秘訣②
昨日の「秘訣」の話しの続きです。
老舗の取材をしたいと色々な方が見えます。
139年店が続いた「秘訣」を言え、と。
そんなこと分かれば誰も苦労はしないと思うのですが、お答えしています。
割り下の味が大事なのは当然ですが、それだけでなく、すき焼き屋の場合、割り下と具材のバランスが大事です。具材とはもちろん肉ですね。
まず昨日申しました通り、
・割り下の味を多くのお客様の舌が認知していること
が極めて重要です。浅草は20世紀に、関東大震災、太平洋戦争、1970年代の衰退と3回の危機を経験しましたが、どの場合でも復興できたのは、味を支持してくれるお客様がいて下さったからだと思います。
しかも、その「お客様」とは、一世代の特定の方ではありません。
お爺さま、お婆さま、お父様、お母さま、お孫さん
と家族ぐるみで複数世代にわたって、「ちんや」の味を認知して下さっている方がおいいで、全体を「お客様」と言っています。
だから、お爺さま・お婆さまが、もし亡くなっても、次の世代の方が、お正月・お彼岸などの機会に見えて下さるのです。味を変えるということは、その方々のご期待を裏切ることになります。その方々に対して、来ないでいいよ、と言うも同然ですね。
だから、割り下の味を、そう簡単には変えられないのですが、ここで困るのは、具材の質が変わると、割り下が同じでも鍋全体の味が変わってしまう、ということです。
そして、実際、平成の30年間に、肉の質が変わりました。
平成時代に経済性を重視する生産方法(短期肥育)が広まった結果、融け方が悪い脂の付いた肉が増えてしまいました。融け方が悪い=脂の融点が低い=食べるとモタれる、という図式ですね。
その結果、以前より仕入れを厳格にやって行かないと、こちらに合う肉が買えなくなりました。
で、私は2017年に「適サシ肉宣言」を、さらに今年「肉のフォーティエイト宣言」をして、仕入れの基準を明確化しました。
すき焼きの場合、味だけ守っていてもダメだという話しです。
「秘訣」という感覚ではないですけどね。
こうしないと、以前から見えているお客様に違和感を与えてしまうので、そうしている、という感覚です。ご参考にならず、すみません。
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