ついて来れない視聴者
最近「適サシ肉」がすっかり有名になったものですから、メデイアの方々などに、どういう肉が美味しいのか、色々説明する機会が増えました。
その場合に、どうしても避けて通れないのが、
生化学です。
アミノ酸とか脂肪酸とか乳酸とかコハク酸とかリンゴ酸とか鈴木さんとか佐藤さんとか・・・耳慣れない単語を言わないといけません。
ところが、そういう単語を私が発し出すと、とたんにADさんの顔が曇ります。
「その話しには、たぶん、視聴者が、ついて来れないと思うんですよ・・・」
例えば、脂肪の量については格付けの等級の話しをすれば、まあ、だいたいOKですが、脂肪の質を語らねば「片手落ち」でして、脂肪の質を語るには、脂肪酸とかグリセロールとかの単語を言わないといけません。
で、たいていは、そこはカットとなります。トホホです。
義務教育で、さんざん理科を習わされているのに、なんで視聴者は「ついて来れない」んでしょうか?
冥王星より木星の方が大きくて、冥王星は「準惑星」で木星は「惑星」だとか、ほとんどの人が知っているのに、なんで水や脂肪については、あんまりご存知ないんでしょうか?
変ですよね。水は毎日飲むのに。
実に変ですよね。NASAに就職するわけでもないのに、天文に詳しいって変です。
男が星座に関する知識を活かせるのは、カノジョを夜景の素晴らしい所へ連れ出してプロポーズする時ぐらいなもんです。つまり一生に一回。
え? オレは毎週そういうことをしているぜ って?
君は死刑に処します。
さて死刑囚以外の読者の皆さん、話しを元に戻しますが、私は義務教育で、もっと水とかタンパク質とか脂質とかについて学んだ方が良いと思うんです。「食育」で田植えをするのも結構ですが、田圃の水についても知って欲しいです。
何故なら、水の硬度と和食の出汁の旨さには、強い関係性があるからです。江戸料理で日高昆布を使うのは、関東の水の硬度が5.5mg/Lだから。京料理で利尻昆布を使うのは、京都の水の硬度が4mg/Lだから。
それをご存知であれば、硬度が304のエビアンや315のヴィッテルで昆布出汁を引こうと企てる人が登場する筈はないのです。
理科の先生方は、この件を、いかがお考えになるのでしょうか?
賢い視聴者を増やすために、冥王星のことより、食べ物のことを教えませんか?
追伸①
今年も「ミシュランガイド東京2017」に載せていただきました。 3年連続掲載です。ありがとうございます。
追伸②
拙著は好評(?)販売中です。どうぞ、よろしくお願い申し上げます。
題名:『浅草はなぜ日本一の繁華街なのか』
浅草の九人の旦那衆と私が、九軒のバーで語り合った対談集でして、「浅草ならではの商人論」を目指しています。
東京23区の、全ての区立図書館に収蔵されています。
四六判240頁
価格:本体1600円+税
978-4-7949-6920-0 C0095
2016年2月25日発売
株式会社晶文社 刊行
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