能書きトーク

 「二条彪の特選教訓集 みんなで学ぶ 成功の心得No8 お客様への心得」という御本を毎週月曜日の、弊店の朝礼で輪読しています。1/31には項目No10「お客様の気持ちの流れをイメージする」を読みました。

 お客様が小売店に入った時の、気持ちの流れを、細かに観察すると、

「ちょっといいな、見ていこうかな」

「なんだか入ってみたら暗い店だなあ」

「うーん、これなんか、いいかな」

「ちょっと値段が高いかな」

「他には、ないかな」

「やっぱり、気にいったものがないから、またあとにしよう」

と、簡単に書いてもこれだけの気持ちの流れがあります。

 この気持ちの流れを読むことが大事と、このページに説かれていますが、この逆をやっている店が、世の中にはかなり多いと思います。

 イキナリ売ろうとする店員さんが本当に多いです。当然、私などはすぐ逃げますね。

 すき焼き屋の場合は、基本的にお客様全員が、店のメニューを了解した上で中に入るわけで、必ず何か注文なさる、というところが小売店と違いますが、気持ちの流れを読む必要性は同じです。

 レストランに入った時、メニューの中の高いものを、やたらと説明されると閉口しますよね。

 飲食店に入る客は、入る時におおよそ使う予算を決めていますから、それより高いものの説明をされると困惑してしまいます。せいぜい、予算辺りのメニューのすぐ上と、すぐ下のメニューを説明してくれれば必要充分です。

 また能書きトークが「あーで+こーで」と長いのも閉口します。何故って?食べる前は腹がへっているからです!

 食べる前に「あーで+こーで」と説明されて、イラっとする理由は、それだけではありません。説明が良く分からないからでもあります。食べ物の味のことは、しょせん言葉にして説明するのが困難で、実際に味わった後でないと完全にはわからないですよね。

 だから私は「ちんや」座敷のスタッフには、

「能書きトークは、お食事の後にしよう」と言っています。

 お客様が「おいしかった」と言って下さった後に、その一言をキッカケに、

「手前どもの肉は、実は、あーで+こーで・・・ございます」さらに、

「召し上がっていただいてお分かりの通り、こーで+そーで・・・ございます」と説明します。

 この段階では、もちろん食べ終わっているわけで、売上は確定していますが、これはムダではありません。

 何故って、それは次回ご来店の時に、ご予算をアップした上で、ご来店いただけるからです。

 この「能書きトークは、お食事の後」というやり方は、一見「やる気がない店」に見える心配があります。

 でも、とても褒めてくれた方もいます。スゴ腕の食品コンサルタントで、地方の経営不振のスーパーを再建してしまう、IZ川さんです。

 そういう次第で、「能書きトークは、お食事の後」です。食後に旅を急ぐ場合は、「ちんや」スタッフからトークを浴びせられないよう、事前に、ご出発時間をお知らせ願います。

追伸

 国際獣疫事務局(OIE)科学委員会は、4日、日本国が口蹄疫に関して「清浄国」に復帰したと認定しました。昨年4月の口蹄疫発生以来今日に至るまでの、関係者の皆様のご努力とご苦心に、私は心より敬意を表明いたします。

 また弊ブログの読者の方で、ご自身がブログ・ツイッター等の媒体をお持ちの方におかれましては、「清浄国」復帰の件を、広く世間に周知させるため、ご助力・ご高配を賜りたく、お願い申し上げます。

 本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて344日連続更新を達成しました。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。

 「ちんや」創業130年記念サイトは、こちらです。「すき焼き思い出ストーリー」の投稿を募集しています。

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面倒な客

 「二条彪の特選教訓集 みんなで学ぶ 成功の心得No8 お客様への心得」という御本を毎週月曜日の、弊店の朝礼で輪読しています。

 1/17には項目No9「面倒な客を切れ?儲からない客を切れ?」を読みました。

 「最近は、効率化という名の下に、面倒なことを避ける風潮があります。(中略)

