宵宮

  昨日5/14より、浅草神社例大祭(=三社祭)が始まりました。

  祭礼期間3日間の内、初日の金曜日には、昼すぎから「大行列」が、浅草の町を練り歩きます。「大行列」には氏子代表、各町会役員、びんざさら舞の皆さん、白鷺の舞の皆さん、鳶の皆さん、芸者衆が参加します。この「大行列」は毎年、「ちんや」の前の、雷門通りも通ります。

  夕刻になって、各町会の神輿(みこし)の、「神霊入れ(みたまいれ)」の儀式が行われます。これにより、神輿には神が宿ることになり、神事として神輿を担ぐことになるわけです。夕刻から担ぎ始めますので、「宵宮(よいみや)」と言います。

  個人的には、この「宵宮」の日が、一番風情を感じます。各町神輿の連合渡御(れんごう・とぎょ)がある土曜日や、本社神輿の渡御がある日曜日に比べると観光客も少なく、落ち着いた日です。初夏の夕方の風が涼しく、祭囃子の音も、気のせいかこの日は、のどかです。

  「ちんや」の商売の方も金曜日は、のどか?なものでしたが、まあ、それも例年のことです。

 本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。

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鍋の洗い方

 このブログの4/7の号で、「ちんや」には「お客様に聞かれて困った質問」収集委員という委員がいると書きました。この委員は何をする委員か、と申しますと、お客様から聞かれて、答えられずに困った質問をメモしておき、週に1回月曜日に提出するのが仕事です。その委員の連中が収集した「困った質問」はブログネタの宝庫でして、今日は、その第3弾です。

  「すき焼き鍋を使った後の、取り扱いはどうしたら良いんですか?」というご質問があったようです。ご家庭で、すき焼きをした後、鍋の後始末でお困りの方は多いかもしれません。鉄は重いし、管理が悪いと錆が出てしまうので、敬遠されがちのようですが、やはり、すき焼きには鉄鍋です。このブログを借りて、扱い方法をお教えしましょう。

 ①まず脂はなるべく溶かしましょう。牛脂の融点はさほど高くないので、お湯で、ある程度は溶けます。

②脂が溶けたら、洗剤で落とします。普通の中性洗剤でOKです。

③すき焼きをしている最中に、固形化してしまったものは、洗剤で落ちない場合がありますので、実力で落とす他ありません。クレンザーをつけて、ナイロンたわしで、こすります。それでも落ちない場合は「焦げ落とし」(スクレイパー)も使います。

④水分を良く切り、さらにペーパータオルなどで完全に拭き取ります。

⑤鍋に食用油を塗りつけ、なじませます。保管中に塗りつけるのには牛脂は使いません。すぐに油を塗らないと、鍋が酸化し、変色が始まりますので注意しましょう。

⑥保管する時は、油が流れ出ないよう、上向きにします。

<鍋の裏や側面に、焦げがこびりついてしまった時は、>

・鍋をそのまま、直に火にかけ、焦げを焼き落とすことができます。ただし、その後は油を塗りつけても、鍋になじみにくい状態になりますので、塗りつけ作業を、時間を置いて2〜3回繰り返します。

  牛鍋屋、桜鍋屋、どぜう鍋屋などは、上記のような作業を日々繰り返しています。このブログの4/22号にも書きましたが、鍋屋は鍋を「動態保存」しているのです。この作業をキッチリできる「洗い場さん」がいないと、成立しないのが鍋屋です。お客様がお帰りになった後の深夜に、とっとと家に帰りたい気分の中で、この作業をキッチリできる「洗い場さん」がいないと、成立しないわけです。

  ですから、ご家庭で、すき焼きをする場合は、是非とも旦那様が、この「洗い場さん」を買って出るのが良いでしょう。簡単に奥様に感謝され、さらに、ここに書いてあることを受け売りで語りながら作業すれば、チョッと見直されちゃう可能性すらあります。おススメしておきます。

