センター試験の夜に

読んでいて「すき焼き思い出ストーリー」だなあ、と思いました。
人気急上昇中の若手落語家・立川吉笑さんのインタビューの中の一件です。
「ちんや」では、すき焼きにまつわる思い出話しをお客様に投稿していただき、ネットで公開しておりまして2015年にはそれを纏めた本も出しましたが、吉笑さんの一件も「すき焼き思い出ストーリー」だなあ、と私は思いました。
さて、吉笑さんの思い出のすき焼きは、
「センター試験の1日目を終えた夜に」「数学の出来が壊滅的だった僕を慰めるための外食だった」そうです。
「シメのご飯が出てくるのがやけに遅く、糸こんにゃくの切れ端でご飯を食べなきゃいけなくなった。白ご飯をかきこむ父親の姿がよみがえってなんだか悲しくなった」
「自分も白ご飯をほおばりながら「頑張って親孝行しよう」と考えたことまで思い出した。」
「気づいたら今、とても悲しい気持ちになっている。記憶の力ってすごい。」
人を慰める為のすき焼きというのは、これまでの「すき焼き思い出ストーリー」に登場しなかった、新しいパターンですが、ご家族の気持ちは良く分かりますね。
舌の記憶力って本当にすごいと私も思います。

追伸
令和の新時代に向け、「ちんや」は「肉のフォーティエイト宣言」を致しました。ご理解・ご愛顧賜りたく、お願い申し上げます。

Filed under: すき焼きフル・トーク — F.Sumiyoshi 12:00 AM  Comments (0)

デリカシー

取引先の銀行が出している雑誌に、大学同期の噺家・立川談慶君がコラムを連載しています。題して、
「人生、なんとかなる!」
もう48回も続いていますから、ご立派と思うと同時に、銀行の雑誌で「なんとかなる」というのは、実に在り難い銀行だと思う次第ですが、それはさて置きまして、今回の御題は、
「金持ち」より「デリカシー持ち」 
同期君曰く、
・落語は、口調と顔の表情だけで話を展開させるもの
・落語は、高度なデリカシーを持たないと把握できないもの
・江戸っ子のデリカシー気質が落語という芸を進化させた
江戸っ子というと、粗暴なイメージを持つ人も多いかと思いますが、実は他人の気持ちを慮るよう訓練されていました。
長屋というプライバシーが保てない所に密集して住んでいたから、自然とそう訓練されたわけです。「聞こえたけど聞こえないふり」「見たけど見てないふり」もそれですね。
同期君によれば、彼は修業時代に談志師匠に対して、そういったデリカシーのある対応が出来なかった為に9年半も前座にとどまったんだとか。だとしたら、実に有益な修行期間だと思います。
「金持ち」より「デリカシー持ち」
至言と思います。

追伸
令和の新時代に向け、「ちんや」は「肉のフォーティエイト宣言」を致しました。ご理解・ご愛顧賜りたく、お願い申し上げます。

Filed under: ぼやき部屋 — F.Sumiyoshi 12:00 AM  Comments (0)

交代

浅草料理飲食業組合の定期総会に参加しました。
今回、10年間組合長を務められた「どぜう飯田屋」の飯田龍生さんが退任され、浅草うまいもん「あづま」の染谷孝雄さんに交代されました。
飯田さんの永年のご努力に心より御礼申し上げると共に染谷さんのご活躍に期待します。

追伸
令和の新時代に向け、「ちんや」は「肉のフォーティエイト宣言」を致しました。ご理解・ご愛顧賜りたく、お願い申し上げます。

Filed under: 浅草インサイダー情報,飲食業界交遊録 — F.Sumiyoshi 12:00 AM  Comments (0)

こんにゃくの日

慶應義塾の雑誌『三田評論』の、5月号の「社中交歓」のテーマは、こんにゃくでした。
理由は5月29日が、「こ(5)んに(2)ゃく(9)」で、「こんにゃくの日」だから。
ご、語呂合わせでした、か・・・
もっとも、この日は、全国こんにゃく協同組合連合会と一般財団法人・日本こんにゃく協会とが1989年に正式に制定したとかですけどね。
さて、5月号に載せた理由は「なんだかなあ」でしたが、こんにゃくはすき焼きに大いに関係ありますから、勿論拝読しました。
「社中交歓」は毎回4人の塾員が同じテーマで投稿するのが「お約束」ですが、今回は、
・こんにゃくの供給側=群馬県の方
・こんにゃくの消費側=山形県の方
・こんにゃくにまつわる文学について
・こんにゃくの栄養について~栄養士の方
というメンバーでした。
群馬県がこんにゃくの産地であることは知っている人が多いかと思いますが、産地=消費地ではなく、最大の消費者は山形県民です。「芋煮」にも必ず入りますからね。
山形に続くのは、青森、秋田と東北です。寒い土地なのに、ほとんどカロリーの無いこんにゃくを好むとは実に不思議です。食べ物の世界は基本、合理的だと思うのですが、理由が分からないこともあります。

