バレンタインデー

 江崎グリコ社が、今年のバレンタインデーについて実施したアンケートによりますと・・「バレンタインデーには家族にチョコを贈りたい」と回答した人が71%に達したそうです。大震災以来の「家族重視」傾向がここにも現れています。

 また別のアンケートによると、バレンタインデーを「恋愛の告白のきっかけとして、重視していない」と回答した女性が6割に達しているとか。

 さらに「友チョコ」しか贈らない、という女性も少なくないと言います。「友チョコ」って、ご存じですよね。女性が女性に贈るチョコのことです。それしか贈らないんだそうです。

 そんな!

「日本型バレンタインデー」と言えば、

・贈答品がチョコレートに限られる点

・女性から男性へ一方通行的贈答である点

・ (女性の)愛情表明の機会だと認識されている点

の3点が特徴です。その伝統に従わないとは!

 しかし、ですよ。どうせ従わないなら、チョコでなくても良いんではないでしょうか。精神を受け継げば良いんです。

 その昔、帝政ローマ時代の話しですが、兵士が結婚すると戦意を失うので、時の皇帝が、兵士がローマで結婚することを禁じました。その禁令を破って聖ウァレンティヌス(=英語読みすると、バレンタイン)が秘密に兵士を結婚させて、捕らえられ、処刑されたのが、そもそものバレンタインデーです。

 チョコは関係ないですね。

 つまり、チョコでなくて、すき焼きでも良いんです。

 ええ、良いんです、すき焼きで。

 すき焼きをつついて愛を確かめ合う、そういう日にしませんか。

と、いうわけで第11回「すきや連」は、バレンタインデーの2/14に、松阪の「和田金」さんで開催することに決まりました。

 ただ今、皆さんから出欠の御返信が続々と着信しています。

 大勢参加していただきたいですね、女の人に。

追伸

  毎日新聞社発行の毎日ムック『100年の味 店100選』に載せていただきました。有難いですね。2012年1月12日発行。是非お求め下さい。

 本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて692日連続更新を達成しました。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。

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家畜商免許

 先日、このブログのアクセス解析をしていたら、その日見に来られた方の数が通常の​146%でした。

 「!」ですよね。しかし、原因が全くわかりません。

 ツイッターで「すき焼き」と​言った人も、その日は普段より多い感じでしたが、その理由もわかりません。そこで、

 なんでだろう? 分かる方、​ご連絡下さい!

とフェイスブックに投稿したら、中学の同期生と、蔵元「あさ開」のネットショップ店長Sさんから同じ内容の返信がありました。

 その原因とは・・・

「ダチョウ倶楽部の寺門ジモン(49)が牛などを取引するための「家畜商」の免許を取得し、昨年11月に牛肉では日本最高峰のブランド・松阪牛のセリに参加して牛1頭を競り落としていたことが13日、分かった。」

「お笑いで活動する一方“食”への造詣が深く、グルメリポーターとしても活躍。特に牛肉へのこだわりが強く、「最高級を知れば、すべてがわかる」と、10年前から松阪牛のセリ市に顔を出して勉強を続けていた。」

 ああ、そう言えば、テレビでやってましたねえ。このニュース。「ニュース」というほどの報道価値があるかは「・・・」ですが。

 この日このニュース以外に、牛やすき焼きに関心が集まる要素は無かったものと思われます。

 ですので、弊ブログにアクセスが急増した理由が、これだと言えなくもないと思います。

 自問氏イヤ寺門氏は、

「牛肉好きが高じて、とはいえ、寺門が本物の牛1頭、しかも最高峰の松阪牛を手に入れた。昨年11月27日に三重県松阪市で開催された松阪牛のNo.1を決める最高峰のセリ市「第62回 松阪牛共進会」に参加。」

