恵方巻の大量廃棄については、2年ほど前から耳にするようになりました。
当初は食品廃棄問題専門家?の方のご意見が報道されていて、それは勿論ご尤もなものでしたが、それほど拡散せず、しかし今年この件が大きく報道されたのは、たぶん、今年は当事者の方が「もうやめにしよう」と言ったからだと思います。
言ったのは兵庫県姫路市のスーパー・ヤマダストアーさんでした。
ヤマダストアーさんは、恵方巻自体を「やめにしよう」と言ったのではなく、
見込みによる生産をやめにしよう
と言ったのでした。
そして、その「見込み」自体も、見込みというより成長目標あるいは成長願望と言った方が良いものだったようです。
次から次へと、新しいアイデアや新しい素材の恵方巻をつくり、恵方巻商戦を盛り上げ、盛り上がる前提で大量「見込み」生産をして来たのが、これまでの恵方巻業界でした。
日本のコンビニは、精緻な需要予測システムを持っている、とか言ってきましたが、実際は恵方巻を大量廃棄しており、それをなんとかせねばと考えた結果、アルバイトさんに自腹購入を強要することになったのです。
恵方巻は予約制にするべきだと多くの人が言いましたが、コンビニ業界は耳を貸しませんでした。
限界が見えてきたと思います。
既にお気づきの方もおいでと思いますが、今日のこの話しは、とても根本的な問題です。
そもそも日本社会は、こんなにコンビニエントであるべきなのか、という根本的な問題です。
恵方巻だけでなく、普段から食品が消費期限切れでたくさん廃棄されています。精緻な需要予測システムを持っている、とか言ってきましたが、やっぱり廃棄されています。世界の大勢の難民を救える分量です。
思い起こしますと私が子供の頃は、そんなに便利な社会ではありませんでした。
当時学校の終業式の日とか節目の日でも母は「ちんや」の仕事があって、私と弟の食事をつくれないことがありました。
そんな時、母は同じ通りの鰻の「川松」さんに電話して、蒲焼を焼いてもらっていました。小1時間ほどで焼けますから、そのタイミングで走って取りに行き、私や弟に与えていました。
事前に電話をかけて、正確に出来上がる頃に行くのですから、コンビニエントではありません。予約なしで、いつでも自分の行ける時間に買えた方が、コンビニエントですが、その真逆です。
でも、良く考えたら、むしろその位不便な方が良いとおもいませんか。
その鰻のおかげで、とりあえず私と弟の二人は育ちました。
美味しく、しかしコンビニエントではない鰻のおかげです。その方が余程ハッピーかもしれませんよ。
追伸
インターネットのぐるめ情報サイト「途中めし」にお採り上げいただきました。文は『孤独のグルメ』で有名な久住昌之先生です。ありがとうございました。
本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて2.908日連続更新を達成しました。すき焼き「ちんや」六代目の住吉史彦でした。