住吉史彦のマニフェスト

 先週、2年前の中国製冷凍毒ギョーザ事件の犯人が逮捕されたそうです。そのことを伝える新聞記事には、中国人の犯人の給料のことも書いてありましたが、そこを読んで驚いた人も多いと思います。犯人の月給は13.000円だったそうです。月給です。日給じゃなくて。しかも、日に13時間働かされるそうです。

  そんなに安い給料で、搾取的に働かされている人間が作った食べ物を、私は食べたいと思いません。コーヒー店の一部には、「フェア・トレード」の原則で、労働者を搾取的に待遇している農園でとれたコーヒーは、味が良くても取り扱わない、というところがあります。今回問題になった、ギョーザ・メーカーについても、そういう発想で、点検してみる余地はなかったのでしょうか。「作業工程を監視カメラで監視しているので、安全だ」という論法でしたが、カメラで監視しないといけないほど、恨まれないようにするのが、先ではなかったのでしょうか? 

  私は、現代の政治というものに興味をほとんど持っていない人間ですが、ここでいきなり政治的発言をしてしまいたい、と思います。

  食べ物と医薬品、つまり人間の口に入るものを、完全な自由貿易の下に置くことには賛成できません。安すぎる食品の輸入は、問題があり過ぎます。

  不肖・住吉史彦は経済学を学んだことのある人間ですので、自由貿易が経済に富と成長をもたらすことを識っています。たしかに今回も、問題になったギョーザ・メーカーのおかげで、日本人は安いギョーザを食べることができていました。便利なことは便利です。

  しかし、そのようにして経済の全部が成長する必要があるのでしょうか?食べ物だけは、経済成長の埒外に置いておいても良いのでは、と私なんかは思います。それに、ここまでして、便利にギョーザを食べる必要が本当にありましょうか?

  「何言ってんの? 不景気なんだから、少しでも生活費を切り詰めたいんだよ! 安いギョーザは必要だよ!」とおっしゃる方には、次のように申し上げたいと思います。そういう御考えが、そのままデフレ圧力になって、日本の農家の方や、食品産業の方を苦しめ、やがてデフレがデフレをよんで、結局あなたがお勤めの会社にも、災いを及ぼしますよ! と。

  本日今ここに、『搾取的農場・搾取的工場で作られた、食べ物の自由貿易反対党』の立党を、勝手に宣言し、私が総裁兼幹事長兼政調会長に、勝手に就任します・・・

 なんちゃって、嘘ぴょーん! 実は、この話しはエイプリル・フールでした!

 「え? 住吉、今日は4/1じゃないぞ! バッチリ立党宣言したんだし、俺は共感したから、入党させろよ!」

  ありゃあ、日付間違えましたか。まずいなあ、それは。このブログの中でしか活動する気ありませんから、党員は一人で充分ですよ。街宣とかする予定もありませんし。うーん、ご入党の件はチョッと考えさせてください。

 本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。浅草「ちんや」六代目総裁の、住吉史彦でした。

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花より なんとか②ー隅田川きもの園遊会

 絶好のお天気に恵まれ、満開の桜の下「隅田川きもの園遊会」が開催されました。この「園遊会」は、東京の和装関係の団体が主催するイベントで、今年で16回目を迎えました。着物をお召しになって参加された方は、野点のお茶がいただけたり、抽選会に参加できたりと楽しい内容のイベントです。

  詳しいことは、このブログの3/25号に書きましたが、「ちんや」が加入している「浅草うまいもの会」は、例年この「園遊会」を後援・協賛しています。「浅草うまいもの会」の広報宣伝委員長である私は、「園遊会」の受付で配布させていただく、「浅草うまいもの会」マップの納入を兼ねて、会場の隅田公園へ出かけてきました。

  今年も大勢の着物の女性が集まって盛況でしたが、運営スタッフの皆さんは大変そうでした。実は、隅田公園の入り口(=吾妻橋のたもと)にある、水上バスの乗船場が、現在改築工事中です。それにともなって、臨時の仮設乗船場を隅田公園の中に造ったので、その分だけ公園が狭いのです。その狭い部分めがけて、花見の人・スカイツリー見物の人・きもの園遊会の参加者、それから水上バス「お花見クルーズ」の船客が殺到するので大変な混雑になっていました。

  着物姿の「園遊会」運営スタッフの皆さんが、汗をかきかき、雑踏の誘導にあたっておられる様子に、「こりゃ、大変だ!」とお見受けしつつ会場を後にしました。その流れかどうかわかりませんが、「ちんや」の店も忙しく営業させていただきました。

