7/26に、第九回「すきや連」を「銀座吉澤」さんで開催し、50人を超える多数の、すき焼き屋さんと、すき焼き関係者にご参加いただきました。
「すきや連」では、すき焼き宴会をするだけでなく、その前に、毎回短時間ですが、「お勉強タイム」があります。
今回は「江戸しぐさ」の話しを聞きました。講師は、NPO法人・江戸しぐさ副理事長の桐山勝さん。以前からの「すきや連」のメンバーの一人です。
震災と原発で大変な時に、なんでまた、「江戸しぐさ」なの?と思った方もおいでかもしれません。
しかし、です。こういう大変な時だからこそ、「江戸しぐさ」なのです。まあ、お聞きください・・・
そもそも、「江戸しぐさ」は、商売繁盛のための、江戸商人の知恵だったそうです。
江戸時代、全国各地から江戸に集まってきた商人たちが、商売繁盛を目指し、人間観察を重ねた結果、得た様々なノウハウを獲得⇒口伝で継承、今日に伝わる「人の上に立つ者の心得」ができた。それが「江戸しぐさ」なのだそうです。
しぐさには、800種類はあるそうですが、その代表的なものは・・・
「傘かしげ」「肩引き」「こぶし腰浮かせ」。地下鉄の駅に掲示されていたことがあるので、ご存じの方も多いと思います。
元は商売繁盛を目指したものでしたが、結果的に、人間関係が円満になるノウハウが詰まったものに成り、特に大棚のオーナーさんが、その役をまっとうするために、必要なものと成っていったようです。
江戸時代、オーナーさん方は、「自分がこの状況では責任者の役を演じる立場にある」といった自覚のもと、日頃から「江戸しぐさ」を振る舞っていました。それが江戸しぐさ=人の上に立つ者の心得でした。
さて、危機の時代=日々トラブルに遭遇する時代に、人の上に立つ者が心得を心得ていないと大変なことになります。
そんな時代に生きている私が「江戸しぐさ」の中で感心するのを、一つだけ挙げますと・・・
「うかつあやまり」。
足を踏まれた時、踏んだ方でなく、踏まれた方が誤ってしまう、というしぐさです。
たとえば電車が急ブレーキをかけた!足を踏まれた!その時、あなたはどう反応しますか。
「足を踏んだ方が謝るべきだ」が正解でしょうか。江戸しぐさの答えは、「足を踏まれたほうが謝ってしまえ」です。
起きたことは仕方がない。むしろ二次被害を避けるために謝ってしまえ、という考え方なのです。
足を踏まれたくらいは、重大な事故ではありません。
その時、キツい口調で相手を難詰すれば、相手は反発するかもしれません。オレのせいじゃないぞ!悪いのは電車の運転手だ!なんだ!その言い方は、ふざけんな・・・とマズい方向に展開するかもしれません。それが二次被害です。
このケースでは、一次被害は踏まれただけなのに、二次被害が甚大になります。それを避ける「江戸しぐさ」が「うかつあやまり」です。良く出来た考えです。
この話しを聞きながら、私は牛の汚染エサの問題のことを想いました。
疑いのある牛を売ってしまった小売店が、納入業者を厳しく責任追及するケースがあるようです。ある納入業者さんは「人間不信になりますよ・・・」とこぼしていました。
牛の汚染エサに、あそこまでの問題があるとは、しかも広い範囲で問題があるとは、納入業者さんの間でも、生産農家さんの間でも、知られていませんでした。むしろ東北の生産農家さんを応援しよう、と熱心に仕入れていた業者さんも多かったです。
その状況の中で、問題があったからといって、納入業者を厳しく難詰しても、一次被害は直りません。悪いのは電車の運転手、いや、東京電力だからです。
もちろん、消費者と向きあう立場の小売店が辛いのは、私も良くわかります。この時代に生まれあわせて損した!という気分も分かります。
でも納入業者さんを責めたら、さらに辛い二次被害が起きないでしょうか。
くどいですが、牛の問題の大元は、納入業者さんではなく、東電です。
怒りが爆発しそうになった時、「江戸しぐさ」を思い出したいものです。
追伸①
弊店では肉を召し上がっていただく前に、牛の個体識別番号と生産県をお示ししています。汚染エサを与えていないことが確認されていますのでので、安心して国産牛を召し上がっていただくことができます。
追伸②
「ゆかたdeプレゼント」を実施しています。ゆかた姿で弊店に見えた方に、東北・茨城の冷酒1本(300ml)を差し上げます!(お座敷で、料理1人前を召し上がる方に限り)
弊店以外の台東区の御店でも、同様のプレゼントを、8月13日(土)から28日(日)まで実施予定です。
追伸③
川柳で日本の食卓に笑顔を!
「すき焼き川柳onツイッター」コンクールを始めました。略して「すきせん」!
応募要領は、こちらです。
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