恒例の忘年会

台東三田会の恒例の忘年会が今年も「ちんや」で開催されましたが、今年は恒例でなかったことが1点。

それは私自身が卓話の講師だったことです。

今年の10月、慶應義塾の広報誌『三田評論』に出演させていただきましたが、それを会の幹事さんが読んで下さっていて、今回卓話を!ということになった次第です。

で、私が講師だったのですが、その演題は「すき焼きはなぜ、焼かずに煮るのか?!」

内容をここでご紹介しますが、

なぜ煮るのか?を考えるには最初に日本人がどのように牛肉を食べて来たか考えないといけません。

日本人は「煮る」という調理方法を好んできました。水の豊富なこの国の人々は「煮る」という調理方法を発達させて来ましたが、フランスは「焼く」、中国は「炒める」ですね。で、日本は煮ます。

そもそも「煮る」という調理方法は、あらためて申せば水を媒介として食材を加熱する方法です。

「煮る」の決定的な特徴は、品温が100℃を超えないということです、当たり前ですが。

100℃を超えませんので牛肉を煮た場合も80℃から90℃で加熱されます。で、和牛肉はその温度帯で香り物質をたくさん揮発させるのです。

和牛肉は海外産の肉に比べて香り成分の総量が圧倒的に多く、特に「ラクトン類」という有機化合物がたくさん揮発します。桃やココナッツといった果物の好ましい香りを感じさせる匂いですね。

その「ラクトン類」こそが所謂「和牛香」つまり和牛の一大特長であるところの、独自の良い匂いの正体だと、近年の研究で明らかにされたのです。

このように牛肉を煮る、しかも客の目の前で煮るという調理方法が和牛の「香りが良い」という特長を最も楽しめる方法だと言えるのです。

どうも、焼き肉屋さんに行った時より、すき焼き屋さんに行った時の方が良い匂いがするような気がするんだよね・・・と感じるのは、不思議ではないのです。

そして、それ以前に、日本人はとにかく煮るのが好き。コンビニでおでんが売られているのは、おでんが煮ることを突き詰めた料理だからです。

すき「焼き」という料理名なのに煮ているのは、一体全体どういうことなんだ?!という超基本的な疑問の答えがここに在ります。

まずもって、日本人はとにかく煮るのが好き。

そして香りが豊富という和牛の特長を堪能するには、煮るのがベスト。

そういうわけです。

ああ、すき焼き屋で良かった!そう思いながら、皆さんにお話しさせていただきました。

追伸

肉の情報ポータルサイト「肉メディア」で、私の連載が始まりました。

題して、「大人のすき焼き教科書」。

弊店でリアルなイベントも企画しています。

こちらから、どうぞ、ご覧下さい。

 

本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて2.132連続更新を達成しました。