但馬牛①

第20回「すきや連」は、芦屋市の「ホテル竹園芦屋」さんで開催しました。

「竹園」さんは、珍しい肉屋発祥のホテルとして知られ、またプロ野球・巨人軍と甲子園球児の定宿としても知られています。

今回も50人近くの、全国のすき焼き関係者が集結して大盛況でした。多くのスポーツ選手が愛した、但馬牛のすき焼きを堪能させていただきました。

さて、今回は例会の前に、いたって真面目な勉強会「但馬牛」セミナーを拝聴しました。

講師は、兵庫県立畜産技術センター研究員で獣医学博士の岡章生先生。

但馬は日本で最も古くから牛の交配の研究をしている土地柄で、その最先端の研究成果を聴けるのですから、実に在り難いことでした。

さてセミナーの要点を挙げますと、

1肉の中に占める脂肪の割合が30%程度であると、人は最も美味しく感じる。

2脂肪の中に占める一価不飽和脂肪酸の割合が60%程度であると、人は最も美味しく感じる。

3牛の体重と美味しさに関連性がある。体重が480キログラム以上に成ると、美味しさ評価が落ちて行く。

この3点は私が、このブログで日頃書いていることとほぼ同じです。

1を言い換えれば、サシの入り過ぎは美味しくない、「粗ザシ」は美味しくない、ということです。

2を言い換えれば、一価不飽和脂肪酸というのは、融点の低い脂のことですから、融けの良い脂が美味しい、ということです。

3についても、その通りと思います。これを基準に体重制限を設けている兵庫県のブランド運営方針は正しいと思います。

一つだけ先生と意見が一致しなかったのは、アミノ酸つまり旨味成分の件です。

肉の中のアミノ酸の多さと、食味評価の結果にあまり強い関連性が出なかった、それよりも脂と食味との関連性が強かったとのことで、これは体感と一致しません。

この件について、より熟成させた肉で評価すれば違う結果が出るのでは、と私は考えます。

また実験方法は、焼き肉としゃぶしゃぶでした。すき焼きにすれば、メイラード反応すなわち糖分とアミノ酸が熱で反応すること~が目の前で起きますから、きっと食味評価にアミノ酸が強く関連してくるはずだと考えます。

さて、コ難しい化け学の話しは、この位にして、兵庫県のブランド管理の話しもしておきましょうか。

<この話しは長くなるので、明日のこのブログで!>

追伸

『日本のごちそう すき焼き』は、平凡社より刊行されました。

この本は、

食文化研究家の向笠千恵子先生が、すき焼きという面白き食べ物について語り尽くした7章と、

全国の、有志のすき焼き店主31人が、自店のすき焼き自慢を3ページずつ書いた部分の二部で構成された本で、

この十年の「すきや連」活動の集大成とも言える本です。私も勿論執筆に加わっています。

是非是非お求めください。

弊店の店頭でも販売しますし、こちらからネットでも購入できます。

是非。

本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて1.838日連続更新を達成しました。

Filed under: すきや連,すき焼きフル・トーク — F.Sumiyoshi 12:00 AM  Comments (0)

泉州タマネギ

1月のことですが、TV番組『秘密のケンミンSHOW』が「大阪のすき焼き」を採り上げていたので、視てみましたら、

大阪のすき焼きには必ずタマネギが入る!

と言っていました。たしかに関西ではタマネギが入ることが多いです。

その理由として番組は、先週のタマネギが有名だから、いや、泉州のタマネギが有名だから、と説明していました。

現在ではタマネギと言えば北海道なので、泉州すなわち大阪府南部が有名ということをご存知ない方が多いと思います。

現在の県別生産量は、

北海道が1位。全国の生産量の半分以上を生産していて、ダントツです。

大阪は15位とはいうものの、北海道の100分の1以下の量です。

しかし、歴史を遡りますると、たしかに泉州でタマネギ栽培が盛んだったことがあります。

なんでも、泉州タマネギの栽培の歴史は明治時代まで遡るとかです。明治12年、坂口平三朗という人が神戸のアメリカ人からタマネギを分けてもらい、それを栽培したのがはじまりで、最盛期にあたる昭和35年には約4000haまで栽培面積が増加したそうです。

