一番の癌
発言に、もちろん私は賛同できませんし、発言した人の人間性すら疑ってしまうような言い方でしたが、観光と文化財の関係について重大な問題提起をした功績はあると思いますよ、ええ、皮肉ですけどね、当然。
その発言とは、
ヤマモト・コーゾー大臣の、
「一番の癌は学芸員」という発言です。
「一掃しないとだめだ」とも言ったとか。すぐに撤回したそうですけどね。
なぜ「癌」で「一掃する必要がある」のかと言うと、
学芸員に「観光マインドが全く無く」、
「インバウンドの興味を引くさまざまなアイデアについて「『文化財が大変なことになる』と全部、学芸員が反対する。観光立国として(日本が)生きていく時、そういう人たちのマインドを変えてもらわないと、うまくいかない」からだそうです。
想い起しますと、江戸の昔から観光の目玉は、「御開帳」などの文化財でした。
しかし当然ながらその文化財には、観光の目玉としての価値だけではなく、本来の文化財として価値があるわけで、その価値を深く識っている方もおいでです。その人達から見たら、群れを成して押し寄せる観光客など、イライラの対象でしかないでしょう。
だから「さまざまなアイデアについて全部、学芸員が反対する」は言い過ぎでしょうが、「反対する場合がある」なら事実でして、実際しばしば摩擦を産んでいます。例えば、ウチから近い所では、上野。
では学芸員とは別に接客専門職をおけば良いかと言うと、そう単純な話しでもなく、観光客も、その文化財の価値を一番良く分かっている人に説明して欲しいのです。そう、観光客とは実に貪欲で無遠慮なものなのです。わざわざ、取りにくい休みを取って、遠くから運賃をかけて来たのだから、普通の対応では納得いかないのです。
この話しは職人と販売員の関係に似ています。弊店では実は職人と販売員が同一人物なので、接客が不得意な人間も販売をしています。
不得意ではありますが、まさにその肉を仕込んだ、本人ですから、
この肉はなかり良いですよ。今朝ボクが仕込みましたけどね、包丁がスーっと入りましたから!
というような会話が出来て、それで売れるのです。
販売専門で仕込みにまったく関わらない人だけで売り場を造ると、今時のデパートのように売れなくなってしまうのです。
話しを戻しますが、観光と文化財の件は、おそらく永遠のテーマで白黒つけられません。塩梅をして行くしかないと思います。
で、あるにも関わらず、「癌」発言への反発心から、文化と観光の間に溝が拡がり、塩梅が出来なくなれば、大変寂しいことになって行くだろうと私は思います。
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