「出品された50頭の中から「ちはる6の3」という704キロのメス牛を195万円で見事に落札。11年越しの夢の実現だった。」

 それにしても松阪の市場は、よくまあ、免許を出したものですねえ。

 免許というからには、今後牛の取引をするんでしょうか、ジモンさん。「・・・」ですよね。

 そして、もう一つ、「・・・」なことが。

 それは落札価格。

 松阪の、年に一度の共進会に入った牛が、195万円とは。

 今回「優秀一席」の牛だけは高かったものの、後はショボい相場で、平均価格はBSE問題のあった年さえ下回ってしまいました。

 ジモン氏の牛は、その平均価格をさらに少し下回った位の値段ですね。安い買い物で御満悦でしょうね。

 いやあ、デフレが身に沁みますねえ。

追伸

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組み合わせ

 弊店の肉と、他の食材の組み合わせをテストしていて、

 うーん、そうかあ、ダメかあ、と思うことがあります。

 高品質の肉と、高品質の他の食材を組み合わせれば、必ず最高の組み合わせになるとは限らない⇒ダメかあ、ということです。

 先日も、弊店の肉といくつかのバターの組み合わせをテストしていた所、素晴らしい品質と特徴をもった、あるバターとの組み合わせがNGでした。バターの個性が強すぎるのです。

 ここで思い出しますのは、漫画『美味しんぼ』の「ハンバーガーの要素」という回です。

 この回では、食の巨匠・海原雄山の弟子の板前さんが、雄山の店を辞めてハンバーガー店を始め、最高の素材ばかりを集めたハンバーガーを売ろうとします。しかし、その最高のはずのハンバーガーは、雄山に散々に酷評されてしまいます。

 その板前さんは、「自信作のハンバーガーが、まずいはずが無い。雄山先生は自分が辞めたことに腹を立てて、そんな風に言ったのだ」と思い、今度は雄山の子の山岡士郎に、試食を依頼します。

 ところが、雄山と対立している士郎も、そのハンバーガーを貶すので、板前さんはひどく落胆します。そして最高のものばかりを組み合わせても、打ち消し合うことがある、という士郎の解説に、自分の不明を思い知らされる、そういう筋です。

 これに類することが本当にあります。

 肉と何かを合わせて料理する時、最高品質のものより一般的な品質のものの方が旨い、ということが実際にありますね。

 実は、この話しは弊社の系列のカジュアル・レストラン「ちんや亭」で、お出ししている料理を考える時に、知っていただいておくと良い話しです。

 大きい声では言いにくいのですが、ごくフツーのチーズを使っていたりするのです。

 「ちんや」の座敷=つまり、すき焼き部門の面々は、「ちんや亭」の、こうした流儀を、かつて「鎮定文化」イヤ「ちん亭文化」と称していました。勿論、バカにしたニュアンスです。

 でも、今私はここを考え直そうかと思っています。

 高級なのとフツーなのをテストして、フツーの方が旨ければ、堂々とフツーを採用すれば良い、と今は思います。

 だから、最近色々テストしているのですが、その結果、「このままで、いいんじゃあないの!」ということがあります。

 久しぶりに御来店いただいて、全然変わっていなくても、何も研究してないわけじゃあ、ないんです。

 そのヘン、ひとつ、ヨロシク!!

 あ、でも、安いものを買えば良いのか、というと、それは勿論、違います。

 かつては安くてもマトモな製法で出来ている食材が沢山ありましたが、今時はそうは行きません。

 現代の安い食品の場合は、製法そのものが変わってしまっている場合が多いです。「変わってしまう」とは当然製造工程を省く方向に変わっています。

 だから、安いものを買えば良いのか、というと、それは違うのです。

 まあ、でも、その話しを始めると、長いですから、今日はこの辺で。

追伸

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国分町

 今、仙台が復興景気に沸いている、と大晦日の読売新聞が報じていました。

 東北随一のネオン街・国分町の飲食店は、連日大賑わいで、売上げが前年の2割増し、という状況が続く店も多いそうです。

「震災前より景気がいいのよ。復旧作業で全国から、建設や土木関係や不動産関係、保険関係者とかが来ていて、お金はかなり落としてくれているかな。それもキャッシュで。震災直後は、“これからどうなるんだろう”って途方に暮れたけど、今はちょっとしたバブルね」(飲食店経営者)(=平たく言うとママさん)なんだそうな。

 店内では作業服のままで繰り出して来た客が目立つとか。

 笑えたのは、そうした客を接客するコツが、やはり読売新聞に報じられていたことです。「震災の時に、どうなさっていましたか?と切り出すようにしています」(飲食店関係者)(=平たく言うと、お姐さん)