 それにつけても、やはり良いものですねえ、着物の女性は。じゃなくて、桜の花は。

  本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございます。浅草「ちんや」六代目、住吉史彦でした。

*「隅田川きもの園遊会」については、こちらです。 

*「浅草うまいもの会」については、こちらです。 

Filed under: 浅草インサイダー情報 — F.Sumiyoshi 10:21 AM  Comments (0)

出番は無いんでしょうか?ーしたまち演劇祭

  台東区役所観光課のM氏から電話があり、8〜9月に予定されている、「第一回したまち演劇祭」のことで住吉さんにお話ししたいことがある、と言ってこられました。

  「演劇祭のことでお話しねえ、ということは、俺に出演依頼か。でも劇場にはチャンとした花道を造作してくれないと俺は出ないぞ。もちろんスッポンも作ってくれなきゃダメに決まってるからね。それと、宙乗りをやってもらいたいなら、ギャラは弾んでもらないと困るよ。」そう言ってやろうと思いつつ、待ち構えておりますと、用件はゼンゼン違いました。

  演劇祭のプログラムやチラシに「浅草うまいもの会」として協賛広告を出して欲しいとおっしゃるのです。私は、去年から「浅草うまいもの会」の広報宣伝委員長をしているので、こうした用談も、その仕事の内なのです。

  なんでも、広告を出してくれれば、「浅草うまいもの会マップ」を演劇祭のお客様に配布して下さるとか。そうです、台東区役所は結構、営業努力をしているのです。こういう商談を民間にもちかけること自体が、ある意味でイベントの事前告知にもなりますよね。良いことです。それに台東区アートアドバイザー会議で御一緒する、観世葉子さんが、この演劇祭の実行委員でもあるので、お請けしたいお話しと思いました。

  それでは、「浅草うまいもの会」の今度の会議で、K子会長・役員さん方におはかりして進めることにしましょう。そうお話しすると、M氏も観光課長氏も上機嫌で帰ろうとするではありませんか。

  チョ、チョっと、スミマセン、お帰りになる前にうかがいたいんですが、住吉海老彦丈に出番は無いんでしょうか?

 本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。

*「したまち演劇祭」ついては、こちらです。

*「浅草うまいもの会」については、こちらです。

花より なんとかー墨堤さくらまつり

 隅田公園の「桜橋」のたもとで開催されている、「墨堤さくらまつり」に出かけました。この時期、向嶋墨堤組合(=向嶋花柳界の料亭さんの組合)さんが、茶店を出していて、各料亭さんが日替わり当番で、呈茶のサービスに当たっているのですが、4/1は、旧知のA子女史の御店「きよし」さんが当番だったのです。

 この所なにかと忙しく、ブログを始めてからは、さらに時間がないので、向嶋はすっかりご無沙汰していたのですが、「4/1がウチの当番なのよ。お顔を見せて下さらない?」と言われれば是非も無し。「桜橋」は「ちんや」から歩くと、7〜8分かかるのですが、急ぎ足で茶店へ向かいました。

「あら! 成田屋さんじゃないの。ずいぶん、お久しぶりねえ。あい変わらず、いい男ねえ。」などと、チヤホヤされることをイメージしつつ、進みましたが、しかし、たどりついてみて、「げげっ 朝一なのに、けっこう、混んでいる・・・・・」

 考えてみれば、天気は良くて、桜は花盛り(八〜九分)だし、東京スカイツリーは、ついに東京タワーの高さを超えたし、すいているハズもありません。(隅田公園は東京スカイツリーが良く見える、絶景ポイントなのです。だから、この時期、桜とスカイツリーの両方を見ることができるのです。)

忙しそうな、お姐さんたちに遠慮して、草々に退散しました・・・

本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。

*向嶋墨堤組合さんについては、こちらです。

*「きよし」さんについては、こちらです。

Filed under: 浅草インサイダー情報,飲食業界交遊録 — F.Sumiyoshi 10:12 AM  Comments (0)

夜桜?見物

 昨晩、店の仕事が終わった後、ヨメと隅田公園へ夜桜見物に行きました。と言うか、正確に言うと、夜桜見物をしている人達を見物に行きました。平日の方が、サラリーマン諸氏がご機嫌にワーワーと飲んでいる姿が見られるので、こちらも楽しい気分になります。それを見に出かけたわけです。桜そのものは、そういうわけで酔客のカーニバルが繰り広げられていますから、良く見えませんでしたが、七分〜八分咲きといったところでしょうか。