追伸
令和の新時代に向け、「ちんや」は「肉のフォーティエイト宣言」を致しました。ご理解・ご愛顧賜りたく、お願い申し上げます。

Filed under: 色んな食べ物 — F.Sumiyoshi 12:00 AM  Comments (0)

夜間工事

このところ不眠ぎみです。
夜中に起きてしまう原因は、近隣の工事。
元号またぎの連休が終わり、今年の夏休みまでに工事を済ませようと思うと、工事現場は今が佳境なのです。来年夏完成では遅過ぎですからね。今がピークなんです。
で、夜間工事です。
浅草は日中、人や車の往来が激しいので、大型の機材が入り込めないです。いきおい夜間工事になるのです。住宅地でそんなことをしたらクレーム殺到でしょうが、浅草に住む人達は、これに慣れています。
が、慣れているとは言っても、やはり起きてしまいます。
起きないまでも、睡眠が浅くなりがちです。
夜良く寝ていないから、日中眠いです。困るなあ。
まったく、早く終わらないかな、オリンピック。

追伸
令和の新時代に向け、「ちんや」は「肉のフォーティエイト宣言」を致しました。ご理解・ご愛顧賜りたく、お願い申し上げます。

Filed under: ぼやき部屋,浅草インサイダー情報 — F.Sumiyoshi 12:00 AM  Comments (0)

秘訣②

昨日の「秘訣」の話しの続きです。
老舗の取材をしたいと色々な方が見えます。
139年店が続いた「秘訣」を言え、と。
そんなこと分かれば誰も苦労はしないと思うのですが、お答えしています。
割り下の味が大事なのは当然ですが、それだけでなく、すき焼き屋の場合、割り下と具材のバランスが大事です。具材とはもちろん肉ですね。
まず昨日申しました通り、
・割り下の味を多くのお客様の舌が認知していること
が極めて重要です。浅草は20世紀に、関東大震災、太平洋戦争、1970年代の衰退と3回の危機を経験しましたが、どの場合でも復興できたのは、味を支持してくれるお客様がいて下さったからだと思います。
しかも、その「お客様」とは、一世代の特定の方ではありません。
お爺さま、お婆さま、お父様、お母さま、お孫さん
と家族ぐるみで複数世代にわたって、「ちんや」の味を認知して下さっている方がおいいで、全体を「お客様」と言っています。
だから、お爺さま・お婆さまが、もし亡くなっても、次の世代の方が、お正月・お彼岸などの機会に見えて下さるのです。味を変えるということは、その方々のご期待を裏切ることになります。その方々に対して、来ないでいいよ、と言うも同然ですね。
だから、割り下の味を、そう簡単には変えられないのですが、ここで困るのは、具材の質が変わると、割り下が同じでも鍋全体の味が変わってしまう、ということです。
そして、実際、平成の30年間に、肉の質が変わりました。
平成時代に経済性を重視する生産方法(短期肥育)が広まった結果、融け方が悪い脂の付いた肉が増えてしまいました。融け方が悪い=脂の融点が低い=食べるとモタれる、という図式ですね。
その結果、以前より仕入れを厳格にやって行かないと、こちらに合う肉が買えなくなりました。
で、私は2017年に「適サシ肉宣言」を、さらに今年「肉のフォーティエイト宣言」をして、仕入れの基準を明確化しました。
すき焼きの場合、味だけ守っていてもダメだという話しです。
「秘訣」という感覚ではないですけどね。
こうしないと、以前から見えているお客様に違和感を与えてしまうので、そうしている、という感覚です。ご参考にならず、すみません。

Filed under: ぼやき部屋,今日のお客様 — F.Sumiyoshi 12:00 AM  Comments (0)

秘訣

老舗の取材をしたいと色々な方が見えます。
139年店が続いた「秘訣」を言え、と。
そんなこと分かれば誰も苦労はしないと思うのですが、お答えしますと、
・割り下の味を守ること
は当然大事です。
関西の出汁文化に対して、関東はタレ文化と言われますが、そこがポイントであることは当然です。
が、それだけでは足りないと思います。
・その割り下の味を多くのお客様の舌が認知していること
が極めて重要です。ここは技術というより、マーケティングの話しになるのかもしれませんが、多くのお客様が、「ちんや」の味を覚えていて下さることが極めて重要です。
浅草は20世紀に、関東大震災、太平洋戦争、1970年代の衰退と3回の危機を経験しましたが、どの場合でも復興できたのは、店を支持してくれるお客様がいて下さったからだと思います。
さらに申せば、その「お客様」とは、一世代の特定の方ではありません。
お爺さま、お婆さま、お父様、お母さま、お孫さん
と家族ぐるみで複数世代にわたって、「ちんや」の味を認知して下さっている方がおいいで、全体を「お客様」と言っています。
だから、お爺さま・お婆さまが、もし亡くなっても、次の世代の方が、お正月・お彼岸などの機会に見えて下さるのです。
よく質問をいただくのは、
世間の味覚の変化に合わせて、「ちんや」さんも味を変えますか?
という質問です。
世代を超えて味を認知してくれているお客様がいないのであれば、味を変える手もあるかもしれません。
しかし、世代交代しても同じ味を支持して下さる方がおいでなのであれば、味を変えるということは、その方々のご期待を裏切ることになります。その方々に対して、来ないでいいよ、と言うも同然ですね。
世間の味覚の変化に合わせて、味を変えますか?
という質問は、その店に世代を超えた支持者がいないことを前提にした質問で、質問者の理解の浅さが、それですぐ分かるのですが、まあ、そこは面と向かっては言わないことにして、ブログに書くようにしています。悪しからず。