 面倒だからやらない、儲からないからやらない、という経営からは、志や使命・理念がまったく感じられません。

 こんなことをして、お客様の役に立つ。

 こんな困っている人を、助けていく。

 そんな志があるからこそ、面倒であっても儲からなくても仕事を続けていけるのです。」

 まさに、その通りと思います。

 売っているモノが、どこよりも安ければ、「面倒なことはやらない、儲からないことはやらない」でも行けるのかもしれません。

 しかし価格をそう安くできない、中小企業の場合は、お客様から経営の姿勢に共感していただかなくては、やって行けません。弊店も、安からぬ肉を売っているので、この辺りは心にとめないといけません。

 ただ、悩ましいのは、弊店のような商売の場合、

面倒なこと=人手のかかること であることです。

 一生懸命面倒なことをやっていると、人手は限られているので、他のお客様がオロソカになってしまいます。

 例えば、弊店の精肉売店で、コマ切れ2キロをお買い上げになり、その2キロを100グラムずつ×20個に分けて、パッキングして欲しい、というご要望があったりします。

 どうです?面倒ですよね。家で自分で小分けすれば良いのに、店に頼んでいるわけです。

 こういうことをしている間に、おり悪しく、他のお客様がやってくれば、お待たせすることになってしまいます。

 でも、その方が「ちんや」に見えたのは、そういうことをしてもらえるから、かもしれません。スーパーだとそういうことをしてくれないので、(当たり前ですが)、それで見えたのかもしれません。このサービスを断れば、「ちんや」もスーパーと同じという結果になります。

 ここで、問題なのは、働いている当人たちの「やらされ感」です。実際、感覚的には、自分で小分けする手間を押し付けられている、とも思えますから、「やらされ感」がぬぐえないでしょうね。

 そこを、この御本を読むことで、「お客様の役に立つ。」という志を再確認し、面倒なこともやって行こう、腹を決めてくれたら嬉しいですね。

 私も御役に立ちますよ。

 弊ブログで、笑いを提供してまいります。

追伸

 1/30実施予定の「ちんや すき焼き通検定」の、受検申込みの受付を始めました。早速応募メールが来ていて嬉しいですね。

 詳しくは、このブログの22年12/25号をご覧下さい。

 本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて325日連続更新を達成しました。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。

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住吉史彦の十大ニュース

 いよいよ2010年も、今日を残すのみとなりました。

 ブログの読者の皆様、ご愛読いただき、誠にありがとうございました。御蔭様で読者数が着実に増えており、嬉しく思っています。

 2011年もご愛顧いただきたく、お願い申し上げます。

 さて、本日は予告いたしました通り、

 「2010年・住吉史彦の十大ニュース」を発表です。

 その第一位は・・・西麻布のバーで顔面をボコボコにされたこと、では勿論なく、以下に発表いたします。各項目をクリックすると、その日のブログにリンクしています。

3月 第五回「すきや連」を、横浜市「太田なわのれん」さんで開催しました。

(初めて「すきや連」が東京以外に進出、しかしいつも通り大盛況でした。)

3月 国際観光日本レストラン協会の理事に就任しました。

(真面目にお務めせねば・・・)

7月 平野正敏さん (ヴィオラ・アルタ奏者)のコンサートに出演しました。

(会場は、旧東京音楽学校奏楽堂。「饗応・居留地・牛鍋」という題で、食べ物の話し=日本人が、西洋の食べ物に遭遇した時代、幕末から明治時代のことをお話ししました。)

7月 第六回「すきや連=日本短角牛の、すき焼きを食す会」を「ちんや」で開催しました。

(いつにもまして盛況で、短角牛への関心の高まりを感じました。) 

 8月 「おいしい夏休みー親子体験食味学習会」を開催しました。

(シュートボクシングの世界チャンピオンの緒形健一さんにもお話しいただきました。)

9月 「ちんや」創業130年記念「住吉史彦の会」を開催しました。

(私の年齢の近い友人・知人をお招きし大盛況でした。京都や山形からもご参加いただき感激しました。)