 客の中には、単にお姐さん達と仲良くするだけでなく、東北の日本酒を飲んで支援しよう、という奇特な方もいるらしく、それは大変結構な話しです。

 ただ、そこに書いてある「飲食店」というのは、全ての飲食店ではないと思います。新聞は風俗店も「飲食店」と表現しますが、立派な御料理を出す御店の方は、ここに書いてあるような景気とは聞いておりません。少なくとも、私は。

 復旧関係者は、仙台へ遊びに行っているわけではなく、昼間は仕事です。ハードな仕事で、夜遅くまでかかるのでしょう。そのハードな仕事が終わって、寝る前にクールダウンしたいから、夜更けて繁華街に行くのだと思います。嫁さん・子供は東京ですしね。

 そういう状況ですので、彼らが向かう「飲食店」とは、立派な御料理を出すお店のことではないと思っています。

 潰れてしまった店もあります。

 帝国データバンク仙台支店の発表によると・・・

やはり「国分町で高級料亭などを経営する「銀たなべ」が事業を停止し、自己破産申請の準備に入った。」

「東日本大震災の影響で一時、全店営業停止を強いられ、売り上げが急減したことが響いた。負債総額は約5億円。同社は1949年に創業。国分町や周辺で日本料理店などを展開し、地元では高級料亭として知られた。」

とのことでした。お気の毒なことです。

 今の復興景気で儲かった人が、本格的日本料理を食べて下さると良いのですけどね。

 「ちょっとしたバブル」をバブルに終わらせないよう、消費する側もそれを受け取る側も、お金の使い道を、よくよくお考えいただきたいものです。

 しっかり考えて消費してね、お姐さん達。

追伸

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ランキング操作

 1/5の新聞・テレビが「食べログやらせ業者」について報じました。

「飲食店のランキングサイト「食べログ」が、好意的な口コミ投稿の掲載や順位の上昇を請け負う見返りに飲食店から金を受け取る「やらせ業者」に、ランキングを操作されている事例があることが4日、運営会社のカカクコム(東京)や飲食店関係者への取材で分かった。」

「東京都内の飲食店関係者によると、やらせ業者はIT関連会社や投資顧問会社を名乗り、店舗を個別に訪問。「食べログの点数を上げる裏技のご提案です。食べログからは非公認のサービスとなります」などと言葉巧みに勧誘し、店舗側の意向を反映した好意的なやらせ「口コミ」を毎月5件ずつ投稿するという。」

「報酬は月間約10万円。男性は「依頼を受けた店舗の点数を確実に上げる」などと強調したという。」

 まあ、私たちにとって、この話しは旧知の話しで「何を今皿イヤ今更」という感じですね。私が聞いたところでは、ライバル店を貶す書き込みもしていたはずです。

「食べログは昨年11月の月間利用者数が3200万人以上に達し、影響力が大きく、やらせによって客入りの悪い店が“繁盛店”に変身する場合もある。」

「カカクコムは、サイト内の監視を強めるなど対策強化に乗り出した。カカクコムは現時点でやらせ業者、39社を特定しており、田中実社長(49)は「今後は不正業者の業務停止を求めて提訴するなど断固とした措置をとりたい」としている。」

 ほお、「断固たる措置」ですか。

 どういう措置ができるんでしょう。「観もの」とはこのことですね。

 だって、「食べログ」は、登録さえすれば誰でも投稿できますね。本名かどうかわかりません。

 やらせ業者は悪用し放題でしょう。匿名性のネット社会で純然たる公正な「口コミ」なんて、在り得るんでしょうかね。

 だいたい料理屋なんて自分の舌で選べば良いんです。

 それが出来ない時は、しっかりした見識をお持ちの方に教えてもらえば良いんです。じゃあ「食べログ」は誰が使うのかって?友達のいないヤツが使えば良いんじゃあないですかね。