  今回良く見えなくても、いいんです別に。私はどちらかと言うと、ハラハラと散っている桜の方が好きなのです。それに、桜が散る頃―4月の2週目あたり―になると、陽気もだいぶ暖かくなってきます。だから、そういう暖かい日の午後、時間が出来たら、もう一度隅田公園へ出かけ、桜が散るのを眺めつつ、ボケーっとします。これがとても良い気分ですから、お勧めです。

  今の時期の公園は、上に書いたような世界なので、「ヨッパライは嫌い!」という人には、今の時期はお勧めできませんね。それに、まだ外はかなり肌寒いですよ。だから、「どうしても、今花見をするんだ!」という方は、サクっと公園を巡回した後、浅草の飲食店に入りましょう。冷えた御体には、すき焼きが良いと思います。

  そういうお客様のために、この時期、「ちんや」4階の、エレベーターを降りた真正面のところに、楊洲周延の「浅草公園遊覧之図」という開化絵をかけています。洋傘をさした着物の美女の背景に、満開の桜が描かれていて、綺麗です。店内で少しでも春の風情を感じていただければ、と思います。

  それから、もう一つ春の風情を感じていただく作戦が、「ちんや」のトイレ(の個室の中)にあります。でも、この作戦はブログに書いてしまうとつまらないので、「サプライズ」ということで、ヨロシクお願いします。

 「あい変わらず、住吉は意地が悪いなあ! つまらない、とか言わないで教えろよ!」

うーん、考えておきますけどねえ、このブログでは、「意地悪キャラの住吉」が確立しつつありますからねえ、今すぐキャラ設定の変更は難しいかもしれないなあ。

本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。

*「ちんや」所蔵の開化絵を見たい方は、こちらです。

開化(ひらけ)た保健所

 「台東区食品衛生自主管理推進店」登録制度に「ちんや」が登録していただけることになり、台東保健所の方が、ウチの店の写真を撮りに見えました。

 「え? 保健所が、「ちんや」の店の写真を撮りに来た? 保健所がそんなことするの?」

  そうなんです。このブログの3/12の号にも書きましたが、この制度に登録が認められると、衛生自主管理をしている店として、台東保健所のホームページに載ります。店のPR文も、短いですが、載せてもらえます。そのお店紹介コーナーに使う写真を撮りに見えたのです。

  このように台東区の保健所は開化(ひらけ)ているのです。他の地区の、開化(ひらけ)ていない、保健所の皆さんも、台東区のようにして下さったら、もっと民間業者が協力的になると思いますよ。実際、浅草料理飲食業組合では、II田組合長以下、この制度の普及に協力体制を組んでいくことになっていて、私は、その担当委員長として、PRにこれ努めている次第です。

  あ!でも、すき焼き屋がない地区の、保健所の皆さんは、開化(ひらけ)るのは、難しいかもしれないなあ。だって、昔から言いますからねえ、「牛鍋喰わねば開化ぬやつ」って。(出典:仮名垣魯文『安愚楽鍋』、明治4年)

 本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。

*「台東区食品衛生自主管理推進店」登録制度については、こちらです。

ドギーバッグ

今日は、いたってカタい、食品衛生の話しです。

 3/27の読売新聞15面に『残した料理をドギーバッグに。「持ち帰りOK」の店が増加』という記事が載っていました。食中毒が心配で持ち帰りを断る店が多いですが、最近は環境保護の観点・Mottai-nai精神から、「持ち帰りOK」の店が増えているそうです。「残した料理 お持ち帰り頂けます」と書かれたステッカーを、NPO法人の「ドギーバッグ普及委員会」なる団体が、客の自己責任での持ち帰りに賛同する飲食店に配布しているとのこと。現在は約200の飲食店がステッカーをはっているそうです。

 たしか福岡市教育委員会が、小中学校の給食の食べ残しの持ち帰りを、衛生管理の難しさを理由に禁止していることについても、保護者や市議会から異論が出ている、と聞きました。

 食品衛生と食品の「持ち帰り」―これは二律背反の、とても難しい問題です。「ドギーバッグ普及委員会」さんは、「安全に持ち帰るための注意点」という基準を示していらして、たしかにその通りやれば、食中毒の危険は回避できそうですが、それを実際に店で実行するのが難しいのです。