その後北海道などに押されて、栽培面積は減少の一途、現在では60haあまりしかないそうです。

この、泉州タマネギの全盛期が、すき焼きの全盛期に重なりますから、その伝統が今でも続いているということのようです。

なにしろ、関西のネギは青ネギで、関東人が食べない青い部分を食べますから、どうしても関東の白ネギに相当する具が他に欲しかったのだろう、と想像します。

その、白ネギに相当する具が同じ府内に在れば、使うのは当然のことですね。

芦屋市のホテル竹園芦屋さんでは、すき焼きをする時に、まずタマネギと青ネギを鍋に入れて、それから肉を入れます。面白い方法だと思います。

さてさて、弊店はもちろん関東なので、タマネギは普段入れておりませんが、春の新タマネギのシーズン~つまり今ですが~には「変わりザク」として、期間限定でタマネギを売っています。

使うのは、生産量が全国4位の愛知県のものです。

元々タマネギは乾燥させると保存性が良かったので、船上の食事として好まれ、船で世界中に広まりました。「神戸のアメリカ人から」という起源は、それです。

その歴史を振り返りながら、しかし、今では保存性を優先させることはありませんから、美味しい時季に食べれば良いのだと私は考えます。

よろしかったら、是非。

追伸

『日本のごちそう すき焼き』は、平凡社より刊行されました。

この本は、

食文化研究家の向笠千恵子先生が、すき焼きという面白き食べ物について語り尽くした7章と、

全国の、有志のすき焼き店主31人が、自店のすき焼き自慢を3ページずつ書いた部分の二部で構成された本で、

この十年の「すきや連」活動の集大成とも言える本です。私も勿論執筆に加わっています。

是非是非お求めください。

弊店の店頭でも販売しますし、こちらからネットでも購入できます。

是非。

本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて1.833日連続更新を達成しました。

Filed under: すき焼きフル・トーク,色んな食べ物 — F.Sumiyoshi 12:00 AM  Comments (0)

豊年萬福塾

「豊年萬福塾」の第二十回 「和のごちそう・すき焼き」を聴講してきました。

「豊年萬福塾」は月刊「日本橋」が主催する文化イベントで、今回は、

フードジャーナリストで「すきや連」旗振り役の向笠千恵子先生が講師。

「文明開化で肉食が解禁されてから約150年、今では日本を代表する〝和のごちそう〟となったすき焼きの歴史やドラマ、日本各地のお国ぶり豊かなすき焼きのお話、さらにその美味しさの魅力をたっぷり語っていただきます。」

その後は明治2年ご創業の、「伊勢重」六代目当主・宮本重樹さんとの〈すき焼きトークショー〉でした。

大変勉強になりました。

向笠先生から、住吉さんも一言話してよ!

と依頼がありましたので、3分程度で、昨年末に出版された、「すきや連」の本『日本のごちそう すき焼き』のPRをさせていただまいた。

<以下私の挨拶の全文です>

私が「ちんや」の住吉でございます。「すきや連」の事務局をしております。ご指名でございますので、少しだけお時間を頂戴いたします。

まずもって御礼でございますが、本日はすき焼きのイベントに、このように多数の方々がご来場くださり、本当に嬉しく存じます。

実は以前から手前どもは、すき焼きの当事者としまして、すき焼きって、こんなに美味しくて、こんなに楽しくて、こんなに国民的なのに、なんだか熱い話題になることが少ないよね、知られてはいるけど深く知られてはいないよね、と思ってきました。

それで11年前のことですが、弊社が創業125年を迎える前の年に、誰かにすき焼きのことを書いてもらおう!と思い立ったのが、そもそもであります。

で、向笠先生と大変在り難い御縁がございまして以来10年と少し。最初の向笠先生のすき焼き本『すき焼き通』が出ました時に懇親会をやりまして、そのメンバーをベースに「すきや連」が始まりました。年3回ペースで通算20回開催しまして、のべ1.000人以上の方が参加して下さいました。その成果が、今回の第二段の本『日本のごちそう すき焼き』です。

ですので今日PRさせていただきたいのは、この本はそれだけの、長い時間をかけて出来上がっていて、また多くの人が関わって出来上がっている、ということであります。パッと書けちゃった本じゃないんですね。

向笠先生には、その間10年以上に渡って、すき焼きに熱い関心を持ち続けていただきまして、本当に在り難く思っております。それが今日の、この盛況ぶりに繋がっているわけでして、この場をお借りしまして御礼申し上げたいと思います。

それから、すき焼き屋連中も多少の苦労をしております。なにしろ学校出てから文章は一切書いていない人間も多い中で、今回は「ゴーストライター禁止」でして、自分で書きました。いや、書かせました。なかなか原稿を出せない人もいて平凡社さんも苦労しましたし、私も取り纏めをしている間、うーん、共同で本を出すって難儀だなあ!と思いましたが、皆様には、この本は、そういう所を乗り越えて来た本としてお読みいただけましたら、一層面白いと思います。