追伸
令和の新時代に向け、「ちんや」は「肉のフォーティエイト宣言」を致しました。ご理解・ご愛顧賜りたく、お願い申し上げます。

Filed under: ぼやき部屋,今日のお客様 — F.Sumiyoshi 12:00 AM  Comments (0)

御会食場

とらんぷさんが来日されました。
令和最初の国賓だとかで、宮中晩餐会も開催されたそうです。
では令和から四代さかのぼる明治最初の宮中晩餐会は、どういう様子だったのでしょう?
それを研究した本が、
『天皇のダイニングホール 知られざる明治天皇の宮廷外交』です。
この御本は、山﨑鯛介さんなど何人かの学者のさんの共著。日本で宮中晩餐会というものが成立した頃、明治天皇と昭憲皇太后が、どのように外国からの賓客や国内の要人をもてなしたかを、「建築」「テーブルアート」「人物」という三方面から描いた御本です。
実はこの御本には、『くらべる値段』で「ちんや」を採り上げて下さった、おかべ・たかしさんが「編集協力」で製作に参加されていたので、拝読したのでした。
おかべさんは明治天皇の生涯を描いた絵画を展示している「聖徳記念絵画館」のオフィシャルガイド本を編集した経験がおありで、当時の図版に精通しておいでで、そうした図版がこの御本にふんだんに使われているので、この御本は、学者さんの本ではあるのですが、カラフルで読み易い御本でした。
さて、この御本に詳しく書かれている通り、明治最初の宮中晩餐会の主な会場は「赤坂仮御所御会食場」でした。
「御会食場」は宮廷外交の場として使われた後、大日本帝国憲法を制定する会議の場所として使われ、その為「憲法記念館」と呼ばれていた時期もありましたが、昭和22年からは明治神宮の結婚式場として使われるようになりました。
それが「明治記念館」です。
その「明治記念館」さんで、先日「国際観光日本レストラン協会」の関東支部総会が開催されたので、私は久しぶりに訪問しました。
オーソドドックスなお料理で、安心して食べられるのは良いですね。ご馳走様でした。

追伸
令和の新時代に向け、「ちんや」は「肉のフォーティエイト宣言」を致しました。ご理解・ご愛顧賜りたく、お願い申し上げます。

Filed under: 憧れの明治時代,飲食業界交遊録 — F.Sumiyoshi 12:00 AM  Comments (0)

七回忌

お若い時は毎月のように、ご夫婦で見えていた常連さん、
奥様が亡くなられて、もう、七回忌だと言う。
ご法事のご予約ありがとうございます。
遺影という形であっても、奥様がまた見えて下さるのは嬉しいことです。

追伸
令和の新時代に向け、「ちんや」は「肉のフォーティエイト宣言」を致しました。ご理解・ご愛顧賜りたく、お願い申し上げます。

Filed under: 今日のお客様 — F.Sumiyoshi 12:00 AM  Comments (0)

古美術

「ちんや」の開化絵を取材したい、という御依頼がありました。古美術の番組を創るんだとか。
古美術は身近なもので、趣味として気軽に始められる
というテーマだそうで、結構と思います。
「ちんや」の開化絵は趣味というより、店の実用なので、そこは少し違うのですが、博物館・美術館の美術より身近であることは間違いないです。
私が明治時代の開化絵を集めだしたのは、20年ほど前のこと。それ以前は客室に日本画をかけていました。祖父が集めたものでした。
生前はそれなりに知られた画家さんの絵もあるのですが、時間が経過し、後の時代になっても有名であり続ける画家さんとなると、ごく少数です。時代を超えて有名なのは、大観とか玉堂くらいでしょう。
そうでもない絵は、知識のないお客様から見ると、
ただの富士山の絵、
ただの鶴の絵、
ただの鯉の絵、
にしか見えず、面白がっていただけなくなりました。
で、明治の開化絵に転換しました。
中には、渋沢栄一が設立した第一国立銀行の絵もあります。お札が出回れば話題にできますから、在り難いことだと思っています。
「ちんや」の開化絵はネットでも見られますから、こちらからどうぞ。

追伸
令和の新時代に向け、「ちんや」は「肉のフォーティエイト宣言」を致しました。ご理解・ご愛顧賜りたく、お願い申し上げます。

Filed under: 憧れの明治時代 — F.Sumiyoshi 12:00 AM  Comments (0)