 例えば、「ちんや」のお座敷で、お客様がお肉をたくさん注文しすぎて、余らせてしまった場合、生の状態でのお持ち帰りは、断固お断りしています。肉というのは、元々は生き物の牛で、それを解体したものですから、100%完全に清潔なものではあり得ません。そういう物であっても、低温で管理しているので、細菌が増殖しないので⇒食中毒を起こさないのです。その冷やしてあった肉を、座敷の中の暖かい空間に出し、長時間放置しますと、肉の上は、細菌軍の天下になります。それでも食べることができるのは、鍋の中で火にかけ、熱でその細菌を殺菌するからです。その現実をご認識ください。

 だから、その肉をお持ち帰りになりたい時は、まず鍋の中で火にかけます。殺菌します。でも、持ち帰りできるようにするのは、それだけで完璧ではありません。火を通した肉を、充分に冷ましてから容器に詰める必要があります。火にかけたものの、100%完全に殺菌できていなければ、温かいままドギーバッグに詰めた時に、またそこで菌が再度増殖してしまうのです。それで、冷ます必要がありまして、売られている弁当は皆、この「放冷」という工程を踏んでいます。

 「ドギーバッグ普及委員会」さんの「安全に持ち帰るための注意点」にも、この「放冷」のことは載っています。客席には、お客様が外から持ち込んだ、お荷物などがあって、これは衛生的でない(=細菌がついてるかもしれない)ものですから、念をいれて「放冷」もしたいところです。

 問題なのは、この「充分に冷ます」間、実際問題、お客様がごゆるりと待っていただけるか、ということです。世の中にはセッカチな人も多いです。食べ終わったら、とっとと帰りたいのでしょう。『なにモタモタしてるんだ!俺の自己責任でいいんだから、早く肉を渡してくれよ!」と怒り出す方もいます。基準を実際に店で実行するのが難しいのです。

 このように、充分な食品衛生の知識のない方についても、「自己責任原則」で大丈夫なんでしょうか?食品衛生の、最低限必要な知識を持つには、やはり、丸一日程度の講習を受ける必要がありますから、一般の方には容易でないでしょう。

 「ちんや」では、とうてい食べきれなそうな、肉のご注文があった場合、わざとその全部をお出しせずに、「残りは後から持ってきます」と言っておいて、やはり食べられない様子なら、残りの分を出すのをやめることがあります。持ち帰りのことで論争になると面倒だからです。 

 今回記事になったNPOさんはもちろん違うのですが、「客なのだから、注文したいだけ注文して良いだろう」「持ち帰りたいだけ持ち帰って良いだろう」という「自己責任」なら、私は違和感があります。ですから、「ちんや」では、お客様に対しても、食品衛生の立場から、カタいことを言わせていただく場合もございます。悪しからず、ご了承下さい。

 それから、この話しの最後に何か、おかしいオチが付くことを期待されていた方にも、悪しからず。今度また、別の機会に笑わせてさしあげます。

 本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。

*読売新聞の記事は、こちらで読めます。

Filed under: すき焼きフル・トーク,ぼやき部屋 — F.Sumiyoshi 11:29 AM  Comments (0)

うーむ、侮れん!ー千成亭さんの味噌漬

 日本橋高島屋で開催されている、「第22回近江展」に行ってきました。その目的は、近江牛のすき焼きで有名な、彦根の「千成亭」さんが、この催事に出店しているからです。「千成亭」のU田専務は、「すきや連」メンバーで、良く参加して下さるのですが、3/3の第5回例会(会場:「太田なわのれん」さん)はご都合がつかず、ご欠席でした。久しぶりにお目にかかれるかも、と思って出かけたのですが、店の人に聞くと、今回の出店は、別の役員さんのご担当とかでご不在でした。ザンネン。

  そこで気を取り直し、勉強のため、何かお肉を買っていくことにしました。ひと通り品定めした後、購入したのは、牛肉の味噌漬けです。彦根藩が江戸時代に、贈答用に作らせていた味噌漬けは、日本の牛肉料理のさきがけとも言うべきもので、なんでも、井伊の殿様から将軍家に「お薬」として献上されていたと聞きます。そうです、彦根は牛味噌漬けの元祖なのです。これを買わない手はありません。

  さて、味噌漬けを買い求め、浅草に戻った後は、当家の御肉奉行所において、「御肉あらため」を断行。肉から味噌をそぎ落として凝視。

 「この肉は、モモであるか?」「御意。モモにございます。」「こいつは、バラであろうかのう?」「まさしく御意。」「ああ!お奉行様、これはヘレでございます!」「なんと!ヘレを味噌漬けに入れたと申すか!」

 うーむ、千成亭直弼っ、さすがは徳川直参、侮ると返り討ちに会いそうじゃのう!

