このたびの東海地方の水害で被災された皆様に、心よりお見舞い申し上げます。さて、
8月15日をもちまして、「ちんや」の店をいったん閉め、休業することを先月末の弊ブログで公表しました。
大勢の方に伝わったようで、ご取材も入ってきます。別に悪いことをしたわけではないので、お受けしますと、
今まで一番印象的なお客様を教えて下さい!
というご質問がありました。
うーん、難しいご質問ですね。しばし黙考。これ(↓)にしました。
「最後の正月」のお客様にしました。
正月になりますと思い出しますのは、とある会社のOB会のことです。
毎年正月3日の昼11時半から「ちんや」で開かれていました。
しかし、です。そのOB会の予約が弊店に入ったことはありませんでした。そう、毎回予約無しで「フリーで」集合して見えるのです。人数は12~13人ほどでした。
この方式は店側としては、実に困る方式でした。何故って、正月の浅草で13人ものまとまった席を確保するなんて至難の業だからです。
え? 人数? 集まってみないと分からないけど、そうねえ、たぶん12~3人じゃないのかあ。
と簡単におっしゃるので、私は、
予約無しで、そんなに簡単に13人の席なんか造れませんよ!
とキレないよう堪えるのに必死でした。
しかし年を経るにしたがい、席を確保するのは楽に成っていきました。
13人⇒10人⇒7人⇒5人⇒3人と人数が減っていったからです。
そして、ある年ついに、お一人に成ってしまいました。
最後のお一人様は、「ちんや」の前の路上で、11時半から1時間ほど立ち尽くしておいででしたが、やがて諦め、
誰も来ないから帰るね・・・
とおっしゃいました。私は、
お一人でも結構ですから、召し上がったらいかがですか?
と申しましたが、
いやあ、悪いから帰るよ。
と言って帰っていかれました。こんな忙しい日に一人で席を使っては悪い、という意味でしょう。「お一人様ブーム」が起こるだいぶ前のことでしたから。
だんだん人数が減っていたのは、こちらも分かっていました。事前に出欠を採らなかったのは、御病気とかお互いの事情を知るのが辛かったからでしょう。
だから、あの時もっと強くお勧めすれば良かった、強引にでも店の中へ入れてしまえば良かった、そう思います。
結局、その方との御縁は、その日が最後でした。
あれは、1999年か2000年のことだったと思います。毎年正月が来ると思い出します。
<その他の、すき焼き思い出ストーリーは、こちらです。>
本日もご愛読賜り、誠に在り難うございました。 弊ブログは2010年3月1日に連載スタートし、本日は4.145本目の投稿でした。