江戸東京野菜の物語

巣籠り中の皆様へ本のご紹介です。
「すきや連」の熱心な参加者である、大竹道茂さんが本を出されました。
『江戸東京野菜の物語』
大竹さんはJA東京中央会に入社。1989年より江戸東京野菜の復活に取り組んで来られました。農林水産省選定「地産地消の仕事人」や総務省「地域力創造アドバイザー」でもあります。今回の御本は、その活動をまとめたものです。
「千住ネギ」「練馬ダイコン」「内藤トウガラシ」
大竹さんが江戸の「遺伝子遺産」とも言うべき「江戸東京野菜」を保存する活動を始めると、都内各地の人々が協力し、街興しにつながった事例が多数ありました。その活動に参加した人達もここで紹介されています。と、書くと、
野菜で街興し?東京の?
と不思議に思う方が多いと思います。
大竹さんの活動に協力した方の中には、プロの農家さんもいますが、街興し活動家のような方も実は多いです。小学校の生徒さんが総出で野菜づくりをした例もありました。
大竹さんは各地の在来種だけを「江戸東京野菜」に指定しましたが、栽培効率の良い交配種を好む、大規模プロ農家は使おうとしないこともあるようです。在来種の遺伝子が貴重なんですけど、ね。
逆に農業の素人さんが在来種=「江戸東京野菜」を面白がる例が多かったようです。
・交配種=栽培効率が良い、大規模プロ農家が好む
・在来種=貴重だが、栽培効率が良くない
を理解するには、「雑種強勢」(ざっしゅきょうせい)という遺伝の理屈を理解する必要があります。
以下少し長くなりますが、
異なる在来品種の二つを掛け合わせると、次の代つまり交配一代目では、両親の性質のうち優性の方が表に現われて、劣性の性質は隠れます。
両親の一方が「猛暑に強い」「水不足に強い」といった性質を持っていれば、交配一代目の子は皆、猛暑に強く(水不足に強く)なるのです。で、両親よりも丈夫でよく成長し、収穫量も多くなるものです。この傾向を「雑種強勢」と申します。(二代目以降にはダメな性質を持った子も生まれます)
交配種って便利でしょ!
確実に収量を多く獲りたい農家さんが交配一代目ばかりを使う理由がこれです。
こうして農業の世界では交配種を使うことが主流となり、各地で継承されていた在来種は隅に追いやられました。
大竹さんは、そういう在来種の貴重さを訴えて来て、幸いなことに、その意義に気づく人たちが現れました。
素晴らしいことです。面白い時代になったとも言えると思います。
ひるがえって畜産の世界は・・・
それは、今日は言わずにおきましょう。
『江戸東京野菜の物語』(平凡社新書、ISBN-10: 4582859372)
是非ご購読を。

<業歴100年以上の企業経営者の皆様に緊急アンケートのお願いです>
「100年経営研究機構」さんが今、コロナショック最中に日本の老舗企業がどう対処しているか、知りたがっておられます。私は、これこそ国の叡智を集める一つの方法だと思います。該当する方は是非、この緊急アンケートにお答えいただき、またお知り合いに拡散していただければと存じます。どうぞ、よろしくお願い申し上げます。
*ご回答はこちらから。

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ホワイトリカー

茨城県石岡市の日本酒の酒蔵「白菊」さんが造ったアルコールを、店の消毒に使わせていただきました。
主な納め先は医療機関だとかで、それは喜ばれるだろうと思います。素晴らしい社会貢献です。
まさか原料は山田錦?
と思い聞いて見ましたら、さすがにそうではなかったようで、
原料は「糖蜜」でした。
砂糖を造る時に副産物として「糖蜜」ができますが、そこにも未だ糖分があるので、それを醗酵させてホワイトリカーを造ります。梅酒やチューハイに入っているのは、それですね。
アルコール度数はホワイトリカーと違いました。
ホワイトリカーを造る時は、水で薄めて35%くらいにしますが、その度数ではウイルスは死なないので、今回のは75%にしてあります。
が、飲めないことはないです。
そのままだと勿論キツい(辛い)ですよ。だから水で薄めないといけませんけど。
香りをたしかめてみると、ほのかに甘い香りが。
本気で飲んじゃおうか、なあ。