すっかり宣伝になってしまいましたが、『日本のごちそう すき焼き』と、それからすき焼きそのものを、これからもどうぞよろしくお願い申し上げます。

お時間頂戴いたしまして、ありがとうございました。終わりです。

 

追伸

『日本のごちそう すき焼き』は、平凡社より刊行されました。

この本は、

食文化研究家の向笠千恵子先生が、すき焼きという面白き食べ物について語り尽くした7章と、

全国の、有志のすき焼き店主31人が、自店のすき焼き自慢を3ページずつ書いた部分の二部で構成された本で、

この十年の「すきや連」活動の集大成とも言える本です。私も勿論執筆に加わっています。

是非是非お求めください。

弊店の店頭でも販売しますし、こちらからネットでも購入できます。

是非。

本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて、あと3日で満5年です。

 

Filed under: すきや連,すき焼きフル・トーク — F.Sumiyoshi 12:00 AM  Comments (0)

百鬼夜行絵巻

創作人形劇『谷中・百鬼夜行絵巻』が、谷中の禅寺「全生庵」で上演されましたので、観て来ました。

この企画は、本年度の台東区芸術文化支援制度対象企画の1つですので、「台東区アートアドバイザー」である私にとって、公演が成功裏に終わるのか見届けるのも仕事の内なのです。

さて、会場の「全生庵」に行ってみますと、既に盛況で、観客の半分位はお子さんでした。

この様子を見て私は、中世の「付喪神」の説話を題材にした、この劇がお子さんにウケるのか、少し心配になりましたが、劇が始まりますと、それは全くの杞憂だということが分かりました。

出演した「人形劇団ひとみ座」の皆さんはプロでした。「ひとみ座」さんは「ひょっこりひょうたん島」で有名で、各地での出張公演も多いらしく、お子さんを引きつけて楽しませるのは、お手のもののようでした。

興奮して席でしきりとジャンプしている子もいたりして、大人ばかりの興業とはまったく違う盛り上がり方。あれも芸の一種ですね・・・

・・・で終わってしまっては、このブログの大人の読者の皆さんがツマラないでしょうから、ここでは「付喪神」のことを書いておきましょう・・・

中世の民間信仰「付喪神(つくもがみ)」は「九十九神」とも書きます。九十九年間使い続けられた道具には霊魂が宿ると考えれらえていたようで、古い絵巻物には「付喪神」が、道具に手足が付いたような姿で登場します。

人間が道具を大切にすれば、道具は「良い付喪神」に成るのですが、大切にしないと人間に悪さをするようになります。

今回の劇でも、人間の悪行によって生まれた「悪い付喪神」に、人間の中の悪者の泥棒が立ち向かい、「良い付喪神」の加勢を受けて戦います。

経過は色々あるのですが、結局は「良い付喪神」が呼び寄せた「護法童子」が「悪い付喪神」を退治します。

要するに仏教が、在地の神を倒すという筋ですので、

仏教=先進的・知的

在地の神=魑魅魍魎

という前提に立たないと、結末が痛快に思えないのですが、お子さん達にはその辺りは関係なく、まずは面白がってくれて、「道具を大切に」という教訓も学んでくれたようですので、まあ、良しとしましょう。

あっ!

ああっ!!

貴女が日頃八つ当たりしているマウスが、今一人でに勝手に動き出しましたよ。こっちから霊視で見えるんです。

「悪い付喪神」に成るのも時間の問題ですねえ。

追伸

一冊丸ごと「すき焼き大全」とも申すべき本が出ました。

タイトルは『日本のごちそう すき焼き』、平凡社より刊行されました。

この本は、

食文化研究家の向笠千恵子先生が、すき焼きという面白き食べ物について語り尽くした7章と、

全国の、有志のすき焼き店主31人が、自店のすき焼き自慢を3ページずつ書いた部分の二部で構成された本で、

この十年の「すきや連」活動の集大成とも言える本です。私も勿論執筆に加わっています。

是非是非お求めください。

弊店の店頭でも販売しますし、こちらからネットでも購入できます。

是非。

本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて1.813日連続更新を達成しました。

 

Filed under: すき焼きフル・トーク — F.Sumiyoshi 12:00 AM  Comments (0)

本気の質問項目②

「ちんや」のお客様で、学校の先輩でもある柴田明彦さんが、毎週火曜日に「フジサンケイビジネスアイ」に連載しておられるコラム『本気の仕事講座』の中で私を採り上げて下さいました。