9月 「ちんや」創業130年記念ホームページを開設しました。

(このサイト上で「世界に一つだけの すき焼き思い出ストーリー」の募集を始めました。)

10月 第ゼロ回「すき焼き三田会」を開催しました。

(♪肉の王者〜慶應〜♪と熱唱しました。)

11月 第七回「すきや連」を、小伝馬町「伊勢重」さんで開催しました。

(炭火を使った、すき焼きで、今回も大盛況でした。)

12月 ツイッター・ユーザー向け「今こそ宮崎牛を食べる会」を開催しました。

(チャリテイーとツイッターとすき焼きが合体した、史上初の企画でした。今後の、私の方向性をこの時に見出しました。)

 あ、そうそう、もっと重要なことが・・・

 それは、このブログを開設しました!(3月)

 え? それじゃあ、11大ニュースだよ・・・

 明日は、浅草寺の除夜の鐘を突きました後、未明1時頃にUP予定です。いつもは予約投稿でワードプレスにUPさせていますが、年始くらいは手動でUPします。

 皆様、良い御年をお迎え下さい。

追伸

 精肉売店の、正月用肉予約販売は12/28で〆切らせていただきました。12/29-31はフリー販売のみです。この三日間昼時11:00-15:00は大行列が出来ます。また夕刻には品切れ予想されますので、なるべく、10:00-11:00にご来店下さい。

 本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて306日連続更新を達成しました。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。

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今こそ宮崎牛を食べる会-卓話全文③

 本年も押し詰まりまして、昨日、帳場の神棚の御飾りを新しくしました。29日を嫌う方もおいでですけどね、ウチはOKです。なにしろ、肉の日ですからね。門松は12/24に設置済みです。

 弊店は12/31まで営業、年始は1/2より営業いたします。よろしくお願い申し上げます。さて、

 12/26に「今こそ宮崎牛を食べる会」を開催しました。

 以下は、その時にいたしました、私の話しの全文です。やや長いので3日にわけてUPしています。今日は、その3日目です。ご笑覧下さい。

<以下卓話全文>

 どのくらいザンネンかと申しますと、飼料自給率は、1980年代以降20%台で推移、2005年時点で25%だそうです。このことが、食料自給率全体も押し下げています。日本の食料自給率が40%と低いことは、ご承知の通りと思います。

 それに原産地を表示するのに、飼料は関係ありませんから、宮崎産の飼料を100%使わなくても、宮崎牛と言えるのです、今は。

 和牛をフランスワインに匹敵する、食のブランドにするには、原産地名称のコントロールの基準を、もっと厳格にしないといけません。現状では、完全に負けています、おフランス野郎に。

 これでは大変残念ですから、今より日本の風土に強く根ざした牛を育てていただきたいと思います。そういう牛の肉は、しっかり味があって、すき焼きにしても悪くないと思います。

  そこで問題になるのは、消費者の方の買い方です。

 勿論、国産飼料を使えば当然高いですから、仕上がった牛を、買い手の皆さんが高く買わないと、ペイしません。

 「どうせ努力しても、結局高いと売れないんだよなあ」と生産者の方が思ってしまう社会にしてはいけません。

 今回の宮崎の問題は、大変残念ではありましたが、結果として畜産のことを知っていただく機会になったことは事実です。小林君は宮崎まで走り、今日はこうして皆さんがここへ来てくださっています。有難いことです。

 今日は、私のイベントなので、せいぜい偉そうに言わせていただきます。皆さんには是非、今まで以上に肉のことをお調べいただいて、賢い消費をしてだきたいと思います。

 そして、平成22年も暮れようとしていますが、皆さんの中の「今年の十大ニュース」の上位にしっかりと、宮崎の件をランクインさせておいていただいたいと思います。

 くれぐれも、西麻布の顔面ボコボコ事件よりは上位、ということでお約束いただきたいと思います。

 ご静聴ありがとうございました。

<卓話全文は終わりです。> 

追伸①

 精肉売店の、正月用肉予約販売は12/28で〆切らせていただきました。12/29-31はフリー販売のみです。この三日間昼時11:00-15:00は大行列が出来ます。また夕刻には品切れ予想されますので、なるべく、10:00-11:00にご来店下さい。

追伸②

  あすの弊ブログは、2010年・住吉史彦の十大ニュース の発表です!