  「ふーん、そうかい、ということは、住吉家でも、洗い物はダンナがするわけ?」

  そりゃしてますよ。鮮明な意識が、その時点であれば、ですけどね。

 良く言われてるのは、「アナタは、もう寝ていいから! ヨッパライは邪魔だし!」ですけどね。

  ところで、この原稿がUPされる頃=5/14は、浅草神社例大祭(=三社祭)の初日です。

 例年、祭礼期間3日間(5/14〜5/16)の内、1日は必ず雨が降りますが、今年はどうでしょう。

 本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。

津軽びいどろ

 このブログの4/7の号で、「ちんや」には「お客様に聞かれて困った質問」収集委員という委員がいると書きました。この委員は何をする委員か、と申しますと、お客様から聞かれて、答えられずに困った質問をメモしておき、週に1回月曜日に提出するのが仕事です。今日は、その委員の連中が収集した「困った質問」の第2弾です。

  さて、「ちんや」さんで使っている、冷酒グラス(ぐい呑み)は、どこで造っているグラスですか?」というご質問があったようです。お答えは、「津軽びいどろ」です。

  「津軽びいどろ」は、古くから受け継がれてきた「宙吹き」の技法で作られているのが特徴です。熟練した職人たちが、硝子を灼熱の、どろどろに溶けた状態で吹き竿にすばやく巻き取り、息で膨らませます。そうして硝子のカタチを整えるのが、「宙吹き」の技法です。

 ただ、「宙吹き」自体は、「津軽びいどろ」オリジナルというわけではないので、「津軽びいどろ」を名乗るメーカーは複数あるようです。

  「ちんや」では、「津軽びいどろ」の冷酒グラスを、色違いで用意していて、季節によって、使いわけています。

  初夏は緑

 真夏は青

 秋・冬は茶色

 春はピンク 

 年末・年始は冬ですが、慶祝ムードでピンクにします。

 逆に、ご法事の場合は、春でもピンク以外にします。

  すき焼き自体が1年中ほぼ同じなので、少しでも季節感が出るよう、こういう所で工夫をしています。

  ここで面白くないのは、そもそも日本酒をご注文いただかないと、このグラスを出せないところです。ところが実際は、「とりあえずビール」派の方が圧倒的に多く、「最後までビール」派の方も少なくありません。

  日本酒の売れ行きがショボいのは「日本酒は悪酔いする」という巷説が信じられているせいなのかなあ? 

 チェイサーを注文して、水をしっかりお飲みになればいいんですよ!そうすれば、そんなに悪酔いしないと思いますけど。

  「え? 住吉、アンタにそういうこと言われたくないよ。」

 「アンタが、水をしっかり飲めば、日本酒さんざん呑んでも、悪酔いしないって、言いながら呑んで、結局泥酔してたの見たことあるぞ、観音裏で。」

  おっと、困るなあ。 そういう浅草のインサイダー情報を、勝手に書いてもらっちゃあ。 

  本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。

*「ちんや」で使っている、「津軽びいどろ」については、こちらです。

* 「困った質問」の第1弾は、こちらです。

Filed under: すき焼きフル・トーク,困った質問 — F.Sumiyoshi 9:55 AM  Comments (0)

ヤバイすき焼き後日譚

 このブログの4/29号「ヤバイすき焼き」の、登場人物ご本人様から、ご投稿をいただきました。

 「住吉さん、本当にすき焼き美味しかったです。ただ美味しいだけじゃ無くて、なんだかとてもリアリティのある美味しさ。あれは何だろう…と考えていたのですが、昨日の母からの電話で判明しました。

「ちんや」さんでお肉買ったから、取りにいらっしゃい。

あ、成程そうか実家に居た頃偶にちんやさんのお肉食べていたからだ!と。美味しく楽しい一時を本当にありがとうございました。」という御投稿でした。

 浅草の地に、店を代々続けてさせていただいていて、こういう話しを聞かせていただけるのは、何より有り難いことです。味覚が継承されていることほど、我々にとって、有り難いことはありません。同時に、安易に味を変えてはいけないなあ、と思う瞬間でもあります。ご投稿ありがとうございました。