人気のある連載らしく、何人かの方に、

「フジサンケイビジネスアイ」で見かけたよ!と声をかけていただきました。

そして同時に住吉さんのブログの1/20号に載っていた「本気の」質問項目の答え(=掲載されたゲ原稿の素)が、紙面には全部載っていませんでしたね。教えて下さい!という声もいただきました。

紙には限りがありますからね、このブログでお答えして参りたいと思います。

<長いので、昨日から二日に渡って公開しています。今日は、その第二回です>

・現代社会で本気を感じること

大震災の後、津波で流された会社を再建した社長さん達の姿には強い印象を受けました。

そして弊店も、歴史の中では関東大震災・太平洋戦争と二度丸焼けを経験したことを思い出しました。

こうした危機の際に、会社を継続するために必要なのは、金でも土地でも建物でもなく、ノウハウを持った社員と、お客様からの信用であることが分かります。

それこそが本当の会社の資産であり、本当の資産はバランス・シートに載っていないのです。だから柴田さんの、このコラムの主題が「本気」すなわち本当の「気」であることに、今は大変共感できます。

 

・あなたにとって本気の定義とは何でしょうか。

上に書きましたように、会社の本当の資産は、ノウハウを持った社員と、お客様からの信用ですから、それを損ねる結果に結びつく「仕事」は全て本当ではあり得ません。

この発想に立てば、ブラック企業や偽装表示が論外であるのは当然で、現代日本にそういう会社がたくさん在ることに、私は言い知れぬ気味悪さを感じますが、それはさて置き、

今私は経営者なので、自分の意に沿わぬ仕事を社内で引き請けさせられることがありません。

代を継いだばかりの時は気にいらない仕事もありましたが、上に書きましたように、そういうのは止めてしまったので、今は愉快に仕事しています。

ただしです、怖い感じ・暗い感じの本気は本気であっても、私はあんまり好きではありません。遊び・無駄は必要です。

やる側もそれを受ける側もジョークだと認識していれば、邪道もOKと思っています。老舗=怖いにはしたくありませんね。

 

・自分自身が本気度を炸裂させた事例、体験。

肉体的にハードワークするという意味では、やはり正月の営業です。浅草の超繁忙期ですから、私が丸々一日玄関に居っぱなしに居て、全てのお客様の出入りを把握します。

3分も席を外すと状況が変わるので、食事も弁当を玄関脇の小部屋に持ち込んで済ませます。体はキツいですが、上に書いた時間制限のおかげで、以前のような混乱が生じることはなくなりました。超繁忙期であっても銀行の窓口のように営業を進行させます。

料理内容に気を遣うのは、やはり料理業界の会合ですね、普通の方には申し訳ないですけど。

その話しは、今回のコラムの主題からは外れるかもしれませんが、技術的に進歩する為には、業界の会合を積極的に引き請けるのは良いことです。

偉い方の密談が弊店である場合、隣に話しの内容が聞こえないようにとか、そういう気は遣いますが、これも今回の主題の本気とは少し意味合いが違うような気がします。

社会貢献させて頂いているのは、「1千人の笑顔計画」でしょうか。東北産の牛肉を召し上がった方の笑顔画像を弊社サイトにUPしています。

http://www.sukiomo.com/smile/

私の場合、「炸裂」してしまうのは、結局こちらが本当の仕事と考えていることをさせて貰えない場合に多いような気がします。

上に書いた「時間の短すぎる予約」が良い例です。料理屋の業界では予約を断る・入店を断る・注文を断るって、結構な難事なのです。

BtoBの世界とそこが少し違います。

 

・失敗体験⇒そこから学んだこと

思いつきをどんどん実行していますので、失敗と言えば失敗ばかりです。

しかし失敗は成功の素であって、数を打たないと成功例も出て来ません。何もしないのが最も良くないと考えています。

ただ、思いつきの方向は当然変わってきています。

私が若い内は、未だネットが未発達の頃でもあったので、雑誌広告・交通広告とかクーポン券とかに強い関心を持っていましたが、ああしたものは店と客の絆を強化するものには成り得ず、上手く行ったとしても一過性の効果しかありませんでした。

クーポンを利用する客も受け取る店も「損得ずく」でどうしても冷えた空気が生まれます。

今は考え方がだいぶ変わりましたので、販促面ではお客様の記念日を店に登録していただくことに注力しています。

その日に来店されれば割引きをするので、割引という現象面では以前のクーポンとあまり変わらないかもしれませんが、生じる空気は全く違います。

記念日割引は割引きさせられた店側も嬉しく思う割引です。結婚記念日にご夫婦で来店して下さったりすると、こちらも「どうぞお幸せに!」という気持ちに成ります。そういう現場空間を作っていくことこそ、すき焼き屋においては本当の仕事だと今は思い定めています。

