すき焼きを現代に活かす~商いは、楽しく・古風に・斬新に④

「浅草法人会」さんの主催で講演会をさせていただきました。

演題は「すき焼きを現代に活かす~商いは、楽しく・古風に・斬新に」でした。

おかげ様にて募集定員を超えて満員になり、実に恐縮なことでした。

このページでも公開して参りますので、ご笑覧下さい。長いので14回に分けて公開します。

なお内容は、「法人会」さんが相手ですから、経営者の方向きにアレンジしてございます。

<以下本文>

生産地の地名がブランドになるのは、1935年(=昭和10年)以降のことでありまして、松阪牛が『全国肉用牛畜産博覧会』で名誉賞を受賞したことから全国的に知られるようになりました。しかし、この後すぐに日本は戦争に突入してしまいまして、第一回の松阪肉牛共進会が開始されたのは、戦後の1949年(=昭和24年)のことでした。

この辺りが牛のブランド化のさきがけです。これ以前は、肉牛の生産と申しましても、最初は田圃で使役するわけです。ですので1960年頃(昭和30年代中頃)まで「肉用牛」とは言わずに、「役肉用牛」と言われていました。最初から肉牛として育てていなかったんですね。

それがブランド化の進展と並行して、「役」が取れていったわけです。で、肉質も変わって行きまして、今日皆さんが良く目にする所謂「霜降り」の肉が登場するわけです。

ここでもう一回整理しますと、「今半」「今朝」と言った場合、それは近代的で衛生的な屠殺場から牛を仕入れている、という意味のブランドで、次に神戸ビーフと言った場合は、牛が売られている土地のブランドで、その次に松阪牛と言った場合は、牛の生産地のブランドという具合に、ブランドの意味あいが変化してきたわけです。

3番目の産地ブランドが確立したのが昭和30年代のことでした。そして、さらに申せば、それ以降は、あまり画期的はことが起きていなくて、今は個人ブランドが2~3在ったりしますが、全体的にはあまり進歩していない、と申すことができます。

これ以上話すと愚痴が入りますが、なんか新しい発想ってないの?って私は思いますし、誰も出さないなら、オレが出そうかな!って最近は思ったりしています。

このように、たいていの料理は、時間をかけてだんだんに日本人の間に定着して来たのに対し、すき焼きは幕末から明治初期の、ごく短期間に国民食になりました。すき焼きは明治時代という特定の時代と結びついています。日本人が近代化へのチャレンジを始めた時代つまり現代へと続く道を歩み始めた時代の、民族的な強烈な記憶とすき焼きはつながっています。

この点が、すき焼きを商売にする人間にとっては非常に大事な点ですので、ここであらためて指摘させていただきました。

次に、浅草にすき焼き屋が多いわけもお話ししておきましょう。

これは特に深い理由はなく、結果的にそうなっただけと思われます。明治5年~15年頃に、牛鍋屋の流行がありまして多数の店が開業しました。 既に明治10年には東京府下に488軒もの牛鍋屋があった、と言いますから、かなりすさまじいブームだったようです。

この時期が、浅草の繁華街としての全盛期に当たっていて、浅草は日本随一の繁華街でしたので、店を開業しようとする者は、場所として浅草を選んだと思われます。すき焼きとか洋食は、その時代の新文化・新ビジネスですから、ビジネスとして成立させるために、経済力のありそうな土地へ出るのは当然のことで、浅草に店が出来たのは当然の成り行きと思います。

例えば、今半さんと米久さんは、地方から上京して来て、浅草を選んで開業しています。逆に、以前から浅草で商売をしていた者が、牛鍋の大ブームを見て、商売がえした者もいます。浅草が栄えていたので飲食店の方が儲かると考えた者がいたんですが、そう、手前どもの御先祖のことです。御先祖は実は・・・

<この話しは長いので14回に分けて公開します。続きは明日の弊ブログにて。>

追伸①

「ぴあMOOK 旨い肉 2014 首都圏版」

~感涙必須の旨い肉200軒 に「レストランちんや亭」の、ハンバーグとサイコロステーキを載せていただきました。

ご購入は、こちらです。

追伸②

「日本国復興元年~1千人の笑顔計画」を実行中です。

この「計画」では、まず「ちんや」で東北・北関東の牛を食べていただきます。そして食後の飛びっきりの笑顔を撮影させていただきます。

その笑顔画像をこちらのサイトにUPして、北の産地の方に見ていただきます。

現在の笑顔数は353人です。笑顔数が1千人に達するまで継続してまいります。

皆様も、是非御参加下さい!

本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて1.219日連続更新を達成しました。

毎度のご愛読に感謝いたします。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。

Filed under: すき焼きフル・トーク — F.Sumiyoshi 12:01 AM  Comments (0)