肉食の社会史

『肉食の社会史』(中澤克昭)(山川出版社)を読みました。日本社会おける肉食について、学術的にシリアスに検討した御本ですが、
日本人が仏教を信じるようになってから明治維新まで、日本人は肉食をしなかった、という単純な理解では足りないことを、この御本は教えてくれます。
基本のトーンとして、ずっと肉食は避けた方が良かったものの、
・公家が中心の西日本と、武家が中心の東日本では温度差があり、殺生禁断が武士に浸透するには時間を要した。
・飼育している動物を食することと、野生動物を狩って食べることでは違いがあり、飼育している動物を食することの方が避けられていたこと。
・神社、とくに諏訪神社が肉食を正当化する免罪符のようなもの=鹿食免を発行していたこと。
などが興味深い内容です。
諏訪神社の鹿食免は「極北」の肉食正当化理論とも言うべきもので、動物は穢れているものだから、信心のある人が食べて、その肉体の一部になれば、その人が成仏する時に一緒に動物も成仏できる(意訳)という理論です。
こういう理論を構築するほど、昔は肉を食べるのが、本当に大変だったのですねえ。
たまには、こういう御本も読まないといけません。
ISBN:978-4-634-15138-3

Filed under: すき焼きフル・トーク — F.Sumiyoshi 12:00 AM  Comments (0)