 

・次世代へのメッセージをお願いします。

以下、伝統産業の後継経営者に特化したメッセージですが、お赦し下さい。

引き継いだ事業を冷静に吟味して、自分の信念・信条・直感に合う事業であれば、無用  に「改革」すべきではありません。細部を洗練させるべきです。

「改革したい」「改革者としてメデイアで話題に成ってみたい」「先代より出来ることを見せつけたい」という欲求に支配されてはなりません。若い内に出しゃばればデメリットの方が大きいでしょう。貴男の資質のことは、一人の女性が分かってくれれば、それでOKと思うべきでしょう。

一方、新しい科学的知見や社会の動向には注意を払い、事業に採り入れていかねばなりません。私の場合は食品科学・畜産学で、色々論じたいところですが、それを言い始めると長大に成りますから、今日はやめておきます。とにかく新技術に逆らうことは誰も出来ません。

「時流に逆らう男」は格好良くドラマの主役としては丁度良いですが、非実際的です。

「抵抗の為の抵抗」は「改革の為の改革」と同様に愚かなことと思います。

新知識を採り入れるプロセスを通じて、会社は間違いなく「貴男の会社」に成って行きますし、貴男が作る製品は歴代で最も優れた製品に成って行きます。

そうそう力まなくとも、当代の味が歴代で最も美味い、ということに自然と成って行くと思います。

 

・座右の銘

「商いは、楽しく・古風に・斬新に」(自作です)

<終わり>

追伸

一冊丸ごと「すき焼き大全」とも申すべき本が出ました。

タイトルは『日本のごちそう すき焼き』、平凡社より刊行されました。

この本は、

食文化研究家の向笠千恵子先生が、すき焼きという面白き食べ物について語り尽くした7章と、

全国の、有志のすき焼き店主31人が、自店のすき焼き自慢を3ページずつ書いた部分の二部で構成された本で、

この十年の「すきや連」活動の集大成とも言える本です。私も勿論執筆に加わっています。

是非是非お求めください。

弊店の店頭でも販売しますし、こちらからネットでも購入できます。

是非。

本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて1.812日連続更新を達成しました。

Filed under: すき焼きフル・トーク — F.Sumiyoshi 12:00 AM  Comments (0)

本気の質問項目①

「ちんや」のお客様で、学校の先輩でもある柴田明彦さんが、毎週火曜日に「フジサンケイビジネスアイ」に連載しておられるコラム『本気の仕事講座』の中で私を採り上げて下さいました。

人気のある連載らしく、何人かの方に、

「フジサンケイビジネスアイ」で見かけたよ!と声をかけていただきました。

そして同時に住吉さんのブログの1/20号に載っていた「本気の」質問項目の答え(=掲載された原稿の素)が、紙面には全部載っていませんでしたね。教えて下さい!という声もいただきました。

紙には限りがありますからね、このブログでお答えして参りたいと思います。

長いので二日に渡って公開致します。

・あなたの仕事内容は?

浅草のすき焼き店「ちんや」の六代目の店主(株式会社ちんや代表取締役社長)です。

2001年8月に36歳で就任して、在任すること13年です。

やってきたことについては、弊ブログのプロフィール欄をお読みください。

 

一方、この間に経営に大きな影響を受けた外部の出来事としては、全て悪いことですが、

2001年のBSE問題に端を発した「食の安全・安心」問題、口蹄疫の流行、鳥インフルエンザの流行、リーマン・ショック、東日本大震災がありました。

こうした問題のたびに、大きく売り上げを落とし、店と客の本当の絆とはどういうものか、真剣に考えさせられました。思いおこしますと、悪い出来事の方が経営者としての進歩につながったような気がしていますが、そのことは下に書いて行きます。

 

・あなたは自分の仕事が好きですか。それはなぜでしょうか。

好きです。しかし最初から好きだったわけではなく、仕事そのものを好きな形に変えたり、どうしても好きになれない仕事は止めたりしましたので、それでどうにか好きになれました。

すき焼きは基本的に人を幸せにするものですから、そこはまず前提としてハッピーでしたが、接客業特有・「感情労働」特有のストレスを、最初はやはり感じました。

店ではアルコールも提供しますから、酒抜きなら起こらなくて済むトラブルも起きることがあります。それに対処する仕事を好きになれと言うのは無理と申すものです。

後ろの予約客がもう到着しているのに、先客が泥酔して部屋を空けてくれない場合などは本当に辛いものでした。

そういう状況は自分にもストレスで社員にも当然ストレスですから、時間制限を導入することで解決しました。制限と言っても2時間30分制限ですから、ゆとりが在る制限で、たいていは納得していただけますが、それでも「そういう制限が在るなら、もう行かない!」と言う方も出ました。