 ところで、この時の、ご自宅での召し上がり方ですが、

 「ブログで見た様に、味噌を少し隠し味で入れてみました。美味しかったです;-)」という方法だったとか。

 そうです! 鍋に味噌を入れるのも「有り」なのです。というか、明治初期には、味噌を入れる店の方が多かったと思われます。このブログの3/3に書きました通り、今でも横浜末吉町の「太田なわのれん」さんは入れていますし、牛鍋ではありませんが、日本堤の桜鍋の「中江」さんも入れてます。両国の猪鍋の「ももんじや」さんもです。味噌入りも旨いものですよね。

 また、4/11号に書きました通り、神田仏蘭西料理「聖橋亭」さんでは、ビーフシチューのソースに、隣の、神田明神の参道にある甘酒屋さんから、糀をもらって入れているそうですが、これも、すき焼きの鍋に、やはり発酵食品である味噌を入れるのと、同じ作戦です。ハッキリ言って、大スキです、そういう傾向の味。

 「すきや連」の事務局をしているせいか、最近、こうした御料理を出している御店のご主人さん達と、いろいろお話しする機会が増えました。そういう会話の中で聞いた情報を是非皆さんにご紹介したい、というのも、このブログを始めた動機の一つであります。ご愛読いただければ、と存じます。

 どの御店も、「ヤバい」ですよ!

 本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。

納豆と市川海老蔵

 昨日5/10のブログに、ちんやの肉の仕入れ方針について書きましたが、その中に書いてある、「熟成をすると、なぜ肉が旨くなるのか」、が良くわからない、というメールが、「浅草うまいもの会」の、K子会長から届きました。

 そこで熟成すると肉がなぜ旨くなるかの説明ですが、

「熟成すると、牛の体内の酵素の働きで、タンパク質がアミノ酸に変わります。」

「1ヶ月置いておく間に乾燥が進み、相対的に水分が減って、旨味成分が濃縮されます。」

「牛を解体しないで、丸ごと熟成させた方が、乾燥が進むので、解体してパッキングしてから熟成させるより、旨いです。」

 以上がその説明ですが、このご説明でご理解いただけない場合も多いです。先日、雑誌のご取材があって、熟成と肉の旨さについてご質問があったので、上記のようにお答えした時も、そういえば、取材嬢は「?」という感じでした。

  旨さについては、熟成がポイントなのですが、そこがわかりにくいと思う方が多いようです。どうもバケ学用語を口頭で言うと、文系人にはトッツキにくいかもしれません。「そんなことより産地はどこなんですか?」と文系的なことを聞かれると、産地にあまりこだわっていない我々としては、チョッとがっがりしてしまいます。

  そこで! 熟成について、わかりやすく説明する作戦を最近考えついたので、今回のご取材で使ってみました。それは、「熟成させたお肉と、そうでないお肉は、納豆と、生の大豆の違い位の違いがあります。」と例える作戦です。これはわかりやすいようです。

 化学的にも、納豆菌という細菌の作用でタンパク質がアミノ酸に変わるのと、牛の体内の酵素の働きで、タンパク質がアミノ酸に変わるのは、似ていると言えなくもありません。かなりザックリ、ですが。

 以前、「銀座4丁目スエヒロ」のU社長が紹介して下さった、熊本県畜産試験場の先生も、「熟成した肉は、生鮮食品ではなく醗酵食品とみなします。」と言っておいででしたので、あながちハズレた例えでもないでしょう。「納豆と大豆」=「熟成肉と肉」、少し誇張した例えですが、わかりやすいので、まあご勘弁いただいて、使おうと思っています。