 私だって私の友達には、お教えしますよ。勿論、同業者のことですから、ネットには書けませんけどね。それこそが口コミというものです。

 ネット上の「口コミ」なんてものは、公正なものでは断じてなくて、ホンモノの口コミの中にだけ、真実が在るんです。

 ネットの普及以来、私達は公正であることに鈍感になり過ぎていませんでしょうか。

 こうしたランキング操作のことを、ネット業界では「ステルス・マーケテイング」とか言っちゃうそうですが、カタカナにすることで、不公正な感じを消そうとしているだけです。

 一般人や芸能人のブロガーが、企業から依頼を受けて、その商品を褒めるのも同類です。

 以前、このブログに結構な数の読者がいることを知った、ある人が言いました・・・

 へええ、じゃあ、住吉さん、儲かっちゃうんでしょうねえ!

 念のため、この「じゃあ」について解説しますが、「じゃあ」とは「住吉さんは老舗料理屋の主人だし、書いてるブログに読者が大勢いるなら、その立場を悪用できますね。旨くもないものを旨いと書いて、その旨くもないものを作っている業者から、お金をもらっているんでしょうね。儲かっちゃうんでしょうねえ!」

という意味です。

 私が、昔の、名誉を重んじる侍なら、

 ぶ、無礼者!

と叫んで、刀を抜き、その女(⇒女だったのです!)を切り捨て御免にしたことでしょう。

 ところが、彼女はニコニコと楽しそうに、この話しをしていて、悪気はカケラもなさそうでした。ブログとは、そのように使うものだと、最初から考えているようでした。

 まさに、末法の世ですな。

 南無観世音菩薩。

 追伸

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酒の四季

 肉には目立った四季がありません。ですので、すき焼き屋は四季を感じにくいですね、他の料理屋に比べて。

 それでは寂しいので、ザクの野菜に変化を付けて「変わりザク」ということでオプション販売しています。

 そんな折、日本酒業界の方と話していたら、

 酒にも四季がありますよ!

ということでした。

 春の「原酒ロック」

 夏の「生貯蔵」

 秋の「ひやおろし」

 冬の「しぼりたて」

というのが、その御提案です。

 そこで季節の御酒と「変わりザク」をセットにしたメニューを作ろうかと思い、思案中です。

 で、その御提案について、です。この御提案は大変結構ではあるのですが、造り手さんが考えたので、飲み手の季節感とは、微妙にズレる部分があると思います。

 そもそも日本酒は、いつ頃醸造しているか、ですが、現代化していない伝統的な造り方をする蔵の場合、だいたい11月〜翌2月です。「寒づくり」と言いますね。だから毎年暮れには、最初の「しぼりたて」が出てくるわけです。

 まず、ここが飲み手の季節感とズレるところです。

 造り手さんは、ここでフレッシュな酒を飲ませたい所でしょうが、世間は真冬ですので、むしろ燗酒を飲みたいですね。燗酒には、フレッシュな酒でなくて落ち着いた酒の方が良いですので、すれ違いが起きてしまいますね。

 「寒づくり」は2月まで、蔵によっては3月まで続きます。年内より年明けの方が寒いので、吟醸酒とか、よりお値段の高い酒を、年明けに造る傾向があるようです。

 ここで出来た、吟醸酒の「しぼりたて」を春先に飲むのは良いと思います。芽吹きの季節に合います、フレッシュですので。

 だから御提案の、春の「原酒ロック」は悪くはないのですが、ロックにするかどうかは、意見が分かれるでしょうね。

 「しぼりたて」は加水せず、つまり原酒の状態で飲むと最高に美味いですが、度数は18〜19度と高いです。だから酒に弱い方には辛い度数です。

 それでロックにしようと提案なさっているわけですが、呑み助はこれを認めないでしょうね。悪酔いを心配するのなら、チェイサーをつけておき、酒は酒のままで行きたい、という人が多いかもしれません。

 夏場は日本酒党受難の季節です。

 この時期は、どうしても人間の体は水分を欲しますので、サラサラと飲める、ビールのように度数が低くで、発泡性の酒が好まれます。「生貯蔵」は、日本酒の中では清涼感がありますが、ビールにかなうわけもなく難しい所でしょう。

