東京発のおいしい豚肉
「すきや連」で旧知の植村光一郎さんが、
『東京発のおいしい豚肉』という御本を出されました。(ISBN978-4-904733-06-6)
植村さんと言えば、最近は和牛の輸出でも知られていますが、やはり何と言っても、TOKYO―X豚の開発が有名です。この御本は、TOKYO―Xが誕生してから有名になるまでの苦労ものがたりと言うことが出来ます。
さてTOKYO―Xは、1997年に東京都の畜産試験場が開発し、高級豚肉の先駆けとなった品種です。
その美味しさを知った植村さんは、経済効率ばかりを追求してきた、それまでの豚肉業界を転換しようとします。
TOKYO Xの生産やブランド管理は、豚さんの健康に配慮し、肉のおいしさと安全性にこだわることにして、 それを支える「4つの理念」を発表します。それが「安全性(Safety)」 「生命力学(Biotics)」 「動物福祉(Animal Welfare)」 「品質(Quality)」 です。この理念に基づき、TOKYO X は育てられているのです。
Safety 安全、だから安心です
豚の健康状態を良好に保ち、病気への感染を防ぐよう努めています。 肥育期間は抗生物質を含まない指定飼料を使っています。
Biotics 本来の生命の力を活かします
指定飼料はポストハーベストフリー、つまり収穫後に農薬を使用しないで、遺伝子組み換えを行っていないトウモロコシや大豆を採用しています。
Animal Welfare 快適な飼育環境の中で育てます
動物本来の生理機能に沿った飼育管理を行い、より健康な豚に育つよう心がけています。ゆったりとしたスペースと充分な換気、採光を保った豚舎で育てています。
Quality 3品種の交雑による新しい品種です
脂肪の質と味が良い北京黒豚、筋繊維が細かく肉質が良いバークシャー、脂肪交雑が入るデュロックの3品種から、それぞれの良いところを取り込んで改良しました。
・・・この開発とブランデイングが行われたのは、1997年から。つまり景気が非常に悪かった頃です。そんな中でいくたのご苦労があったことが、この御本で分かります。当時スーパーのバイヤーは日々の売り上げを作ることに疲弊していて、その上の役職者に巡り合えて、ようやっと商談が進んだと聞きます。
そして、逆に、厳しい環境だったからこそ関係者が鍛えられたとも言えます。今やTOKYO―Xアソシエーションという立派な組織が出来ています。
不景気は、しっかりしたブランドを創り、
バブル景気は、いい加減なブランドを創る、
という一つの事例と言うこともできると思います。
植村さん、出版お芽出とうございました。
本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて3.021日連続更新を達成しました。
すき焼き「ちんや」六代目の住吉史彦でした。