 「納豆と大豆」=「熟成肉と肉」 ついでに、もう一つ例えると、「住吉史彦と市川海老蔵」

 おっと、間違えた。最後の例は、完全に同等のケースだった、ですよねえ? 理系の皆さん。 

 本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。

ちんや流個体識別

 このブログの4/27号に農水省安全管理課の「表示・規格指導官」様がノーアポでご来訪。立ち入り査察があったことを書きましたが、これについてブログ読者の方から「なんの検査か、良くわからない」という声が届きました。

 もともと一般の方には、なじみの薄い話しであるのに加え、途中からブログを時代劇仕立てにして、茶化してしまったので、わからなかったかもしれません。

  で、あらためて、何のために、牛に個体識別番号をつけているか、の説明です。それは、もし仮に日本人の誰かが、BSEに罹った場合、どの店で売られた牛か、どの生産者が育てた牛か、当局が追跡して原因追求をしたいのです。追跡能力のことをヨコ文字で、トレーサビリテイーと言うそうです。

 今は全ての牛について、BSEの全頭検査をしていますので、BSEに罹ることは有り得ないですが、念のためのシステムとして、こういうものがあるのです。まあ、当局の原因追求を助けることにはなると思います。ですから、仕入れの帳簿がキチンとしているかが主に検査されます。

  と、いうわけで、肉を売る場合には、店のどこかに、個体識別番号を表示する必要があるのですが、普通のお客様にとって、番号(=数字)そのものは、ほぼ興味の対象外でしょう。そこで、このブログの3/28号に書きました通り、「ちんや」では、昨年の12/10から、個体識別番号の「全組表示」を実施しています。

 番号を、どこか店内の一箇所に集中して表示しておくのでなく、お客様各組ごとに、番号と産地と、それだけでなく、「ちんや」の仕入方針(考え方)も記載した書面をお渡し申しています。お客様から聞かれてから、調べてお答えするのでなく、こちらから積極的に書類を作って、肉と一緒に御席へお持ちすることにしています。

 番号の表示自体は、法律上の義務なのでやめらません。そこで、どうせ表示するなら、その書類上に、お客様が興味を持っていただける情報(=「ちんや」の仕入方針)も入れ込もうじゃないか、そういう作戦です。

  少し長くなりますが、その仕入れ方針を以下に転載します。

■黒毛和種(=黒毛和牛)の、雌牛(メス)のみを選んで使用しています。

 黒毛和種の、メス牛の肉には「和牛香」と言う、甘い独特の風味があり、また「ちんや」の甘めの割下に良くあうので、使用しています。交雑種(=和牛とホルスタインなどの乳牛をかけあわせた牛。店頭では、「国産牛」と表示されている。)は使用いたしません。また牡牛(オス)の去勢牛も使用いたしません。

■充分な肥育期間を経た牛を選びます。また、と殺後の熟成期間も充分とります。

 肥育期間の短い牛は旨味が浅いですので、30ヶ月程度肥育された牛を選んでいます。熟成期間は約1ヶ月間。なるべく骨付きの状態で熟成させます。熟成させることにより、肉のやわらかさと旨味がさらに増していきます。

■ドリップ(血液のしずく)の流出を最小限に抑えています。

 牛肉を成型・カット・盛り付けする時に、ドリップが流れ出る場合がありますが、それは全てが旨味ですので、最小限にするべく、カット方法や肉の保管方法を工夫しています。また、肉が「ちんや」へ納入される以前の段階においても、市場関係者・卸売関係者と連携して、最良の保管方法を採用しています。

  この書類はお持ち帰りいただくようにしています。日付が記入されていますので、ご来店の記念になると、こちらは思っているのですが、どうも観察していると、お持ち帰りになる人は多くないようです。

 自分が食った牛の番号というのは、やはりどうも、殺生した記録のようで、手元に置きたくはないかもしれませんね、仏教徒としては。

  そういえば、2月にお坊さん達のご宴会があった時も、牛の番号の書類を差し上げたっけ。悪いことしたかなあ。 

 本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。

Filed under: すき焼きフル・トーク,ぼやき部屋 — F.Sumiyoshi 9:25 AM  Comments (0)