しかし、そこでブレてはいけませんしかし、それしか方法は無いのですから、断行あるのみです。社長に成って3年目に制限を導入しました。

時間制限は元々は酔客対策でしたが、良い副産物もありました。一日の全ての仕事が計画的に成ったことです。

正月の超繁忙期など、いったい何組のお客様の相手をしないといけないのか、皆気が遠くなりながら働いたものでしたが、今では一日一部屋が3回転するだけ、と誰もが分かっています。

ですので超繁忙期であっても計画的に・平静な気持ちで仕事に取り組めます。仕事を好きになる為に、これはかなり在り難いことでした。

逆の時間制限もしています。時間が短すぎる予約も受けないのです。旅行業者がしばしばそういう予約を入れようとしますが、理由は多数の施設を周りたいからです。

そういう業務は請けると店を荒らしますし、同じ時間に居合わせる他のお客様の迷惑になる可能性が高いですから、絶対に請けません。

そうしますと「お客様は神様」と考えている業者と電話で口喧嘩に発展することもありますが、そういう喧嘩は江戸の華。

たまにやらないと「最近喧嘩してないなあ~」と物足りない気分になることさえあります。

会員制を敷いてはいないので、以前は反社会勢力の人間が入ってくることもありました。最近は暴追条例の施行で反社客はまず全く来ませんが、私が若い頃は来ていました。

そこで、まず警察の講習会に通って、「暴追の店」のというステッカーを貰って店頭に貼り、その上でヤっちゃんと直接対峙。料理は提供できないから帰って欲しいと告げました。

日本のヤクザはベースが任侠ですから、素人を刺したりしないもので、大人しくしてくれなかったことはありません。

思いまするに、自分でやりたくて取り組んだ仕事が好きなのは当然のことで、「仕事を好き」と言うためには、どうしても好きなれない仕事をしない、ということが大事です。そしてそれは難しいようで、そう難しいことではありません。

必要なのは勇気と決断だけ。飛び降りてみれば易いことと分かります。

 

・仕事に対する姿勢

実は、どうも、仕事として仕事をしている感覚があまりありません。店から報酬を受け取っているから「仕事」ではあるのでしょうが、「浅草のすき焼き屋として生きている」、という感じが実感です。

ですのでオン・オフの切り替えが、私の場合ほぼありません。店の定休日もたいてい業界の用事か、地元の用事をしています。寝ている間も仕事の夢をみます。

全人格的にどっぷり関与していますが、それで充分愉快に生きており、ストレスに感じたりはしません。(肉体的には確実に負荷がかかっていると思いますが、今のところお陰様で完全に健康です。)

 

・あなたのロールモデル(尊敬する人物、成りたい自分モデル)は?

はなはだ僭越ながら明治天皇です。

陛下の生涯を知れば、要職を務め・大事を成すのに必要なものは、へんぺんたる才気ではないことが分かります。

陛下は失礼ながら凡才の御方であられました。

たまたま天皇の子として生まれ、歴代皇室に対する責任を全うするだけでも難事であるのに、陛下の政府は帝国主義の時代にあって欧米列強と対峙し、国内では近代化を進めました。

ドナルド・キーン博士が編集した伝記を拝読しますと、その間の陛下の務めの苛酷さに涙がこぼれるのを禁じ得ません。

しかし結局陛下は、ほとんど全ての国民から、海外からも崇敬を集め、歴史に名を残しました。世界史に冠たる一生と言えると思います。

 

・現代社会で本気を感じること

<この続きは、明日の弊ブログにて>

追伸①

2月10日は火曜日ですが、祝前日ですので休まず営業致します。どうぞ御利用下さいませ。

追伸②

一冊丸ごと「すき焼き大全」とも申すべき本が出ました。

タイトルは『日本のごちそう すき焼き』、平凡社より刊行されました。

この本は、

食文化研究家の向笠千恵子先生が、すき焼きという面白き食べ物について語り尽くした7章と、

全国の、有志のすき焼き店主31人が、自店のすき焼き自慢を3ページずつ書いた部分の二部で構成された本で、

この十年の「すきや連」活動の集大成とも言える本です。私も勿論執筆に加わっています。

是非是非お求めください。

弊店の店頭でも販売しますし、こちらからネットでも購入できます。

是非。

本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて1.811日連続更新を達成しました。

Filed under: すき焼きフル・トーク — F.Sumiyoshi 12:00 AM  Comments (0)