 秋の「ひやおろし」、は良いと思います。

 「ひやおろし」とは、寒づくりした酒を、夏の間寝かせておいて落ち着かせたものです。これを涼しい季節になってきたら卸す、ということですね。

 秋にそういう酒質のものを飲むのは良いことで、「ひや」という名前ですが燗をつけても旨いです。そうすれば秋の気分を満喫できると思います。

 ただ、ここで問題なのは気候の温暖化です。

 9月に入ったら、すぐ「ひやおろし」を解禁する蔵元さんが多いですが、今の東京の9月1日は、まったく夏です。お彼岸中でもまだポカポカしていて、10月に入って、ようやく秋らしくなりますね。ここがズレるところです。

 9月1日では、まだ気温が30℃なので、酒を近々いやキンキンに冷やしたくなりますが、そういう飲み方は、せっかく落ち着かせた「ひやおろし」の酒質に適している、とは言い難いのです。

 せっかく「ひやおろし」という過程を加えるわけですので、その御酒の魅力を最大限に引き出すような、御提案にした方が良いと思います。

 できれば10月、早くてもお彼岸まで待って解禁するのが良いと思っています。

と、いうわけで、季節の御酒と「変わりザク」をセットにしたメニューを作ろうかと思い、思案中しています。

追伸

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山ふぐ

 11月に前橋市で開催した「すきや連」でお世話になった「群馬やまふぐ本舗」さんから、蒟蒻とシラタキが届きました。

 「やまふぐ」の御主人の御自慢は、その蒟蒻・シラタキが刺身として食べられることです。下茹でしなくてOKで、そのまま食べられるのです。

 それどころか「下茹で厳禁」(!)と書いてあります。茹でて固くしてもらったら迷惑!ということです。へえーですよね。

 そういうことが出来るのは、石灰が少ないからです。

 そもそも石灰は、アルカリ反応を起こしてコンニャク粉を凝固させるのに使います。作るコンニャクに対し、必要量を完全に反応させれば、最小限で済むわけですが、その加減は、御主人曰く・・

「その辺りの添加基準は、データと数値で表すより、今までの経験と感覚でその都度加減しないと、四季折々の製造環境の違いにより、均一に作る事は難しいんです。」

 ところが、一般的な製造者さんは・・・

「食品に一番あってはならない「腐敗の原因」を取り除く事が第一と考え、必要以上のアルカリ分を加え作るんですが、その加減の限度を知らず、数値ばかりを見てしまうのだと思います。」

「しかし!最低限必要とされる凝固剤を完璧に混ぜ合わせれば、意外と日持ちするんですよ!パックしてボイルすればなおさら。」

ということで、「やまふぐ」さんの蒟蒻は、意外なことに消費期限が長いのです。

「みんな「製品が傷むのを避けるため!」って云うか、加減の限界を知らないし、また挑戦してないため、無駄な石灰添加の悪循環に陥ってるのかも知れませんね!」

「要は、一般的な製品はいろんな部分で無駄が多いんです。物事には「適量」て云うのがあり、コンニャクもそうなんですよ。」

 この話しには、なるほどと思いました。

 今時はどうしても過剰に「安全」に、食品を作ろうとする傾向があるように思います。結果、「安全」でも「加減」が悪くて⇒不味い場合が多いような気がします。

 実は私はワインを大量に飲むことをしませんが、それはワインの参加防止剤(=亜硫酸塩)が好きでないからです。日本酒のように火入れをしないワインは、これを入れないともたないのですが、その量が多いものが結構あるようです。

 それが苦手なのです。

 このクスリの量が多すぎないか、厚生省も通関の段階で、規制しているそうでが、その基準は結構緩く、皆パスしてしまうそうです。

 私がワインを好きになれないのは、この人達のせいです。

 「安全」が大事でないと言うつもりはありませんが、過剰な安全は考え物ですね。その証拠に、蒟蒻に石灰を多く含ませたからといって、消費期限がそれだけ伸びるわけでもありません。

 で、結局「やまふぐ」さんのシラタキの御味はどうだったのかっていうことですが、

 フレッシュ感が素晴らしかったです。御高説の通り、臭みは完全に無しです。夏場に酸味を効かせて食べたら爽快でしょう。

 こういう食べ方をして初めて、「山ふぐ」と言われる理由が分かります。

 すき焼きに入れてしまうと、どうしても少し固くはなりますので、「山ふぐ」感はかなり薄まります。でも弾力はしっかり残っていて、食感が楽しいです。七味とか辛みを加えるとさらに良いかもしれません。

 同じシラタキでも、いろいろな食べ方ができるのだなあ、と感心しました。

  追伸

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とりあえずビール

 新年会シーズンですね。

 とりあえずビールで乾杯!

