陸軍御用
不勉強なことに、そういうすき焼き屋さんがあったことを存じませんでした。
報道で初めて、その旧店舗が取り壊されたことを知りました。
取り壊されたのは、老舗すき焼き料亭「信田(のぶた)」さんの店舗です。
所在地は、以前は群馬県内有数の花街として知られた高崎市柳川町。2010年に営業終了した後も姿をとどめていたそうですが、この6月に解体・撤去されたそうです。
「信田」さんは明治20年代の創業と言われています。西洋料理もやっていて、すき焼き専門というわけではなく、戦前は陸軍の将校たちが通う社交場という感じだったようです。
新潟県の新発田には料亭風のすき焼き店「八木」さんがあり、かつては陸軍歩兵第16連隊に愛され、今でも自衛隊の人たちに愛されていますが、高崎も事情が似ていて、ここには第15連隊がありました。
こういう土地には、大勢で宴会を出来て芸者衆を呼べる店が自然と出来ました。で、メインの料理がすき焼きだったということだろうと思います。
戦前の「信田」さんの広告を見ると、「陸軍御用」「牛肉」「西洋御料理」と書かれていて、仲居さんはエプロンを付けています。
今回の報道を受けて、群馬の肉方面の知人から「群馬のすき焼きを語る折には欠かせぬ店」だったと惜しむ声が届きました。
廃業なさった2010年は、私が「すきや連」を始めた2008年の少し後で、その時は営業されていたのですから、丁寧に調べて、ご縁を創っておけばよかったと悔やまれます。
今回、建物を残して古民家再生することも出来なかったようです。残しておけば「かつてすき焼き屋だった」ということが記憶されるはずですが、完全取り壊しなので、それも叶わないようです。残念ですね。
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すき焼き「ちんや」六代目の住吉史彦でした。