  本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて305日連続更新を達成しました。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。

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今こそ宮崎牛を食べる会-卓話全文②

 忘年会シーズンは去り、仕事納めの時期ですね。

 事務所の大掃除の後⇒すき焼き、という段取りで見える方が多いと思いますが、弊店は15:30-16:30まで休憩しています。あんまり早く掃除を終わらせないで下さいね。さて、

 12/26に「今こそ宮崎牛を食べる会」を開催しました。

 以下は、その時にいたしました、私の話しの全文です。やや長いので3日にわけてUPしています。今日は、その2日目です。ご笑覧下さい。

<以下卓話全文>

 霜降り肉が実現している、もう一つの価値は、すき焼きの「割り下とあわせて調理した時にあう。マイルドで美味い。」ということです。

 割り下というものは醤油と砂糖でできていて、非常に強い味ですので、この調味料とバランスする具材は多くありません。バランスしない時は、割り下の味ばかり濃く感じてしまって、美味く感じません。

 でも霜降りの肉を、すき焼きにすると、融けた脂が舌をコーテイングしますので、割り下をマイルドに感じます。また、霜(=脂)の部分が割り下をはじくので、肉と絡みにくくなります。

 その逆なのは、赤身肉でして、赤身だと割り下と絡み過ぎて、味を濃く感じてしまいます。

「ちんや」でも霜降り肉でなくて、赤身肉をお出しすることがありますが、その場合は、肉を充分熟成させて旨味を増やし、それによって割り下の濃い味とバランスさせています。熟成させていない赤身肉の場合、旨味が浅く、割り下の濃い味とバランスせずに負けてしまい、美味しく感じないからです。

 そういう理由で、熟成させなくても「割り下とあわせて調理した時にあう。マイルドで旨い」という、味覚上の価値が重視されてきたのです。これも、明治以来、すき焼きが誕生した日から重視されてきた価値です。

 以上ご説明しました通り、①やわらかい、②マイルドな味、というのが、従来の畜産業が目指していた、味覚上の価値です。おさらいしますと、この価値観に立脚した畜産は、

①すき焼きの誕生とともに始まり、当初は農業のサイドビジネスでしたが、

②昭和初期に、松阪や近江で本格的な産業と成っていき、

③最近、肉の輸入自由化以降、一気に全国で盛んになりました。

 ブランド牛というのは、そこを目指して交配に交配を重ねて来たわけです。

  もちろん、このままの従来の価値を大事にするのも、悪くはないと思います。霜降りの、すき焼きは理屈ぬきに旨いです。でも、今は他の食べ方もいろいろとあるわけで、違う価値を基礎にブランドを作り、他の調理法で食べさせることも可能だと思います。

 ネットが普及し、ツイッターとか新しい媒体も出てきましたので、環境的には、ブランドを作った後で宣伝しやすくなっています。生産者の方には是非、新しいことに挑戦していただきたいと思いますし、買い手の方は、よくよく牛のことや肉のことをお調べいただいた上で、お買い求めいただきたいと思います。

  ではその、肝心の、今まで重視されなかった価値の内、どれを選択して、大切にしていくべきか、考えてみましょう。当然、それがブランドの基礎になるべきものです。

 もちろん、それは根本的には、生産者の方自身が考え抜いて、決めていただくことなのですが、やはり、私は肉とこの国の風土との繋がりを、今以上に強めていただきたい、そこに価値を求めたいところです。

