実証試験

南日本新聞さんが最近鹿児島県の畜産業の動向を伝えています。最近の記事に曰く、

「4等級和牛の生産技術構築 消費者ニーズに対応 鹿児島県経済連が実証試験へ」

はい、4等級を重視するのは基本的には私は歓迎です。

「最高ランクの5等級より安く、サシ(霜降り)と赤身のバランスが良い4等級の牛肉は国内の量販店を中心に需要は高い。一方、高値を目指しサシが入りやすい改良が進んだことで、2013年に69%だった3、4等級の割合は20年は44%に減っている」

私が「適サシ肉宣言」をしたのは2017年ですが、その後も過剰なサシ指向は止んでいないようです。

しかし、この記事を読んで行くと気になる部分も。

「実証は去勢牛50~80頭を使う。肥育期間を従来の20カ月から15カ月に短縮。サシが増える前に出荷し、肥育コストを削減する。単価の低下を補うため、採算が取れる枝肉重量が確保できるよう成長を促す配合飼料を開発。最適な給餌方法のマニュアルもつくる。」

うーん、本当に美味しい肉を目指すなら、「肥育期間の短縮」は目指さないでいただきたいです。

若い牛さんには、硬くて融けにくい脂(=不飽和脂肪酸)が付きますから、肉を食べれば食後にモタれます。成長期の子に不飽和脂肪酸が付くのは避けがたい生理ですから、「肥育期間の短縮」を目指すことは、硬くて融けない脂を目指すのと同義です。

4等級の肉には、5等級より少ないとは言え、多くの脂が含まれています。その脂が硬くて融けないとなると、食べ手にはなかなか辛い状況と思います。私は、この点は歓迎しません。

「適サシ肉」の定義には「肥育期間30カ月以上」という規定を入れており、今回の実験で出て来る肉は、最初から対象外となってしまいます。

また去勢牛よりメス牛の方が、柔らかくて融ける脂が付いてベターなのに、実証実験では去勢牛しか実験しないのが不可解です。おそらくは、肉重量を増やせるのが去勢牛の方なので、そうしているのだろうと想像します。

総合的に推察するに、この実験の真の目的は、美味しい肉を目指すことでないと思われます。記事に書かれている「消費者ニーズ」とは「美味しい」の意味ではないのでしょうね、きっと。

この実験の真の目的は「肥育期間の短縮」と「肉重量の確保」だと推察致します。

もちろん、そういう実験が畜産業の経済性改善に資すると言えなくもないので、私は全否定を致しませんが、

その肉を、私が好き好んで食べることはないと思います。

鹿児島の4等級が今までより美味しくなくなる懸念すら抱いてしまいます。心配です。

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Filed under: すき焼きフル・トーク — F.Sumiyoshi 12:00 AM  Comments (0)