追伸、
緊急事態が延長だそうなので、肉の売り場でやっている医療関係者応援割引(半額!)も31日まで続行します。
割引開始以来150人以上の関係者の方にご利用いただき嬉しく思っています。

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母の月

明日は「母の日」ですが、今年はコロナに対応して「母の日」を「母の月」に変えるそうです。
私は良い考えだと思いますので成功することを祈念しますが、どうでしょうか?
これを考えたのは日本花き振興協議会さん。
毎年「母の日」当日や直前にはカーネーションを求める人が売り場に集結してしまうので、感染が怖い。配送に切り替えると今度は物流に負荷がかかる、ということで「月」に切り替えるそうです。
思えば日本には、〇〇の日に××を買おう(食べよう)という商法が多いです。
古くは「土用の丑の日」。あとクリスマス・ケーキ、バレンタイン・猪口、いや間違えた、チョコ、新しいものはでは恵方巻。
これまではフードロスの観点で見直すべきだと言われてきましたが、今回はウイルスの観点で見直すというわけです。
クリスマスやバレンタインはまだ先なので考える時間がありますが、鰻は7月の話しですので、鰻屋さんの業界は困ったことになるかもしれません。お気の毒なことです。
「丑の日」を、「丑の日」だけでなく土用全体に広げるとかしないといけないのかもしれませんね。あるいは鰻だけでなくて牛を食べても良いことにするとか(笑)
で、「母の日」を「月」に拡大する案ですが、どうでしょうか?
正直、インパクトが薄まるかなあ。
花き振興協議会さん、頑張って下さい。

追伸、
緊急事態が延長だそうなので、肉の売り場でやっている医療関係者応援割引(半額!)も31日まで続行します。

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すき焼きキーマ

「コロナ漬け」の日々ですが、私には忘れていない以前からの習慣があります。
それは一日一回ネットに「すき焼き」と入れて検索することです。
最近も面白い発見がありましたが、それは、
「すき焼きキーマ」
神戸のカレー店「神戸カレー食堂 ラージクマール」さんが開発したレシピです。
神戸経済新聞によりますると、緊急事態で店が営業できない中、そのレシピを、店主の片山絢一さんがネットで公開しているとか。名付けて「おうちでらじくま」。
カレーとすき焼きは合う!と私も思っておりまして、2016年の秋からすき焼きの溶き卵にカレーオイルを入れております。また自分で「合う!」と主張するだけでなく、2018年には「味博士」こと鈴木隆一博士に味覚センサーで分析もしてもらいました。ですので「すき焼きキーマ」が登場しても驚くことは勿論なく、これまでの主張を補強するものが出てきたなあ、という感じです。
「ラージクマール」さん、神戸も東京も、カレーもすき焼きも大変ですが、頑張りましょう。

すき焼き「ちんや」と「ちんや亭」(つまり飲食部門)は、コロナ拡大抑止に協力するため営業自粛しております。再開時期は未定です。
精肉売店は時短営業(11時~19時)しておりますので、皆様、すき焼きはご自宅でどうぞ。
通販もやってます

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きのこたけのこ戦争

雑誌「三田評論」の「社中交歓」のコーナーの、今月のテーマは「筍」でした。
そこに料亭「金田中」の岡副さんが「春の味 筍の甘味」と題して書いておられたことは、4月7日の弊ブログに書きましたが、今月はもう一人、私の旧知の方が書いておられました。
そのタイトルは「きのこたけのこ戦争」。
味覚センサー「レオ」を開発し、それを使って食品の味を分析できる鈴木隆一先生です。私は「ちんや」の「変わり卵」を、その「レオ」で分析してもらったことがあります。
で、その「きのこたけのこ戦争」ですが、それは有名なお菓子「きのこの山」と「たけのこの里」のどっちが美味しいか、「レオ」で分析した結果が書かれていました。
結論は「たけのこの里」が優勢な判定だったとか。
そもそも、二つもしくは三つの味が強い時に人は美味しく感じる、というのが「レオ」の知見で、それで行くと「たけのこの里」になるとかです。ただし、そこに触感は反映されていないので、「きのこの山」にも逆転の余地はあるそうです。面白い一文でした。
ところで「レオ」で「ちんや」の変わり卵を分析した結果は?!どの卵が美味しかったのか?!その結論もかなり面白いですよ。こちらをご覧ください。