という場合が多いと思います。

 その「とりあえずビール」が廃れつつある、という話しを耳にします。

 「とりあえず」では、ビール関係者の皆様やビールさん御本人に失礼ではないか!態度を改めるべきだ!という理由で廃れつつある、わけでは勿論ありません。

 もっと違うものを最初から飲みたい、という方―特にそういう若い方が増えているそうなのです。

 その気持ちは分かるけど、最初の一杯位は、皆と同じにしたら良いのに!と私などは思いますが、了見が狭いでしょうか。

 先日、ある「打ち上げ会」をすることになり、15人ほどで飲みに行った時に、こんなことがありました・・・

 仕切り役の幹事さんは、もう夜も遅いし、とにかく早く乾杯して盛り上げたいので、

 ビール以外の方はいますか〜?!

という注文の採り方をしました。いちいち個別に注文を採ったら時間がかかって盛り下がりますからね。そうしましたら御一人だけが、店員さんにビールの銘柄を聞いて、別の銘柄を注文しました。

 私は、その方はひょっとしたら、そっちのビールメーカーさんと御取引きがあるのかと思い尋ねてみましたが、そういうことではなく単に「お好み」のようでした。

 うざっ!

と口には出しませんが、内心私がそう思ったことを、ここに言明いたします。

 最初の一杯位は、皆と同じにしたら良いのに!と思いました。心が狭いもんですから。

 ところが、です。最近の状況=「とりあえずビール」が廃れつつある状況は、そういうことでもないのだそうです。単に「お好み」の話しではなく、アルコールに弱い方が増えているようなのです。

 ビールのアルコール度数は、たかだか5%であって、12%のワインや15%の日本酒より、かなり低いです。だから、酒に弱い方でも、とりあえず乾杯だけは参加できるはずです。

 ビールはこれだけ度数が低いのだから、誰でも少しは飲めるよね。だから乾杯位は全員が同じ物を飲んで、グループの一体感を深めようね。というのが「とりあえず」の真意だと私は思っています。

 勿論、一体感という意味では「とりあえず御酒」の方が、さらに望ましいです。日本酒業界の方は口を揃えて、そうおっしゃいます。

 フクシマ第一原発が出来て、運転を開始した時の祝いの乾杯は日本酒で行ったようですね。テレビで見ました。GE社から派遣されて来たらしき、アメリカ人技術者も、酒の試飲会で見かけるような、大振りの猪口を手にして乾杯に参加していました。

 同じ日本酒で乾杯することが、日米関係技術者の一体感を深めたと想像できます。その後の事態はさて置きますが。

 しかし、ここでネックになるのは、やはり度数です。5%のビールでも「・・・」という方が増えている状況では、15%の日本酒はキツいですね、ゼンゼン。

 そう言えば去年「大震災6カ月―全ての食材を東北から集めた、住吉史彦の会!」を開催した時は「とりあえず御酒」で乾杯しました。東北の蔵元さんが3社参加してくれたからです。

