すきや連」活動にご協力下さるから、そちらから具材を買うのだし、わざわざ交通費を払って、会費を支払って、群馬のすき焼きを食べに行くのです。
地元の「およばれ」に応じて「試食」しに行くのではないのです。どうです?かなり記事のニュアンスと違いますね。PRする側=PRされる側、という対決構図ではなく、全体が「すきや連」活動なのです。
今時、TPPも襲って来るというのに、PR、試食、消費拡大という一方通行で良いのでしょうか、今後も。ステレオタイプ過ぎませんか。
単なる、PR⇒売りさばくという以上の発想、この国の食文化の中で、農産物をどう位置づけるとか、という発想が在っても良いのではないか、と思います。
それでも、まあ、記事にならない方が良かったか、と言いますと、そうではなく、まったく採り上げられないよりはマシです。まずは関心を持っていただいた上で、誤解されている点はお話し申し上げて認識を変えていただければ良いのです。
「好きの反対は無関心」とか言いますからね。だからFBでも「いいね」しておきました。
それにしても、新聞記者というのは気の毒な稼業です。この記者さんは、限られた資料を基に、我々が会費や見学費用を支払うことをご存じなく、最初から「県産品のPR事業」と決めつけてしまったのかもしれません。
ブログを書く方が、楽しいですね、全く。
追伸
11/27に第五回「ちんや」すき焼き通検定試験を実施します。
年内最後の検定です。今年の内に、「自称すき焼き通を、公認すき焼き通に!」
詳しくは、こちらです。
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