居合抜

山本普乃(ゆきの)さんの、10回目の三味線コンサート「粋と賑わい」を拝聴しました。
ゆきのさんは、お座敷唄などのくだけた曲から長唄も、さらには現代・オリジナル曲等、ジャンルにとらわれず、幅広く演奏と作曲活動なさっていますが、得意になさっているのは、お座敷唄=小唄、端唄、俗曲などの、宴席で唄われる気軽な曲です。そういう曲の方が細棹三味線の魅力が出易いということのようです。
そんな曲の内、今回は「浅草詣り」という俗曲が採り上げられていました。歌詞は・・・
浅草詣り 蔵前通れば 隅田の風に どんどこどんどこ
笛太鼓 国技館 横綱関取衆の晴れ姿
永井兵助居合抜・・・
「永井兵助」と聞いて、お恥ずかしいことに私も一瞬何のことか分からなかったのですが、これは、戦前まで浅草名物とされていた、テキ屋あるいは香具師(やし)のことでした。
居合抜は余興でして、それで通行人の耳目をひいて歯磨き粉を売ります。「長井」と書く場合もあるようです。車寅次郎が全国をまわっていたので、テキ屋というと全国をまわるものと思いがちですが、定住型のテキ屋もいたわけです。
浅草では戦後すぐまで香具師がいて、その時代を覚えている人にとっては、浅草の音というと香具師の声色を思い出す方もいますね。私の世代ではリアルには聞いていませんが、こういう形で土地の音の記憶の一つを、思い出すことが出来ました。

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粋と賑わい

山本普乃(ゆきの)さんの、10回目の三味線コンサートを拝聴しました。
ゆきのさんは、お座敷唄などのくだけた曲から長唄も、さらには現代・オリジナル曲等、ジャンルにとらわれず、幅広く演奏と作曲活動なさっています。「〇〇流っぽくない三味線」と言えば、分かり易いでしょうか。
今回は第10回記念とアルバム発売記念の演奏「粋と賑わい」でした。
会場はヤマハ銀座スタジオ。
同じビルの上階には、アコースティック楽器専用のヤマハ・ホールもあり、前回のコンサートはそちらでしたが、今回はあえてイベントスペースである「スタジオ」の方を使っていました。
天井の高い会場を使って、映像とのコラボレーションも。
古典の場合、歌詞を聞いても情景が目に浮かばない客が多いでしょうから、映像を見せるのは、上手い手だと思いました。

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酉の市マップ

え、もう、そんな季節ですか。気が早いですねえ。
猛残暑の最中だというのに、鷲神社の関係者の方から、今年の「酉の市マップ」の打ち合わせをしたいと連絡があって、驚きました。
「酉の市マップ」は浅草駅から鷲神社までの一帯の地図に、飲食店など参拝の帰りに立ち寄りたいスポットを入れたものです。「酉の市」の日程は「11月の酉の日」で一般人には分かりにくいので、日程を告知する意味も込めて毎年制作・配布されています。
「ちんや」も勿論スポットの一つに加えていただいています。
今年の「酉の市」は
一の酉は11月8日(金)
二の酉が11月20日(水)
ですから、まだまだ先のことですが、
今年は9月中に仕上げてしまい、印刷費にかかる消費税を8%にしたいんだとか。とほほ。
暑い中打ち合わせにお越し下さり、お疲れ様でした。