 そうしましたら、会が終わった後、いつもなら二次会に行くような面々が「帰る・・・」とおっしゃいます。

 どうかしました?と尋ねますと、

 いやあ、酔っ払っちゃってねえ、えらく・・・

ということでした。

 翌日のフェイスブックでも、

 住吉さんの会は最高だったけど、酔っ払ったなあ、最初から日本酒はキツかったなあ。

というコメントが書いてありました。

 なるほど、そうでしたか・・・

 要するに「とりあえず御酒」はもちろん「とりあえずビール」すら危ういので、日本酒業界の方は、低アルコールのものを開発するよりないかもしれません。

 でも、そういうのはおいしくないんですよね。「低アル」飲料は、そもそも飲めない人に飲ませる飲料なので、甘くしてあったり、酸っぱくしてあったりします。

 嫌いなんですよね、個人的に、そういう「御子様テイスト」の酒が。これまで「いいね!」というのにお目にかかったことがありません。

 だから、私個人の会は、今後も「とりあえず御酒で乾杯!」しますね。

 最近は、加水してしない「原酒」が出回っていて、あれは美味しいですよね。

 度数は18%とかですけど、あれは美味いですから、ああいう御酒で乾杯しましょう。 

 うーい、ひっく。 

追伸

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またまたまたクリスマスの話しです。

  年始なのに、またまたまたクリスマスの話しです。

 日本養殖新聞の、「うなっくす」さんことTさんが、

 「クリスマスにうなぎを食べるワケ」プロジェクトを提唱なさっています。

 そのブログが面白かったので、御本人に無断で転載しますと・・・

 「クリスマスに何でうなぎ?」ってことで、その理由を以下、並べてみました。

▼”クリスマスにチキン”って定着しすぎて、もう飽き飽きだから。

▼他の人はチキンばかり。自分だけ、うなぎを食べる事で優越感に浸れるから。

▼鰻重を食べる事で、ありきたりではない、思い出に残るクリスマスを過ごす事が出来るから

▼体調崩しやすいクリスマスの時期はビタミンC以外、豊富な栄養を含むうなぎが最適だから(注:デザートにはビタミンCをたっぷり含んだデザートを)

▼川魚の中で、肌に良いコラーゲンを多く含むウナギは、肌荒れを気にするこの時期に打ってつけだから(※コラーゲンは、ビタミンCを一緒に摂る事で吸収を良くする)

▼クリスマスは”聖なる夜”であると共に”精なる夜”、それだけにうなぎは欠かせないから。

▼愛し合うカップルは、チキンより精のつくうなぎが最適だから。

▼慌ただしい師走に、比較的空いたウナギ屋さんで美味しい鰻重を食べると心がほっとし、落ち着けるから。

▼”ごちそうだぞ!”と強調、クリスマスプレゼントに次いで、うなぎを大切な方におごると喜ばれる(?)から。

▼うなぎとは世界に誇る日本を代表する伝統食文化、チキンを食べている場合ではないから。

▼ ウナギイヌがサンタの格好をするとたぶん、かわいいから。

追加:男子がお店で女の子に鰻重の『特上』を頼んでも、フレンチ最上級コースの1/3以下だし、オトコのメンツの割に実はコストパフォーマンスに優れてるから。

 ははは。よくも、これだけ理由をお考えになったものです。スゴいです。

 しかし、です。鰻がこう来るなら、すき焼きも黙ってはおれません。

 で、考えつきました。

 「バレンタインに、すき焼きを!」

 早速、鰻がバレンタインも占領しないよう、Tさんに申し入れて?おきました。

 り、理由ですか?

 うーん、

▼ 住吉さんがサンタの格好をするとたぶん、かわいいから。

 え? それじゃあ、クリスマスの理由だろう、って?

 ス、スミマセン!

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住吉史彦の十大ニュース

 お待たせしました!

 今年も「住吉史彦の十大ニュース」の時間がやってまいりました。

 え? 誰も待っていないって?

 そういう声は無視して、どんどん行きましょう。

 今日はポイントだけを書きますので、詳しい内容を知りたい方は、アンダーラインのある所をクリックして下さいね。さて、

1月 「ちんや」すき焼き通検定試験を実施しました。

 勇気ある17人の方が受験し、見事全員が合格されました。今後も継続して実施し、「すき焼き通」を増やして行きたいです。

3月 第8回「すきや連」を京都三条寺町の「三嶋亭」さんで開催しました。

 「すきや連」が初めて関東以外に進出しました。

 この日に合わせたかのように「すきや連」旗振り役代表の、向笠千恵子先生の御本『食の街道を行く』が、料理本のアカデミー賞とも言われる、「グルマン料理本大賞」の、紀行本部門2010年グランプリに選ばれ、発表されました。