 本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。

 *「千成亭」さんについては、こちらです。

*「すきや連」ついては、こちらです。

Filed under: すき焼きフル・トーク,飲食業界交遊録 — F.Sumiyoshi 10:00 AM  Comments (0)

若柳牛⇒猪苗代町産牛No. 11739-43101

 昨日(3/27)から、「今週の特撰牛」の牛が変わりました。先週まで使っていた、「若柳牛」(宮城県栗原市産)から、福島県猪苗代町産牛(個体識別番号:11739-43101)に変わりました。先週も評判は良かったようですが、今週も旨い牛だと思います。

  実は、昨年の12/10から、「ちんや」では、個体識別番号の「全組表示」を実施しています。番号を、どこか店内の一箇所に集中して表示しておくのでなく、お客様各組ごとに、番号と、それだけでなく、「ちんや」の仕入方針(考え方)も記載した書面をお渡し申しています。お客様から「この牛の産地はどこ?」と聞かれてから、調べてお答えするのでなく、こちらから積極的に書類を作って、肉と一緒に御席へお持ちすることにしています。今週の、特撰福島県産牛だけでなく、全てのメニューについて、これを実行しております。是非、ご来店の節は、ご確認下さい。(ただし、年末年始だけはモーレツに忙しいので、ご勘弁いただきました。)

 また、この書類はお持ち帰りいただくようにしています。日付が記入されていますので、ご来店の記念になると思います。例えば、「今は結婚された御夫婦が最初にデートした場所は「ちんや」で、○年○月○日のことだった。」あるいは、「今は天国に昇ったお爺ちゃんも参加して、ご家族3世代が全員揃って最後に食事した場所は、「ちんや」で、○年○月○日のことだった。」このように、後から思い出していただくのに、日付入りの書面は、あった方が良いと思っています。

 それと営業上、店舗名(=「ちんや」)入りの書類を渡しすることは、とてもとても大事なのです。お客様の中には、「店の中に入って見えた時、あれ?なんで銅鑼たたくのをやめちゃったの?」と、お尋ねになる方が、たまにおいでです。(本当です!)店名が、その方の頭の中で、ゴチャ混ぜになっているのです。

 「お客サマ! 銅鑼をたたく、すき焼き屋は「米久本店」さんですから! 区別して覚えて下さいネ! ヨロシクお願いしますヨ!」

  なんていうことにならないように、牛の番号と仕入れ方針と、それから店舗名入りの書類をお渡しして⇒お持ち帰りいただいています。

 本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。

 「今週の特撰牛」については、まずこちらを開け、「お品書き」の中の「すき焼・しゃぶしゃぶ」>「今週の特撰牛」の順で開けて下さい。

東京府第一大区

ご夫婦でふらりと見えて、二代目歌川国輝の「東京府下第一大区尾張街通煉化石造商法繁盛之図」という、開化絵がかかった個室をご利用になったお客様から、「この絵の題の、第一大区って何?」とご質問があったのですが、恥ずかしながら不勉強で、その場では即答できませんでした。

代わって、当サイト上でご回答申し上げます。ご予約無しで見えたので、ご芳名がわかりませんが、このサイトをご覧いただけていれば、幸いです。

  明治4年に新政府は、新しい地方制度を定め、各府県の下に大区を置き、大区の下に小区を置きました。例えば「第9大区6小区」などという具合に、数字で行政区域があらわされました。「東京府第一大区」というのは、それです。おおよそ、現在の東京都中央区に相当する地域でした。

 ところが、この制度は評判が悪く、7年間しか続かず、明治11年(1878年)には、新たに「郡区町村編成法」が制定されて、制度が変わってしまいました。年配の方ならご存じの、浅草区、下谷区、日本橋区、京橋区という区割りがそれです。この、明治11年時の区割りが本格的に再編されるのは、太平洋戦争後のことでして、約70年間に渡って使われました。日本橋区、京橋区という呼び方にはなじみがあるのに、「第一大区」にはなじみがないのは、そういうわけです。

 国輝の開化絵は、明治6年の絵ですので、明治4年の区割りである、「第一大区」という言葉を使っているわけです。また、尾張街というのは、銀座の尾張町のことです。

 どうです? 分かりやすかったでしょう!

 本日の解説は、カリスマ受け売り師として有名な、住吉史彦先生でした。ご精読ご苦労さんでした。

 *なお「東京府下第一大区尾張街通煉化石造商法繁盛之図」の画像はこちらで、ご覧いただけます。

Filed under: 今日のお客様,困った質問,憧れの明治時代 — F.Sumiyoshi 11:35 AM  Comments (0)