脂肪の質
昨日ここで、Meat up片平梨絵さんのブログをお勧め致しました。今回の「適サシ肉」騒動(?)について、最も適格に評価してくれた一文ですので、皆さんにも是非お読みいただきたいと思います。
「適サシ宣言」を伝える報道の様子を拝見しておりますと、A5等級をやめることだけに注目した記事が多いのですが、そこは流石に片平さん、私が脂肪の質も考えていることを分かっていてくれました。引用しますと、
「適サシ宣言は、霜降り肉の否定ではなく、脂の量より、質が大事だというほうが捉えらやすいのかな。という気がします。」
で、その「質」の件ですが、
「脂肪の融点は、肥育月齢が長くなると低くなる傾向があります。それは、脂肪に含まれる不飽和脂肪酸の割合が高くなるためです。」
「そのメカニズムをひも解くと・・・・牛の脂肪酸を不飽和化する酵素(ステアロイルCoAデサチュラーゼ=SCD)は、13カ月齢以降に活性化するといわれています。けれど牛の成長ホルモンは、SCDの発現量を抑制します。体が成長している間は、SCDが抑制されていて、成長が止まる頃になると、成長ホルモンの分泌が低下し、そこからSCDが活発になり、不飽和脂肪酸が増えると考えられています。 詳しい説明は別の機会に・・・」
えー、「またの機会」ですか!
では、ここは代りに私がご説明いたしましょう。
成長ホルモンが働いてSCDが抑制されている状態の牛は、言ってみれば、
高校の相撲部の部活男子
のようなものです。
SCDが働けば脂肪酸が「不飽和化」されます。不飽和化の作用によって、不飽和脂肪酸たとえばオレイン酸が増えてくれば、オレイン酸の融点は16.3℃と低いので融けが良くて、食べ易いです。
一方成長ホルモンの作用によりSCDが働かず、飽和脂肪酸たとえばステアリン酸が多ければ、ステアリン酸の融点は69.9℃と高いので融けが悪くて、食べるとモタレます。70℃では人の体温より高いですからね、モタレます。
「部活男子」とは、後者の状態です。
前者はと申しますと、
「三十路のステキな女性」
成長ホルモンが減ってきて、お肌ピチピチではありませんが、小娘だった頃よりずっと魅力的な方。
同じ月齢でもメスの方がオスより不飽和脂肪酸(オレイン酸)が多いのです。
このように25か月の去勢オスと、32カ月のメスでは、同じ黒毛和牛でも、脂の質という観点では、
部活男子と三十路女子くらいの違いがあるのです。
その二者を等級だけで比較しても、ダメなことは、すぐお分かりいただけると思います。脂肪の質も考慮しないといけないのです。
今回の私の「適サシ宣言」は、その脂肪の質も視野に入れたものでした。片平さんのブログなどを通じて、そのことが広く知られれば嬉しいです。
片平さん、ありがとうございました。
え?
結局、部活男子と三十路女子のどっちを食べたら良いのか って?
そ、それは、やはり、「お好み」です、もちろん。
追伸①
今年も「ミシュランガイド東京2017」に載せていただきました。 3年連続掲載です。ありがとうございます。
追伸②
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本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて2.547日連続更新を達成しました。