 その目出度さも加わって、この回は、いつになく盛り上がっていたように思います。3日後に大震災が襲ってくるとは知らず、とても楽しい夜が更けました。

 5月「青森・岩手・宮城・福島・茨城 五県蔵元連合試飲会@浅草」を開催しました。

 大震災に遭い、「守ろう、東北のSake!示そう、ニッポンの絆!」というスローガンで、三社祭が開催できない、その日に開催しました。

 合計67社の蔵元さんから、酒を出品していただきました。また陳列作業には、浅草料理飲食業組合役員の皆さん、浅草酒販組合さんのマンパワーを集めて当りました。

 経験のない一大事業でしたが敢行しました。

7月 「ちんや」で「料飲三田会」の例会を開催しました。

 料飲三田会というのは、慶応大学を出て料理屋を経営している人たちのグループです。会員の顔ぶれは、東京でも良く知れた御店の御主人様方ですので、緊張しました。

 東北地方の、慶応出身の蔵元さんが造る御酒をお出ししました。

7月 「ちんや」の精肉売店で、調味料を売り始めました。

 今世の中には、「出来合い調味料」がやたらと増えてきていますが、正直、私の味覚からすると、残念なものばかりです。それに添加物がたくさん入っています。肉屋が肉だけを売っていればOK、という環境ではなくなってきたので、始めた次第です。

 醤油をかわきりに、その後、味噌などの他の調味料も売ることも始めています。

7月 第9回「すきや連」を「銀座吉澤」さんで開催しました。

 第9回は、汚染エサの問題で畜産業界が大揺れの最中の開催と成りました。それでも、「すきや連」は挫けていません。この日も開催店のY社長が「こんな大勢さんの宴会は初めて!」という位の、大人数が集結しました。

 「必ず乗り越えるぞ!」と大盛り上がりでした。

8月 「すき焼き川柳onツイッター」コンクール、略して「すき川」をネット上で実施しました。

 今年の8月は汚染牛報道で大ダメージの最中でした。ボヤイていても仕方ないですので、この企画を実行しました。キャッチコピーは「川柳で日本の食卓に笑顔を!」

 530句もの句が集まり、びっくりでした。傑作には「ちんや」食事券をプレゼントしました。

8月 隅田川花火大会の日に、「ちんや」で国際観光日本レストラン協会の納涼会を開催しました。

 花火は、震災の影響で例年より一ヶ月遅れ、8月末の開催になりましたが、関係の皆様のご尽力により無事開催されました。業界の仲間と共に鑑賞することができ、本当に有り難いことでした。

9月 <大震災6ヶ月―全ての食材を東北+北関東から集めた、住吉史彦の会!>を開催しました。

 この会は昨年に続き2回目でした。

 「御偉方」をおよびせず、私と年齢の近い皆様(プラスマイナス10歳)にお声かけさせていただく会という点は昨年と変わりませんが、今年はご案内先を「飲食業界・食品製造業界の方限定」という風に変更、また題名の通り、食材を東北から集めました。

 参加者は私の親しい方ばかり。「オレ達が日本の食文化を造るぞ」と大盛り上がりの夜でした。

11月 第10回「すきや連」を、群馬県前橋市のすき焼き店「牛や清」さんで開催しました。

 今回も定員オーバーの、多数の皆様のご参加があり大盛況。上州和牛を堪能しました。

 またこの回は宴会の前に「産地見学ツアー」が付きました。下仁田の葱畑、原木しいたけ、蒟蒻工場を見学して有意義でした。群馬の皆さん、お世話になりました!

 そして最後に、もう一つ。

 2/28に弊ブログが連続更新365日を達成しました。その後、大震災をまたいで671日(1年10か月)まで伸びています。

 記念の日には「連続更新365日記念スペシャル カリスマ受け売り師・住吉史彦の生涯の半分くらい」と題して、6日連続の長篇ブログをUPしました。

 さてさて、あまりに多くのことがあり、決して忘れることのないだろう2011年の、弊ブログも本日が千秋楽となりました。万感胸に迫り、大したことは書けません。

 ただただ御礼だけを申し上げます。

 読者の皆様、ご愛読いただき誠にありがとうございました。

 2012年もご愛顧を賜りたく、お願い申し上げます。

  東西、東〜西〜