今こそ宮崎牛を食べる会-卓話全文①
弊店の、年末年始の営業について、問い合わせがたくさん来ています。年内は12/31まで営業、年始は1/2より営業いたします。また本日は火曜日ですが、臨時営業いたします。よろしくお願い申し上げます。さて、
12/26に「今こそ宮崎牛を食べる会」を開催しました。
以下は、その時にいたしました、私の話しの全文です。やや長いので3日にわけてUPいたします。ご笑覧下さい。
<以下卓話全文>
こんばんは。先日ボコボコにされました、顔面の整復手術が上手くいきまして、皆様の前で、お芝居が出来ることを嬉しく思っております、エビ様でございます。え?そのネタはもう古い?それは、そうでした。早速本題に入らせていただきます。
宮崎県の畜産再建は勿論、応援したい。
でも、今ゼロからやるなら、従来の仕事そのまま再建、だけでなく新しい価値観に基づいて再建しても良いのでは? と、いうことをこれからお話しいたします。
「価値観」と言うとブランド化批判の話しだな、と思う方がいらっしゃるかもしれませんが、ブランド化そのものを批判する話しは、今日の所はいたしません。何故なら、牛をまったくブランド化しない、という選択は現実的でないからです。
1980年代に日米牛肉・オレンジ交渉というのがありまして、その結果1991年から、海外の安い牛肉が入ってくるようになりました。海外から安い牛肉が入ってくる以上、それと張り合って国内で、より安い肉を生産する、というのは、事実上困難です。
人件費も飼料代も高い日本で畜産をやる以上、安い、単なる栄養源としての肉ではなく、そこに何か付加価値を付けて、仕上がったものを高く買っていただく他ありません。ブランド化が避けられない理由がそこにあります。だから、ブランド化そのものへの批判は、今日はやめておきます。
ここで問題にしたいのは「何か付加価値を付けて」の「何か」です。従来のブランド牛が、世の中にアピールしてきた価値を今後も、そのまま続けて訴えていくべきかどうか、その辺りを今日は皆さんと一緒に考えたいと思います。
世の中の変化につれて、価値観の流行り廃り、ということがありますね。ブランドの表現する価値そのものが、今の時代にあっているのか、この現代を生きている方の相当数から共感を得られるか、という点が問題です。牛の場合はこのことを、今考えてみる必要があると思います。
さて、そういうことで、牛のブランドの基礎となる価値を、今まではどこに求めてきたか、これからはどうなるか、考えてみましょう。
従来のブランド牛が体現している価値は二つありますが、その内の一つは、「肉がやわらかい」ということです。このことが明治時代以来とても重視されてきました。現代人は肉がやわらかい、ということを全く特別のことと感じませんが、昔は、とてもスペシャルでスゴいことだったのです。
肉を霜降りにすれば、やわらかさを実現できます。初期の牛鍋に使われた肉は、肉用に育てられた牛の肉ではなく、農業のかたわら飼われていた牛の肉ですので、当然硬かったわけです。
その牛を農作業からリタイアさせた後、太らせて、つまり霜降りをつけて、肉をやわらかくする、これが最初の仕事でした。
次いで、牛の交配が始まりました。霜降りが付きやすい牛同士の交配を、この交配をひたすら続けてきたのが、今の黒毛和牛の実態です。この方式が現代まで続いています。
牛の交配の先進地は近江・松阪でした。やがて、その後人口受精や、精子の凍結が出来るようになり、全国で行われるようになりました。牛のブランド化が全国で一気に進んだのは、最初に申しました、肉の輸入自由化の前後です。
口蹄疫流行の時も、スーパー種牛の確保が問題の焦点になりました。長年交配に交配を重ねてきた牛なので、貴重ということで、なんとか処分を免れようとしたのです。
実は今、黒毛和牛のメスの、おおよそ4頭に1頭は親戚です。スーパー種牛の遺伝子を引く子同士で交配に交配を重ねてきたせいで、そういうことになっています。人間の4人に1人が親戚だったら、ビックリですよね。でも黒毛和牛の世界では、そういうことが普通になっています。これというのも、「やわらかい肉」をひたすら追求した結果です。
たしかに、硬いものを軟らかくして食べたい、というのは人間の一つの欲求ですが、今売られている肉ほど、やわらかい必要があるのか、という意見にも耳を傾けた方が良いと、私は思っています。
<卓話、明日へ続く>
追伸
精肉売店の、正月用肉予約販売の〆切りは本日12/28です。12/29-31の昼時は大行列ができますが、その最中でも、本日中に予約していただければ、お並びいただくことなく、確実に御肉をお渡しいたします。是非ご予約を。
本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて303日連続更新を達成しました。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。
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