ニッポンチ!⑥

小学館の文芸雑誌「qui-la-la」(きらら)で河治和香先生の新連載「ニッポンチ!」が好調です。
和香先生が、「駒形どぜう」の三代目を主人公にした小説『どぜう屋助七』(2013年)にウチのご先祖を登場させて下さって以来、新しい連載が始まるのを楽しみにしておりますが、今回は明治の浮世絵師を主人公にした小説です。登場する絵師の作品がウチにあったりしますので、なおさら楽しみなことです。
登場するのは歌川国芳門下の絵師たち。国芳には歌川芳虎、芳艶、芳藤、落合芳幾、さらには月岡芳年、河鍋暁斎といった弟子がいましたが、国芳が幕府に逆らう位の人だったので、弟子達の性格も皆ユニークで。その人物描写もまた、この小説の面白いポイントだと思います。
連載6回目の1月号には楊洲周延が登場しました。
この小説の登場人物は歌川派の絵師達つまり町人ですから、幕末維新の動乱期を生きたと言っても、戦に参加はしていません。
が、楊洲周延(ようしゅう・ちかのぶ)だけは珍しいことに武士の出身で、一度は国芳に入門したにも関わらず戦に行き、重傷もおっているという経歴の持ち主です。
周延は越後国高田藩・榊原家の下級藩士の子として天保9年(1838年)に生まれました。榊原家は「徳川四天王」の一角ですから、幕府が第二次長州征討を行った時、周延も従軍します。
ここまでは藩命にしたがっただけだから普通。しかし周延はさらに上野の彰義隊の戦いに高田藩士を率いて参戦、上野で敗北した後も北へと転戦を続けて、宮古沖海戦で大怪我をします。
この怪我が癒えた頃世は明治時代となり、周延は画業を再開、最初は西南戦争を描いたりしていましたが、やがて美人画で有名になります。「ちんや」が所蔵している、この絵も開化美人を描いています。
これまで私は周延の画風と戦歴が結びつかず不思議に思ってきましたが、この小説の中で和香先生は、一つの理由を示しています。それは周延が「人形好き」だったこと。この件は周延の普通の履歴に出て来ず、今回の小説で初めて知りました。なるほど!と思ってしまいました。
「ちんや」が所蔵している周延は、もう2点。こちらこちらでご覧いただけます。

追伸、テレビ出演の告知です。
2020年元日放送の、
NHKスペシャル「東京ミラクル」第4集 老舗ワンダーランドー佐藤健・物々交換の旅
に出演させていただきます。
「東京ミラクル」は、2020オリンピックをひかえて東京の魅力を紹介するシリーズですが、今回は東京の老舗を紹介します。
東京は、関東大震災、東京大空襲で二度にわたり壊滅的な被害を受け、焼け野原となったにもかかわらず、世界最多の老舗店があります。
番組では、俳優・佐藤健さんが「長寿の秘訣の象徴」である老舗のとっておきの商品を、物々交換しながら訪ね歩き、伝統を受け継ぎながら進化を続ける常識外れの商売哲学を探って行きます。
*放送予定は以下の通りです。
<本放送>
1月1日(水)夜10:15〜11:04
<再放送>
1月2日(木)午前4:10〜4:59
<NHKオンデマンド>
本放送から1年間配信されます。

予告動画は、こちらです。

本日もご愛読賜り、誠に在り難うございました。
弊ブログは2010年3月1日に連載スタートし、本日は3.588本目の投稿でした。

Filed under: 憧れの明治時代 — F.Sumiyoshi 12:00 AM  Comments (0)