すき焼き「ちんや」と「ちんや亭」(つまり飲食部門)は営業自粛しております。再開時期は未定です
精肉売店は時短営業(11時~19時)しておりますので、皆様、すき焼きはご自宅でどうぞ。
通販もやってます

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春の味 筍の甘味

今は春。
コロナ問題がなければ良い季節です。
雑誌「三田評論」の「社中交歓」のコーナーの、今月のテーマは「筍」でした。
このコーナーは慶應義塾の四人の卒業生が、同じテーマで短文を投稿するコーナーですが、今月書いておられたのは料亭「金田中」の岡副さんでした。料理業界の大先輩です。
で、その文章では筍のことだけでなく、春の味覚のあれこれを書いておられました。タイトルは「春の味 筍の甘味」。そこに曰く、
「春の味だが、苦みから始まると思う」
これは、まったくその通りと思います。
食材としては、蕗の薹。
続いて、春キャベツに新玉葱。ここで甘味が主役になります。
そして、それから筍。春の味覚の王様ですね。
筍を美味しく食べるには時間管理が大切なことが書かれています。
コロナ問題がなければ、今は春の味が楽しめるの季節なのにと残念です。

政府による緊急事態宣言を受けて、
すき焼き「ちんや」と「ちんや亭」(つまり飲食部門)は営業自粛しております。再開時期は未定です。
精肉売店は時短営業(11時~19時)しておりますので、皆様、すき焼きはご自宅でどうぞ。
通販もやってます

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くらべる京都

『くらべる京都』を拝読しました。
2017年に『くらべる値段』でお世話になった、おかべたかしさんの新著です。
おかべさんの「くらべるシリーズ」は、その後も次々に続編が出てロングセラーシリーズになっていますが、今回は本名の「岡部敬史」で書いておられます。岡部さんは京都出身だったのです。
内容は、こんな感じです(↓)
(1)京都「を」くらべる
応仁の乱の刀傷/池田屋騒動の刀傷、
賀茂川/鴨川、川床(かわどこ)/川床(かわゆか)など
(2)京都「の」くらべる
赤い提灯/白い提灯、
衣笠丼/木の葉丼、
京のメロンパン/サンライズ、
嵐電/叡電など、
(3)京都「と」くらべる
嵐山/嵐山渓谷(埼玉県)、
京都の祇園/千葉の祇園(千葉県)、
渡月橋/渡月橋(静岡県)など
浅草とのつながりも出て来て、嬉しく思いました。
「新京極」は、東京の浅草・大阪の千日前に対抗する盛り場として明治初期に計画された町だとか。
また雷門の大提灯を作っている「高橋提灯」さんは京都の会社で、京都の町内で使う、小さくてオリジナルな提灯もたくさん作っているとか。
ありそうでなかった、新しい京都雑学本です。
皆様も、ご購読を。