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ニッポンチ!②

小学館の文芸雑誌「qui-la-la」(きらら)で河治和香先生の新連載「ニッポンチ!」が始まりました。
和香先生が、「駒形どぜう」の三代目を主人公にした小説『どぜう屋助七』(2013年)にウチのご先祖を登場させて下さって以来、新しい連載が始まるのを楽しみにしておりますが、今回は明治の浮世絵師を主人公にした小説です。登場する絵師の作品がウチにあったりしますので、なおさら楽しみなことです。
登場するのは歌川国芳門下の絵師たち。国芳には歌川芳虎、芳艶、芳藤、落合芳幾、さらには月岡芳年、河鍋暁斎といった弟子がいましたが、国芳が幕府に逆らう位の人だったので、弟子達の性格も皆ユニークで。その人物描写もまた、この小説の面白いポイントだと思います。
連載2回目の9月号の中心になったのは、芳虎と芳藤でした。
芳藤はボンヤリしていて、よく迷子になったので、「藤ぼん」と呼ばれていました。「おもちゃ絵」「玩具絵」のジャンルで成功しました。
芳虎は喧嘩早く、喧嘩を解決するのに詫び証文が必要になることがあるので、事前に詫び証文を印刷して常時携帯していたとか。師匠・国芳と揉めて破門されてしまうので、国芳を記念する石碑に名が刻印されていません。
芳虎が成功したのは、武者絵、相撲絵、横浜絵で、「ちんや」では芳虎の横浜絵を一枚所有しています。
横浜絵とは、幕末に横浜に開かれた、外国人居留地の外国人を描いた作品です。外国人の風俗は、当時の日本人にとって新奇なものばかりで、人々の興味をそそり、それを受けて横浜の様子を描いた作品が、江戸の絵師たちによって、多数描かれました。
挑戦的な性格の芳虎が新しいものに向かって行ったのは、なんとなく、分かるような気がします。
今後の展開も楽しみです。

追伸
このブログは2010年3月1日に連載スタートし、本日で九年六か月となりました。日頃のご愛読に心より感謝いたします。

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命みじかし

旅館「茅ヶ崎館」さんが舞台になっている映画を観ました。
映画に実名そのまま「茅ヶ崎館」という旅館が登場し、その女将の役が、最近亡くなった樹木希林さんなのです。この映画が、樹木さんが最後に出演した映画つまり遺作で、しかも旧知の人が経営する旅館が舞台ですので観ない手はありません。公開後すぐ観てまいりました。
「茅ヶ崎館」さんは、小津安二郎ゆかりの宿ですが、樹木さんは、小津の遺作となった『秋刀魚の味』(1962年)の撮影時に、女優・杉村春子の付き人として、ここに来ていたそうです。
旅館の建物は有形文化財で風情満点です。明治・大正・昭和の風情を今に伝えています。旅館の個室で、小津風のすき焼きをいただくと、東京の近くに居るのを忘れるほどゆっくりできて、戦前の貴顕がここを避暑地にしたわけが分かります。
小津風すき焼きとはどういうすき焼きなのかは、今回の映画『命みじかし、恋せよ乙女』にはまったく関係がないので、弊ブログの2012年7月29日号をご覧いただくことにして、今回の映画は実は外国映画です。舞台の後半が茅ヶ崎ですが、主演者の中では樹木さんさんとの主演女優のユウだけが日本人です。
この物語は、酒に溺れ仕事も家族も失ったドイツ人男性のカールの元へ突然、ユウと名乗る日本人女性が訪ねて来るところから始まります。風変りなユウと過ごすうちに、人生を見つめ直し始めるカールだったが、その矢先、彼女は忽然と姿を消してしまう・・・
カールはユウを捜しに日本へ向かい、そこでユウの祖母で「茅ヶ崎館」の女将(樹木さん)に出会う、という筋です。
皆様もご観覧を。

あ、言い忘れましたが、
今日は「浅草サンバカーニバル」の日でした。どうぞ、お出かけを。

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猛暑

御年86歳の常連さん、
なぜか毎年真夏に見える。
猛暑は大丈夫でしたか?とお尋ねすると、
はい、夏でもゴルフをやりますよ!
だって。
恐れ入りました。

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こけし屋とカルヴァドスの会

写真展「こけし屋とカルヴァドスの会」展を拝見してきました。
「カルヴァドスの会」とは、弊ブログの2015年12月13日号に書きましたが、
西荻窪のフランス料理店「こけし屋」さんを会場として、昭和24年から58年まで、中央線沿線の文化人が集まって交遊を楽しんだ会のことで、先代社長の故・大石総一郎さんがライフワークとして関わった会でした。
メンバーは、評論家の古谷綱武、ドイツ文学の高橋健二、仏文学の小松清、作家では細田源吉、福田清人、上林暁に横尾泥海男、元スペイン公使須磨弥吉郎氏など。ほかに会社重役、商店主など自称文化人(?)も加わり、大盛況だったそうです。
その様子を撮った約800枚もの写真が遺されていて、その写真が2015年に本になりましたが、配布されたのは関係先だけでした。
それを今回は展示して広く一般に見せようというものです。「こけし屋」さんの創業70年を記念して開催されています。
本の時も感じましたが、私はまず、場としての飲食店の理想形だと思います。
また戦後の、東京郊外の自由な空気や熱気が伝わってきます。逆に言えば、この頃は下町は勢いがありませんでしたね。
皆様も是非ご観覧を。
会場は「こけし屋」さん(西荻南3-14-6)の別館2階にて。9月2日まで。