あと半月

<まずは、昨日のクイズの正解です>

ピタゴラス

国際連合教育科学文化機関

United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization

UNESCO (英語発音: [juːˈneskou] ィユーネスコウ

日光の社寺、姫路城、石見銀山

滋賀県大津市

*宇治市も長岡京市も京都府ですね。これは「ひっかけ問題」でした。ひひひひ。延暦寺が大津市にまたがっています。

無し、5つ、

福島と宮城と山形

*白神山地=青森県と秋田県にまたがっている、平泉=岩手県。

小笠原諸島

*富士山は文化遺産、阿蘇山は登録されていません。

 

・・・なんてことをしている内に、弊ブログにはエポックが近づいてきています。

そう、このブログは2010年3月1日にスタートしましたので、今月末で、満5周年なのです。

いえーい。

あと半月です。風邪をひかないようにしなくちゃ。

追伸

一冊丸ごと「すき焼き大全」とも申すべき本が出ました。

タイトルは『日本のごちそう すき焼き』、平凡社より刊行されました。

この本は、

食文化研究家の向笠千恵子先生が、すき焼きという面白き食べ物について語り尽くした7章と、

全国の、有志のすき焼き店主31人が、自店のすき焼き自慢を3ページずつ書いた部分の二部で構成された本で、

この十年の「すきや連」活動の集大成とも言える本です。私も勿論執筆に加わっています。

是非是非お求めください。

弊店の店頭でも販売しますし、こちらからネットでも購入できます。

是非。

本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて1.810日連続更新を達成しました。

Filed under: すき焼きフル・トーク — F.Sumiyoshi 12:00 AM  Comments (0)

寒いは旨い

寒いですね。

どのようにお過ごしですか?

お葬式に参列し、お浄めに呼ばれますと、

ここのところ葬式が続くねえ・・・という声が聞こえてきます。生き物にはきびしい季節です。

では、この季節に人間以外の生き物はどのように過ごしているのでしょうか。

人間には暖房もコートも燗酒もありますが、動物の対抗手段と言えば、

自分の体に脂肪を付けること、です。

昨今、人間社会では脂肪と言えば成人病の素としか考えられないようですが、脂肪には別の側面もあります。

「脂肪のカロリーは9kcal/gであり、炭水化物、タンパク質の4kcal/gよりも単位重量あたりの熱量が大きく、動物の栄養の摂取や貯蔵方法として多く利用されている」

というのは、脂肪を栄養貯蔵の手段として考えた見方ですが、脂肪の存在意義はそれだけではありません。

・外傷から臓器を守る

・体温の外部発散を防ぐ

という機能もあります。

寒い時季には、この体温を保つ機能が大事になってくるわけです。

寒いから、生き物は生命力を発揮して、寒さに負けない体を作ろうとするわけで、大変申し訳ないことながら、人間は、そういう時季の動物の命をいただいて食べさせていただきます。

「いただきます」とは、まさにこのことですね。

この「いただきます」という言葉は、英語に該当する言葉が見当たらないので、是非そのままItadaki-mas!を世界語にしたいと私は思うのですが、そのことは今日はさて置きまして、

実際、この時季の牛は美味しいです。北方で育った牛ならなおさらです。

「大寒卵」が美味しいのも同じ理由です。

このことを私は、

寒いは旨い。

と表現させていただいています。

食べないと寿命が縮みますよ(笑い)

追伸

一冊丸ごと「すき焼き大全」とも申すべき本が出ました。

タイトルは『日本のごちそう すき焼き』、平凡社より刊行されました。

この本は、

食文化研究家の向笠千恵子先生が、すき焼きという面白き食べ物について語り尽くした7章と、

全国の、有志のすき焼き店主31人が、自店のすき焼き自慢を3ページずつ書いた部分の二部で構成された本で、

この十年の「すきや連」活動の集大成とも言える本です。私も勿論執筆に加わっています。

是非是非お求めください。

弊店の店頭でも販売しますし、こちらからネットでも購入できます。

是非。

本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて1.802日連続更新を達成しました。

Filed under: すき焼きフル・トーク,色んな食べ物 — F.Sumiyoshi 12:00 AM  Comments (0)

おいしい記憶

キッコーマンさんにパクられた!

2/1の読売新聞を読んだ私は悔しくて仕方ありませんでした。

その日掲載された全面広告は、

「あなたの『おいしい記憶』をおしえてください」エッセーコンテスト

の募集がスタートしたことを報せるものでした。

弊社の「すき焼き思い出ストーリー」にクリソツです。

パクられた!

