春鼎寮美食会
近江八幡のすき焼き店「毛利志満」の森嶋さんが、2017年から会社のPR誌を発刊されています。
名付けて「ネノネ」。
歴史的な「ルーツ=根」から聴こえる音。もうひとつが、周辺のさまざまな生産業者さんとの「繋がり=根」から発する音。「ネノネ」とはこの二つの音色を意味しているのだそうです。ユニークですね。
タイトルがユニークなら中身も、かなり掘り下げたものでユニークです。私の知る限り、すき焼き屋のPR誌の中で、こういうのを見たことがないです。
今回のテーマは、
「春鼎寮美食会」。
この美食会を知っている人は、相当な通人だと思います。
「春鼎寮美食会」は「毛利志満」さんのご先祖が東京で運営していた会員制料亭で、魯山人の「星岡茶寮」のライバルと目されていたものですが、資料も少なく、あまり知られていません。今回その少ない資料を森嶋さんが研究して書いておられます。
ご先祖が美食会を始めるにあたって組んだのは加藤春鼎(初代)という陶芸家でした。初代春鼎は陶芸だけでなく、絵や書もできる器用で、しかも見識が広い人だったらしく、『陶器を見る眼』『陶磁往来』(いずれも昭和14年)という本も出していますが、美食会の件はほとんど忘れられていて、当代(三代)春鼎さんも、
「はっきりしたことは分からないのですが、昭和初期に東京の飯倉辺りで春袋楼美食会という、食と器の会のようなことをやっていたようです。 私もまったく知らなくて研究者の方が「寛閑觀」という本を持ってきてくださったのです。 それによると、会自体は竹中平蔵という方が企画していて、2000人くらいの会員がフランス料理や日本料理、中華料理などを楽しんでいたようです。 そこで使っていた器をはじめ、会場の襖から掛け軸まですべて祖父が作っていたようです。 それが残っていたらいいのですが残念ながら何も残っていません。 この本も研究の方が神田の古本屋で見つけてきてくれたものなので・・・」と書いています。
「星岡」だけが有名なのはバランスが悪いとすぐに分かりますが、有名・無名って、そういうものなのかなあとも思ってしまいます。
勉強になりました。
追伸
明日13日は火曜日ですが、夏休み中ですので、「ちんや」は臨時営業致します。どうぞ、ご利用下さいませ。