ラクトン
先日NHK『あさイチ』で、
「スゴ技Q お手ごろ&うまさ倍増!すき焼き大変身」「お手ごろ牛肉のグレードアップ」
というのを放送していました。
その方法とは、
牛肉をココナツミルクに漬け込むこと、でした。
「上質な霜降り和牛をおいしいと感じる理由のひとつは、香りだと言われています。その香りはラクトンという成分で、ココナツミルクにも含まれています。」
「お手ごろな牛肉をココナツミルクに漬け込むことで、和牛の風味に近づけることができるのです。さらに、ココナツミルクには、糖分や酸が含まれているため、牛肉の保水性を高めて、やわらかくする効果もあります」とのこと。
和牛を調理した時には、ラクトンという有機物質が揮発して来て、ココナッツのような良い香りをさせます。
海外の牛の場合はラクトンがほとんど検知されず、これが和牛の一大特徴なので、この香りのことを「和牛香」と言うこともあります。
で、ココナツミルクに漬け込むと良いと言うのです。この方法が紹介されるのは初めてではなく、たしか以前に『ためしてガッテン』でもこの方法を紹介していました。『あさイチ』と『ためしてガッテン』で放送されたので、今後都市伝説になりそうですねえ。
まあ、元々残念な肉なのだし、ココナツミルクに漬けてマズくなるわけではないので、やってみたい人はやってみても良いでしょう。
しかし、良く肥育された和牛の肉に化けることはありません。それはあくまで「輸入肉のココナツミルク漬け」です。
何故って、まず香りの成分の総量が違います。圧倒的に和牛肉の方が香気成分が多いのです。
それからです、この話しは香りを良くする話しなわけですが、香りだけ良くて、肉本体の旨味が足りない場合、人間はきっと違和感を感じると思います。
予告編だけインパクトがあって、中身のストーリーが「なんだかなあ」な映画みたいなもんです。
そのまま「輸入肉のココナツミルク漬け」として紹介すれば良いものを、すき焼きとして紹介して⇒残念がられるのって、死んだ輸入牛が浮かばれないような気がします。
そこで私からの御提案ですが、牛でなくて豚に使えば良いと思います。
何故って、ラク豚が揮発するから。
追伸
一冊丸ごと「すき焼き大全」とも申すべき本が出ました。
タイトルは『日本のごちそう すき焼き』、平凡社より刊行されました。
この本は、
食文化研究家の向笠千恵子先生が、すき焼きという面白き食べ物について語り尽くした7章と、
全国の、有志のすき焼き店主31人が、自店のすき焼き自慢を3ページずつ書いた部分の二部で構成された本で、
この十年の「すきや連」活動の集大成とも言える本です。私も勿論執筆に加わっています。
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本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて1.799日連続更新を達成しました。
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