触れ太鼓

 5/8は大相撲5月場所(東京場所)の、初日の前日でしたので、「呼び出し衆」の皆さんが、興業の宣伝のため、「ちんや」を訪問して来られました。

 大相撲の「呼び出し衆」は、場所初日の前日に、興業の宣伝(=触れ(ふれ))のために市中を回り要所要所で、初日の取り組み力士名を、独特の朗々とした調子で、読み上げます。

  「相撲は明日が初日じゃぞぇ〜、白鵬に〜は〜、魁皇じゃぞぇ〜」という具合です。

  太鼓をたたきながら市中を巡ることから「触れ太鼓(ふれだいこ)」と通称されています。古くから東京場所のたびに「ちんや」を訪問していただいております。

 「呼び出し衆」の美声を至近の距離で鑑賞できる、大変貴重な機会ですので、居あわせたお客様には、是非にとお勧めして、聞いていただきました。

  最近は、力士の「騒動」ばかりが話題になりますが、取り組みの方も頑張っていただきたいところです。

 相撲と言えば、かなり以前のことですが、ある力士がタニマチ氏と一緒に「ちんや」へやって来て、さんざん大量に肉を食べた挙句、帰り際に、

「今日は、ごっちゃんでした。でも、オレはソース味の方が好みっス。」と大声で言いながら、去って行ったことがありました。

  うーむ、その一言、余に対する果たし状であるか?

  余は、売られた喧嘩は・・・・・買わないこともございます、へへー。

 本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。

Filed under: ぼやき部屋,今日のお客様 — F.Sumiyoshi 9:54 AM  Comments (0)

お目出度い絵

 先日、ある御客様から「なんで、毎回同じ絵がかかっているの?」というご質問がありました。通される部屋は違うのに、かかっている絵が毎回、楊洲周延(ようしゅう・ちかのぶ)の「上野不忍大競馬之図」だとおっしゃるのです。

 ん? そんなことあるかなあ? と思いましたが、偶然ではありませんでした。そのご家族は、お子さんのお誕生日とか、ご両親の結婚記念日とか、そういうお目出度い場合に「ちんや」をご利用いただいていたのですが、それが、絵が同じになった理由です。

  実は、「ちんや」では、予約の段階で、その日の御用向きがお目出度いとわかると、かける絵もなるべく、お目出度い絵にしているのです。「上野不忍大競馬之図」は、絵柄が一番に賑やかで、お目出度い感じなので、それで、そのお客様の場合毎回「競馬之図」になったという次第です。

  ちなみに、カリスマ受け売り師の住吉史彦先生によりますと、この絵は、明治17年に上野不忍池(しのばずのいけ)畔で開催された、天覧競馬会の模様を描いた作品です。明治政府は軍馬改良の為に、競馬を奨励しており、またご自身も乗馬がお好きだった明治天皇は好んで競馬会に行幸されました。優秀馬には「帝室御章典」が授与されましたが、その金額は当時としては、大変高額なものでした。

 「競馬之図」の画面の、天皇陛下が座す楼閣には、日ノ丸の旗がはためき、空には気球も打ち上げられて、盛大な競馬会の様子がわかります。
 なお絵師の楊洲周延(1838〜1912年)は、歌川国周の門人で、美人画に優れ、洋装貴婦人や女学生など、開化期の女性の風俗を描いた作品が多い絵師です。

  「ちんや」が所蔵する、開化絵はネットでごも覧いただけますので、こちらで是非どうぞ。

Filed under: 今日のお客様,困った質問,憧れの明治時代 — F.Sumiyoshi 9:58 AM  Comments (0)

写真の基礎知識

 ミッション社のM社長とカメラのSさんが見えました。お二人は、私の「爆笑名刺」の製作でお世話になった方でして、チョッとした打ち上げ会というわけです。それプラス今回は、真面目な目的もありました。それは、Sさんから私に、「写真の基礎知識」をレクチャーしてもらうことです。