と一瞬思いましたが、しかし、それはこちらの間違いでした。

パクったのは、こちらだったのです。

『おいしい記憶エッセーコンテスト』は今回が六回目ですから、逆算するとスタートしたのは2009年。

「すき焼き思い出ストーリー」は2010年スタートです。

ま、負けました。

それだけでなく、調べて行って、私は驚倒しました。キッコーマンさんの釈迦のタイトル、いや、社歌のタイトルが、

『おいしい記憶』なのです。

完全に負けています。

この社歌、ご存知でしたか?私は知らなかったので、ひどく驚きました。

で、その作詞家は?

金子みすゞ?

中原中也?

いやいや、

秋元康でした。

A?

K?

B?

うーん。

随分最近の詩人ですねえ。

追伸

一冊丸ごと「すき焼き大全」とも申すべき本が出ました。

タイトルは『日本のごちそう すき焼き』、平凡社より刊行されました。

この本は、

食文化研究家の向笠千恵子先生が、すき焼きという面白き食べ物について語り尽くした7章と、

全国の、有志のすき焼き店主31人が、自店のすき焼き自慢を3ページずつ書いた部分の二部で構成された本で、

この十年の「すきや連」活動の集大成とも言える本です。私も勿論執筆に加わっています。

是非是非お求めください。

弊店の店頭でも販売しますし、こちらからネットでも購入できます。

是非。

本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて1.800日連続更新を達成しました。

Filed under: すき焼きフル・トーク — F.Sumiyoshi 12:00 AM  Comments (0)

ラクトン

先日NHK『あさイチ』で、

「スゴ技Q お手ごろ&うまさ倍増!すき焼き大変身」「お手ごろ牛肉のグレードアップ」

というのを放送していました。

その方法とは、

牛肉をココナツミルクに漬け込むこと、でした。

「上質な霜降り和牛をおいしいと感じる理由のひとつは、香りだと言われています。その香りはラクトンという成分で、ココナツミルクにも含まれています。」

「お手ごろな牛肉をココナツミルクに漬け込むことで、和牛の風味に近づけることができるのです。さらに、ココナツミルクには、糖分や酸が含まれているため、牛肉の保水性を高めて、やわらかくする効果もあります」とのこと。

和牛を調理した時には、ラクトンという有機物質が揮発して来て、ココナッツのような良い香りをさせます。

海外の牛の場合はラクトンがほとんど検知されず、これが和牛の一大特徴なので、この香りのことを「和牛香」と言うこともあります。

で、ココナツミルクに漬け込むと良いと言うのです。この方法が紹介されるのは初めてではなく、たしか以前に『ためしてガッテン』でもこの方法を紹介していました。『あさイチ』と『ためしてガッテン』で放送されたので、今後都市伝説になりそうですねえ。

まあ、元々残念な肉なのだし、ココナツミルクに漬けてマズくなるわけではないので、やってみたい人はやってみても良いでしょう。

しかし、良く肥育された和牛の肉に化けることはありません。それはあくまで「輸入肉のココナツミルク漬け」です。

何故って、まず香りの成分の総量が違います。圧倒的に和牛肉の方が香気成分が多いのです。

それからです、この話しは香りを良くする話しなわけですが、香りだけ良くて、肉本体の旨味が足りない場合、人間はきっと違和感を感じると思います。

予告編だけインパクトがあって、中身のストーリーが「なんだかなあ」な映画みたいなもんです。

そのまま「輸入肉のココナツミルク漬け」として紹介すれば良いものを、すき焼きとして紹介して⇒残念がられるのって、死んだ輸入牛が浮かばれないような気がします。

そこで私からの御提案ですが、牛でなくて豚に使えば良いと思います。

何故って、ラク豚が揮発するから。

追伸

一冊丸ごと「すき焼き大全」とも申すべき本が出ました。

タイトルは『日本のごちそう すき焼き』、平凡社より刊行されました。

この本は、

食文化研究家の向笠千恵子先生が、すき焼きという面白き食べ物について語り尽くした7章と、

全国の、有志のすき焼き店主31人が、自店のすき焼き自慢を3ページずつ書いた部分の二部で構成された本で、

この十年の「すきや連」活動の集大成とも言える本です。私も勿論執筆に加わっています。

是非是非お求めください。

弊店の店頭でも販売しますし、こちらからネットでも購入できます。

是非。

本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて1.799日連続更新を達成しました。

Filed under: すき焼きフル・トーク,ぼやき部屋 — F.Sumiyoshi 12:00 AM  Comments (0)