  食べる、ということは、そもそも大地の恵を戴く、ということで、畜産の場合、水と飼料が大切ですが、この内飼料の多くを、輸入に頼っていることがとてもザンネンです。わが国畜産の大きな問題点がココです。

 どのくらいザンネンかと申しますと・・・

<卓話全文は明日まで続きます。その後、12/31は「2010年住吉史彦の十大ニュースの発表です!>

追伸①

 弊店の営業ですが、年内は12/31まで営業、年始は1/2より営業いたします。

追伸②

 精肉売店の、正月用肉予約販売は昨日で〆切らせていただきました。12/29-31はフリー販売のみです。この三日間昼時11:00-15:00は大行列が出来ます。また夕刻には品切れ予想されますので、なるべく、10:00-11:00にご来店下さい。

 本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて304日連続更新を達成しました。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。

 「ちんや」創業130年記念サイトは、こちらです。「すき焼き思い出ストーリー」の投稿を募集しています。

 Twitterもやってます。こちらでつぶやいています。

今こそ宮崎牛を食べる会-卓話全文①

 弊店の、年末年始の営業について、問い合わせがたくさん来ています。年内は12/31まで営業、年始は1/2より営業いたします。また本日は火曜日ですが、臨時営業いたします。よろしくお願い申し上げます。さて、

 12/26に「今こそ宮崎牛を食べる会」を開催しました。

 以下は、その時にいたしました、私の話しの全文です。やや長いので3日にわけてUPいたします。ご笑覧下さい。

<以下卓話全文>

 こんばんは。先日ボコボコにされました、顔面の整復手術が上手くいきまして、皆様の前で、お芝居が出来ることを嬉しく思っております、エビ様でございます。え?そのネタはもう古い?それは、そうでした。早速本題に入らせていただきます。

  宮崎県の畜産再建は勿論、応援したい。

 でも、今ゼロからやるなら、従来の仕事そのまま再建、だけでなく新しい価値観に基づいて再建しても良いのでは? と、いうことをこれからお話しいたします。

  「価値観」と言うとブランド化批判の話しだな、と思う方がいらっしゃるかもしれませんが、ブランド化そのものを批判する話しは、今日の所はいたしません。何故なら、牛をまったくブランド化しない、という選択は現実的でないからです。

 1980年代に日米牛肉・オレンジ交渉というのがありまして、その結果1991年から、海外の安い牛肉が入ってくるようになりました。海外から安い牛肉が入ってくる以上、それと張り合って国内で、より安い肉を生産する、というのは、事実上困難です。

 人件費も飼料代も高い日本で畜産をやる以上、安い、単なる栄養源としての肉ではなく、そこに何か付加価値を付けて、仕上がったものを高く買っていただく他ありません。ブランド化が避けられない理由がそこにあります。だから、ブランド化そのものへの批判は、今日はやめておきます。

 ここで問題にしたいのは「何か付加価値を付けて」の「何か」です。従来のブランド牛が、世の中にアピールしてきた価値を今後も、そのまま続けて訴えていくべきかどうか、その辺りを今日は皆さんと一緒に考えたいと思います。

  世の中の変化につれて、価値観の流行り廃り、ということがありますね。ブランドの表現する価値そのものが、今の時代にあっているのか、この現代を生きている方の相当数から共感を得られるか、という点が問題です。牛の場合はこのことを、今考えてみる必要があると思います。

  さて、そういうことで、牛のブランドの基礎となる価値を、今まではどこに求めてきたか、これからはどうなるか、考えてみましょう。

  従来のブランド牛が体現している価値は二つありますが、その内の一つは、「肉がやわらかい」ということです。このことが明治時代以来とても重視されてきました。現代人は肉がやわらかい、ということを全く特別のことと感じませんが、昔は、とてもスペシャルでスゴいことだったのです。

 肉を霜降りにすれば、やわらかさを実現できます。初期の牛鍋に使われた肉は、肉用に育てられた牛の肉ではなく、農業のかたわら飼われていた牛の肉ですので、当然硬かったわけです。