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東京老舗名店案内

ムック本「ぴあMOOK東京老舗名店案内」に載せていただきました。
東京の美味しい老舗名店が130軒ほど紹介されている本です。
今回すき焼きだけでは一部門にならず、「鍋・すき焼き」というカテゴリーに入れられて、他の鍋の皆さんと同居していました。
各国料理/町中華/喫茶店というカテゴリーがあるのも面白いです。
東京の老舗を網羅していますので、便利と思います。
よろしかったら、お買い上げを。ISBN-10: 4835640586
なお掲載メニューは、すき焼き「楓」(熟成肉盛り合わせ)でした。

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うまいもんにカレーぶちこみゃあ

「うまいもんにカレーぶちこみゃあそりゃうまいカレーになるに決まっとろうじゃろうがカレー」
というものを食してきました。
これは、お笑いコンビ「千鳥」の大悟さんが考え、「テレ朝夏祭り」の会場で提供しているメニューです。
テレビ局の催事で提供されている、タレントがらみのメニューに私が興味を持ったことは、正直、これまで一度もないですが、今回行って来ましたのは、「うまいもんにぶちこみゃあ(中略)カレー」がすき焼きにカレーを合体させたカレーだからです。2016年10月からすき焼きの溶き卵にカレーオイルを入れている私としては見逃すことが出来なかったわけです。
で、食しまして、
うん、普通にうまいですね。
この組み合わせがうまいことは、私は「味博士」に依頼して分析してもらいましたから、当然感がありますが、うまいです。
もう少し甘くしても良い気がしますが、そこは趣味の領域ですね。
「テレ朝夏祭り」は、六本木のテレビ朝日さんと隣の六本木ヒルズのあちこちで色々なイベントが開催されていますが、「うまいもんにぶちこみゃあ(中略)カレー」が出されているのは、大屋根プラザの「ヒルズYOKOCHO」です。お試しあれ。
あ、「夏祭り」は、もう終わった、け?

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サステナブルな消費

「三田評論」8・9月号の座談会は、
【特集:サステナブルな消費】 SDGs実現のために消費をどう変えていくか
でした。
やっと「三田評論」にSDGsに来ましたか。
対談冒頭、司会役の蟹江憲史・慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授が、
「今日は持続可能(サステナブル)な消費をテーマに皆さまと話していきたいと思います。この問題でよく取り上げられるのは、まず「食」の分野ではフードロス(食品廃棄)です。ちょうど「食品ロス削減推進法」という法律も本国会で成立したところで、これからいろいろな取り組みが進んでいくと思います。髙橋さんはこの分野でジャパンSDGsアワードの大賞を昨年取られていて、その事業が大変注目されています。」
ということで、SDGsというと、最近はまず食品ロスの件から入る傾向があるように思います。ウチなどもよくよく考えていかないといけません。
去年の8月から地下一階の「ちんや亭」では全ての肉メニューに「ちょい食べサイズ」を作り、さらにご飯のサイズも、①普通②ちょい③要らないと選べるようにしましたが、この方向性を、肉の売店などにも拡げて行く必要がありそうです。
上↑の蟹江教授の言葉に出て来る「髙橋さん」さんというのは、
㈱日本フードエコロジーセンター代表取締役で全国食品リサイクル連合会会長でもある髙橋巧一さんのことです。食品業者で発生する食品廃棄物を、独自技術で殺菌・発酵処理して豚の飼料にすることで有名な会社さんです。
この会社さんには連日見学者が殺到しているそうで、会社のサイトも見学の項目を大きく取っています。そして対談で感心したのは、新入社員が全く辞めないこと。食品廃棄物を豚のエサにするのですから、綺麗な職場ではないですが、使命感のある若者は辞めないんだとか。
年をとると「最近の若いもんは・・・」と言ってしまいがちですが、それは働く環境による、ということですねえ。耳が痛いです。
ともあれ、SDGsの入り口は食品と、なんだか決まってきたようです。肝に銘じたいです。

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