  料理屋は、自分で料理の写真を撮れるか、それが無理なら、写真の基礎知識くらいは持っておいた方が良いと思います。写真を理解するためには、光や色について学習する必要がありますが、それがわかると、店の照明をする際にも、必ず役に立ちます。

  そういうわけで、Sさん、今日はよろしくお願いします、ということで一応は、始まりました。Sさんは自前のライトを持ってきて、いろいろご説明下さいます。しかし、真面目なやりとりはそう長く続かず、「爆笑名刺」の校正版を前に広げ、

 「よくまあ、俺たち、こんなバカバカしいもの造ったねえ」

 「いやあ、この写真撮られた時は恥ずかしくて、鼻血出そうでしたよ」

 「実はね、さらにオカシい案を考えついたんで、また第二段作りましょうよ」とか、そっちの話題で、スッカリ盛り上がってしまいました。

 当然のようにすぐ酒が入りましたが、旨い酒は進みます。やがて話しは完全に、よもやま話し状態となり、「写真の基礎知識」レクチャーは、遥か彼方へ去っていきました。

  終わる直前に、ようやっと写真の話しに戻り、「今度レストラン協会で、写真のテーマの勉強会をやったら、どうだろう」と言い合ったのが、せめてもの真面目さでしょうか。写メに結構いろいろな機能がついていることを教えてもらったのも収穫でした。勉強会をやる時は、その話しをすれば、参加者から喜ばれそうです。

  え? 「爆笑名刺」がいつ出来るのか、早く書けって? 

 いやあ、せっかく、ここまで引っ張ったんだから、そう簡単には教えらえないなあ。

 こ・ん・ど・ネ!

 またこのブログを読みに来てね! ひひひひ。

 本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。

  

  

Filed under: 今日のお客様 — F.Sumiyoshi 11:40 AM  Comments (0)

奥州牛

 「ちんや」の「今週の特撰牛」が変わりまして、5/2から「奥州牛」(個体識別番号:08316-25274)をお出ししています。黒毛和種の牝牛で、19年9月生まれですから30ヶ月肥育、と畜は22年3月25日ですから、今が食べ頃です。生産者は、阿部長純牧場さんです。

  データが旨そうなのはわかったけど、そもそも「奥州牛」って何? という方もおいでと思います。疑問はごもっともです。

 そういう方には、たぶん、岩手県の胆沢の牛と言った方がわかりやすいのかもしれません。「平成の大合併」で、奥州市が出来たわけですが、胆沢もその中に入りました。そして水沢地区・衣川地区・金ケ崎地区とともに「奥州牛」という名前に統一して、平成18年に誕生したのが、このブランドです。

 安全な低農薬栽培による、自然にやさしい稲ワラを十分に牛に食べさせ、農家の熟練した飼育技術で、一頭一頭丹念に仕上げることを、セールスポイントにしています。

  ややこしいのは、奥州市の中でも、旧前沢地区は、以前から有名な「前沢牛」ブランドを引き続き使っていることです。つまり、奥州市の牛の内、「前沢牛」でない牛が「奥州牛」となるわけです。

  「大合併」で、さらなる「?」のケースも誕生しています。松阪市に隣接していて、松阪牛の産地に指定されていた町が、津市に編入されてしまったのです。この町は引き続き松阪牛を産出していますので、これにより、津市出身の松阪牛というのが存在するのです。

  行政は合併した方が、能率的かもしれませんが、食べ物は土地に根ざしたものです。野菜などは、100メートル歩いただけで作物の出来が違うという話しを聞きます。牛の場合は野菜ほどではないでしょうが、合併は、ほどほどにしてもらいたいところです。

  お客様との間で、「奥州ってどこですか」「それはですね、平成の大合併がありまして・・・」という応酬をするのも面倒ですし。

 はい、奥州の応酬ってことでゲス。お後がよろしいようで。 「ちんや」亭プチ彦でやんした。

Filed under: すき焼きフル・トーク,ぼやき部屋 — F.Sumiyoshi 9:16 AM  Comments (0)