 その牛を農作業からリタイアさせた後、太らせて、つまり霜降りをつけて、肉をやわらかくする、これが最初の仕事でした。

 次いで、牛の交配が始まりました。霜降りが付きやすい牛同士の交配を、この交配をひたすら続けてきたのが、今の黒毛和牛の実態です。この方式が現代まで続いています。

 牛の交配の先進地は近江・松阪でした。やがて、その後人口受精や、精子の凍結が出来るようになり、全国で行われるようになりました。牛のブランド化が全国で一気に進んだのは、最初に申しました、肉の輸入自由化の前後です。

 口蹄疫流行の時も、スーパー種牛の確保が問題の焦点になりました。長年交配に交配を重ねてきた牛なので、貴重ということで、なんとか処分を免れようとしたのです。

 実は今、黒毛和牛のメスの、おおよそ4頭に1頭は親戚です。スーパー種牛の遺伝子を引く子同士で交配に交配を重ねてきたせいで、そういうことになっています。人間の4人に1人が親戚だったら、ビックリですよね。でも黒毛和牛の世界では、そういうことが普通になっています。これというのも、「やわらかい肉」をひたすら追求した結果です。

 たしかに、硬いものを軟らかくして食べたい、というのは人間の一つの欲求ですが、今売られている肉ほど、やわらかい必要があるのか、という意見にも耳を傾けた方が良いと、私は思っています。

<卓話、明日へ続く>

追伸

 精肉売店の、正月用肉予約販売の〆切りは本日12/28です。12/29-31の昼時は大行列ができますが、その最中でも、本日中に予約していただければ、お並びいただくことなく、確実に御肉をお渡しいたします。是非ご予約を。

 本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて303日連続更新を達成しました。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。

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今こそ宮崎牛を食べる会

 12/26に「今こそ宮崎牛を食べる会」を開催しました。

 11/27の、このブログに書きました通り、この会は宮崎牛のすき焼きを食べるだけでなく、現場で参加者が、宮崎への応援メッセージを、ツイッターでツイートする、という趣向です。

 参加者数は、期待したほどは集まりませんでしたが、メンバーが多士済々で、談論風発の、楽しい一夜となりました。

 趣向としては、皆でツイートしまくるはずだったのですが、皆さんの座談が興味深くて、ツイートするより話し込んでしまい、なんだか、風変わりな異業種交流会というか他流試合のようになってしまいました・・・まあ、良しとしましょう。

 さて、そのメンバーですが、東海大学デザイン学課程で、記号論・サブカルチャー論・ゲームデザイン論の講師をされているT先生。T先生が、この企画の発案者です。

 それに、そのお仲間で、先生が前職の時から世話になっていると言う、メーカーの社長さんと部長さん。

 口蹄疫被害者への応援メッセージを集めながら、埼玉から宮崎まで1500キロを自転車で走った、学生・小林大地さん。それに彼が通っている、明治大学商学部・久米信行先生の講義を聴講に来ている、社会人学生のY社長。

 久米先生はこの日ご法事で、ご欠席でしたが、講義やツイッターでこの企画を支援して下さいました。

 代わって、久米繊維工業の広報女史。久米繊維さんは社員が皆、ツイッターやブログやメルマガをやっていて(⇒スゴい!)、彼女はその中でもツイッターの女王です。

 それから「台彪会」幹事長のG社長。さらに、やはり「台彪会」メンバーで、私がWebマーケテイングでお世話になっているI社長とリステイング広告の専門家〇さん。一級建築士のU先生。

 さらに「すきや連」メンバーで、群馬県で「赤城牛」を売っている、T社長も参加していただきました。ツイッターは超初心者のようですが、私も似たようなものですので。

 そして、さらに「すき焼き通」の著書にして、「すきや連」旗振り役代表の、向笠千恵子先生も登場!

