土産の応酬
最近、学校の後輩が親父さんの後を継いで、薬局チェーンの社長に成り、早速取引銀行の幹部を弊店に招待しました。「接待の初陣」というわけですね。
頑張れ、新米社長! と思っていると、お土産の応酬が始まりました。
応酬と言いますのは、現在の東北地方を指す地名のこと、では勿論なく、招待側の新社長が、「ちんや」の佃煮を土産として、銀行に持たせるのに対して、銀行の側も、お返しに菓子を外から持ち込む、というやりとりのことを言います。
こうしたやりとりは特段珍しいことではないのですが、多少の注意を要します。どこに、注意を要するか、と申しますと、お持ち込みの菓子をお預かりする時です。
土産を部屋の中に置いてくと先方に見えてしまうので、裏で預かってくれ、とおっしゃることがあります。この時、そのお客様が正確に「○○社さんに接待されている、××銀行の者ですが・・・」と言って下されば、話しがすぐ見えるのですが、
お客様によっては、「○○社さんの席の者ですが・・・」とか「△△の部屋の者ですが・・・」くらいしか言っていただけないことがあります。
まあ、接待されていることを、あまり知られたくない気持ちはわからないでもありませんが、「○○社さんの席・・・」の「さん」を聞き落とすと全然意味が違ってしまいます。また、「△△の部屋の者ですが・・・」という言い方だけだと、さらに困ります。話しが正確に見えません。
こういう言い方だと、その「△△の部屋の者」つまり銀行の方が土産を引き取りに見えた時、○○社さんから注文を受けていた「ちんや」の土産も一緒にお渡ししてしまいます。だって、「△△の部屋」の方ですからね。
当然、引き取りに来た銀行の方は?と思い、「こっち(=菓子)は自分のだけど、こっち(=「ちんや」の佃煮)は頼んでないよ!」と言われるでしょう。
さて、そう言われて混乱するのは、「ちんや」の方です。「頼んでないよ!」とうことは、「ご注文を間違って聞いていたのかしら!」と慌ててしまいますね。
でも△△の部屋の○○社の方から、間違いなく、「ちんや」の土産のご注文は出ていて、まだ引き取りに見えていないだけなのです。
ややこしいのは、このケースとは別のパターンで、招待側が、料理と「ちんや」の土産の他に、さらに外から何か土産を追加で持って来られることもあります。だから土産が2種類ということは、当然「土産の応酬」だな、と決め込むと違うこともあります。
まあ、対策としては味気ないですが、番号札をお渡しする他ないでしょうね。
と、いう次第で、この日のご接待は無事終了。ところで銀行はどこを使ってるんですか、と、その新社長に聞くと、
私のキラいな、某メガバン!
うーむ、彼の会社には親切なのか、あの銀行。土産まで持ってきて。
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