『くらべる京都』
刊行:東京書籍
ISBN:978-4-487-81335-3

追伸
3日15日より「しゃくなげ和牛」のメニューをお出ししています。福島復興の一助になればと存じます。

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天晴れな甘さ

またまた元日に放送された「東京ミラクル」の件なんですが、あの番組には、私の旧知のご主人が何人も出ておられました。
弁当の日本橋弁松総本店さんもそうです。ご創業は1850年。
現代人で砂糖が高価と思っている人はほとんどいないと思いますが、江戸時代はまだ砂糖が高価でした。日本は日清戦争で勝って台湾を獲得するまで、砂糖を自給できなかったからです。明治時代になって甘いすき焼きが好まれたのも、それが高価=豪勢な感じがしたからです。
江戸っ子の中には散財自慢の一種として、見栄を張って、料理屋や弁当屋に甘い味付けで作らせることさえあったそうです。
下町で今でも濃い味付けが好まれる理由は、これです。
で、弁松さんですが、今もその味をしっかり受け継いでいて、健康志向・薄味ブームのトレンドに抗っておいでです。
昨今では「味付けがおかしい」と客からクレームがくることさえあると言います。しかし八代目の樋口純一さんは「味が濃いのも理由がある。今の風潮だからといって薄味にしてしまうと弁松の味ではなくなってしまう。一切変えるつもりはないです」と番組でキッパリ言っていました。
うむ、天晴れ!!
あ、間違えた、それは日曜の朝のスポーツコーナーのセリフだった・・・

本日もご愛読賜り、誠に在り難うございました。
弊ブログは2010年3月1日に連載スタートし、本日は3.615本目の投稿でした。本年3月1日まで無事連載が続けば10周年になる予定です。引き続きご愛読を。

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明日は大寒

明日は大寒です。
「ちんや」売店では今年も「大寒卵」を販売致します。予約受付期間は終了していますが、残数も少しあることから、24日から店頭売り(フリー販売)を致します。どうぞお求め下さいませ。
来年の「大寒」は1月20日です。風水は、大寒の日に産まれた卵を食べることを勧めているとかで、それを「大寒卵」と言うそうです。
これを、あながち迷信と片づけない方が良いと思います。 寒い時期に産まれた卵は栄養価が高いからです。 大寒は一年で最も寒さが厳しくなる頃です。鶏はその寒さで本能的に産卵数が少なくなりますので、その中でも産まれた卵は、必然的に栄養価が高まります。
寒い所の卵が良いわけですから、特に寒い所=日本海の風雪を浴びるような所で鶏を育てている養鶏場から卵を取り寄せることにしました。 その養鶏場は、新潟県村上市の「オークリッチ」さん。
ご期待下さい。

本日もご愛読賜り、誠に在り難うございました。
弊ブログは2010年3月1日に連載スタートし、本日は3.613本目の投稿でした。本年3月1日まで無事連載が続けば10周年になる予定です。引き続きご愛読を。

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海を渡ったスキヤキ②

『海を渡ったスキヤキ  アメリカを虜にした和食』(グレン・サリバン著)
という本がかなり面白かったので、昨日から書いています。
昨日はすき焼きの件にしぼって書きましたが、今日は日本人の洋食の件です。
明治時代、日本は未だ貧しく、一方アメリカ経済は黎明期でしたので、多くの日系移民が労働者としてアメリカへ渡ります。多くはひどい待遇で、特に鉄道建設の現場はド田舎だったので、食料が調達できません。
移民達は、ロクな食事を与えられないので自分で料理が出来るになり、その中からアメリカで料理店を開業する者が現れます。1909年の統計では381軒もの日本人オーナーの飲食店があったとか。日本人による和食店より日本人による洋食店の評判が良かったというから面白いです。
当時の雑誌は、日本人によるステーキ肉の柔らかさと焼き加減を褒め、日本人ウエイターが忙しく働く様子を「無限の力が感じられる」と称賛しました。
そして、日本人による洋食店の評判が良かったことが、なんと、日系移民排斥につながってしまうのです。
日本人の洋食店の客は白人でしたので、白人洋食店のオーナーは客を取られてしまいました。不満は溜まり、1909年に「ホースシューレストラン事件」という衝突が起きます。排斥同盟も出来てしまいます。
幸いなことに当時の大統領は親日家のセオドア・ルーズベルトで、この問題が大紛争にならないよう努力しますが、アメリカの日系人は長い苦難の時期に入って行きます。
今日本は豊かになり、移民を受け入れようかという状況ですが、日本人の料理が原因で、このようなことが起きていた歴史を、この本で知ることができました。

本日もご愛読賜り、誠に在り難うございました。
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Filed under: 憧れの明治時代,色んな食べ物 — F.Sumiyoshi 12:20 AM  Comments (0)