 宮崎日日新聞さんの取材も入りました。

 そういう次第で開場し、まず最初に小林大地さんが自転車の体験談を語り、続いて私が日本の畜産のことをお話ししました。(その詳細は後日、またこのブログで。)

 この話しを肴に、もちろん宮崎牛を満喫しつつ夜は更けました。

 この夜集まった方々は「宮崎を応援したい」という以外に、何も接点のない方の集団で、このメンバーで集まることは二度とないでしょう。一期一会の気分でおおいに盛り上がりました。

 あ、そうそう、実は今回判明したんですが、ツイッターできないんです、私の携帯。

 買う時に、超カンタンな、お年寄り向けプランを申し込んだせいで・・・

追伸①

 「毎日RT」さんが、この件をお採り上げ下さいました。サイトでもご覧になれます。当日の皆さんのツイートが、http://mainichi-rt.com/news/20101228-2.html

にそのまま載っています。

追伸②

 この会の実現に際しては、宮崎市「杉の子」のご主人・Mさんに大変お世話になりました。Mさんは国際観光日本レストラン協会の常任理事でもあられます。有り難うございました。

 追伸③

 弊店の営業ですが、年内は12/31まで営業、年始は1/2より営業いたします。 

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宇宙戦艦ヤマト、もう一つのハイライト

 12/16に台東区若手経営者サポートセミナー(二条彪ゼミ)の忘年会が「ちんや」で開催され、50人のゼミ生やゲストが参加して盛況でした。

 私は台彪会の会長として、また会場店の店主として皆さんの応接に、大忙しでした。

 この日のハイライトは、宴会の前の、「まるたけマンドチェロ・ミニコンサート」でした。二条先生がマンドチェロの演奏を披露して下さったのです。全5曲を演奏、アンコールに応えてさらに2曲弾いて下さいました。

 連日の講演でお忙しい中、この日のために準備をしてきて下さったことは、本当に有難いことです。

 お忙しい中我々のために練習をして下さった先生のために、実はこの日我々は、コンサートが終わったところで、総員起立⇒ヤマト式敬礼をする予定でした。

 先生が、最近のセミナーの中で、今公開中の映画「宇宙戦艦ヤマト」をしきりと褒めるので、それにあわせて、先生にはサプライズで起立敬礼を実行しようと計画していました。メンバーの「フダヤドットコム」G社長の発案です。

 そうしたら、なんと2曲目のアンコールの曲は「宇宙戦艦ヤマト」の主題歌。私が良くカラオケで歌っている、♪さらば〜地球よ〜♪の、あの曲です。

 出来すぎと言える展開で盛り上がり、その後は弊店のすき焼きと、やはりメンバーのM保女史・Y美女史姉妹が経営する、三益酒店さんの銘酒をお楽しみいただきました。

 と、いうわけで、この日のハイライトは、マンドチェロで弾く「宇宙戦艦ヤマト」だったのですが、私には最後に予期せぬ、もう一つのハイライトがありました。

 宴もたけなわ、私の手〆で散会し、皆さんを送り出した後、私は忘れ物の点検をしていましたが、その時見つけた忘れ物こそが、もう一つハイライトだったのです。

 それは、メンバーの1人が持って来ていたセミナーのファイルでした。忘れ物の主は、忘年会の日なのに、セミナーに出るかのように、今までのレジュメを束ねたファイルを持って来ていたのです。

 しかも置かれていたのは、彼の席から離れた場所でした。彼は他のメンバーの席へ行き、びっしりと書き込みがされた、そのファイルを手に、経営について議論を戦わせていたのでしょう。

 さんざん酒を飲んだわけですから、忘れ物くらいは恥ずかしいことではありません。

 それよりも、その熱心さに頭が下がり、同時に彼の事務所のご盛業を確信した、師走の熱い夜でした。

追伸①

 12/17〜12/19は、浅草寺の「羽子板市」です。お出かけを!

追伸②

 <Twitterハード・ユーザー限定、今こそ宮崎牛を食べる会>の応募受付をしています。

 Twitterを使って楽しみながらチャリテイーに参加できる、歴史上最初のイベントです、たぶん。

 是非ご応募下さい!

 詳しくは、このブログの11/27号をご覧下さい。

 本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて293日連続更新を達成しました。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。

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病み上がり

 東京も急に寒くなりまして、風邪をひかれる方が増えているようです。さて、

 二ヶ月ほど前だったと思いますが、知人で剣道をなさっている、K子女史が剣道の御師匠さんと一緒に来店されました。その御師匠さんが病気をされて回復されたので、快気祝ということでした。

 それから、一ヶ月ほどして、今度はその御師匠さんの方が、別の御弟子さんで、やはり病気をされた方の快気祝をしたい、ということで予約が入り、来店されました。

 たしかに病後の滋養のため、牛肉を食べるのは悪いハズがありません。でも病気で消化力が落ちた方に、肉はモタレてしまうこともあると思います。そういう場合、「ちんや」のモタレない肉を是非、召し上がっていただきたいと思います。

 「ちんや」の肉は、充分熟成させてありますので、その間にタンパク質がアミノ酸に変わっています。だから消化しやすくモタレません。病後の食事には適当だと思います。

  是非、召し上がっていただいて、健康を取り戻していただきたいですね。

 と、思っていると、今度は先週末の話しですが、お顔の色が優れない、年配のお客様がご家族と一緒に来店されました。聞けば、病院を退院して、即弊店へ直行して来られたとか。

 拝見すると、とてもベストのご体調とは言えない感じです。そ、それって快気祝というよりは、病み上がりっていうことですよね。

 気持ちとしては有り難いですが、うーん、大丈夫なんだろうか・・・

と、思っていると、1時間20分ほどで食事を済まされて帰って行かれました。

 そうですよ、そういう時は、やはり御自宅へ戻られた方がいいですよ。

 商売としても、「快気祝」にご利用下さい!と宣伝しやすいけど、「病み上がりにどうぞ!」とは宣伝しにくいですよね。

 皆さん、ご自愛下さい。

 あ、そうそう、忘年会で胃腸がグロッキーの皆さんも。

追伸

 <Twitterハード・ユーザー限定、今こそ宮崎牛を食べる会>の応募受付をいよいよ、12/12より開始します。是非ご応募下さい!

 詳しくは、このブログの11/27号をご覧下さい。

 本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて285日連続更新を達成しました。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。

 「ちんや」創業130年記念サイトは、こちらです。「すき焼き思い出ストーリー」の投稿を募集しています。

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うちの会社

 「二条彪の特選教訓集 みんなで学ぶ 成功の心得No8 お客様への心得」という御本を毎週月曜日の、弊店の朝礼で輪読しています。11/29には、項目No4「うちの会社という言い方はやめよう」を読みました。

 内容は、タイトルの通り、うちの会社という言い方はやめて、「私は」「我々は」という言い方をしよう、という勧めです。

 その理由は、「うちの会社」という言い方は曖昧な言い方、特に責任の主体が曖昧な言い方だからです。これは、かなり頷けます。

 「うちの会社は〜〜なんですよ」と言う時は、たいてい、良くないニュアンスが伴いますね。しかも、その良くない点は変えられない、自分が変えてやろう、という気概は無い、という言外の意味を含んでいます。

 「〜なんですよ」の部分が明確な経営方針のことなら、まだ良いのですが、そうでもなく、歴代の2〜3人の担当者のクセが固定化していて、それを「うちの会社は〜〜なんですよ」と言っている場合も少なくないと思います。

 こういう雰囲気を変えるのに「我々は〜」という言い方にするは、たしかに大変良い考えと思います。

 ところで「ウチのヨメ」っていう言い方はどうなんでしょう。

 その良くない点は変えられない、自分が変えてやろう、という気概は無い、という言外の意味を含んでいます・・・ね。

 本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて277日連続更新を達成しました。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。

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Filed under: ぼやき部屋,台彪会 — F.Sumiyoshi 12:01 AM  Comments (0)